貸地・貸家明け渡し
老朽化した賃貸建物の明渡し
アパートのオーナーの方の中には、現在所有しているアパートが老朽化してきたことを理由に、建替えを検討している方もいらっしゃると思います。賃借人との交渉により、賃借人が、賃貸借契約の合意解除及び建物の明渡しに応じてくれるのであれば何ら問題はありませんが、必ずしもうまくいくとは限りません。
そのような場合に、賃借人に対して建物の明渡しを求めるためにはどのような方法をとる必要があるでしょうか。
正当事由に基づく明渡し
借地借家法は、明渡しを求める「正当の事由」がある場合には、賃借人に対して、一定の期間内に賃貸借契約の解約を申し入れて、建物の明渡しを求めることができると定めています。したがって、一定の要件を満たす場合には、賃借人との間で合意ができなくとも、また、賃料の不払いなど賃借人の責めに帰すべき事由がなくとも、正当事由が存在すれば建物の明渡しを求めることが可能になります。
1. 「正当の事由」の判断基準
「正当の事由」があるか否かは、賃貸人と賃借人双方の建物使用の必要性を主たる判断要素として、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに立退料の提供等の要素を総合的に考慮して判断されます。
賃貸人としては、一般的に、
- 建物の老朽化が激しく、重要な部分に亀裂や浸水があることや耐震性能が著しく欠如していること
- 建物を取壊した跡地の有効利用計画があること
- 賃借人のための移転先が存在すること
- 立退料の提供と、その金額
などを主張して、「正当の事由」の存在を証明することになります。
2. 解約申し入れの方法
賃借人に対する賃貸借契約の解約の申し入れは、
- 契約期間の定めがない場合には、解約したい日の6カ月前までに、
- 契約期間の定めがある場合には、期間満了日の1年前~6カ月前までの間に、
行う必要があります。
上記解約の申し入れは、通知した時期が証明できるように「配達証明付内容証明郵便」により通知することがセオリーで、これにより、後々、解約申し入れをしたか否かの争いを防ぐことができます。
まとめ
上記のとおり、解約申し入れに正当事由が認められる場合には明渡しが認められることになりますが、闇雲に明渡しを求めればいいというわけではなく、個々の事案ごとに、正当事由の存否や立退料などのコストを見極める必要があります。その過程では、法律上の判断が必要な場合が多いため、弁護士に相談されることをお勧めします。
次回は、正当事由を基礎付ける1つの事情となる「立退料」の算定方法についてご説明したいと思います。