交通事故

自転車事故における被害者の責任について

1 はじめに

 自転車といえば、あまり交通規則や課せられる責任について意識せずに乗っている方も多いと思います。
 しかし、たとえ小学生による自転車事故であっても、1億円以上の賠償責任を課せられるなど、その責任の重大さは到底軽視できるものではありません。各自治体においても、自転車保険に加入することを義務付けるなど、多くの対策が取られるようになってきています。
 このように自転車運転者の責任は重大ですが、一方で被害者に落ち度がある場合には加害者への損害賠償請求は、過失相殺(民法722条)により、減額されます。 本稿では、自転車事故の場合における、被害者の過失割合について実例を紹介します。

2 過失相殺の基準について

 過失相殺制度は、自分に生じる損害を回避したり、減少させたりするための行動が被害者に期待できるときに、そうした行動をとらなかったことによる不利益を被害者に負担させる制度です。
 実務では、被害者に生じた損害のうち、どの程度を減額するのが社会通念や公平の理念に合致するかという観点から過失相殺の割合を検討しています。

3 過失相殺が生じる実例等

(1) 被害者が歩行者である場合

ア 歩行者に落ち度がない場合
 歩行者は、横断歩道を青信号で通行している場合や、歩道のない道路の右側を通行している場合、過失相殺により減額されることは基本的にありません。途中で歩行者進行方向の信号が赤色に変わった場合においても、せいぜい10%程度の過失しか追加されることはありません(もちろん例外はあります)。

イ 歩行者に落ち度がある場合
 歩行者側の信号が赤信号である場合に道路へ進入した場合、自転車側の信号の表示に応じて60%(黄信号)から80%(青信号)の過失が歩行者に認められます。これは、横断歩道を渡らず、横断歩道付近を歩行者が渡った場合でも同様に扱います。
 また、前記ア及びイに共通して、歩行者が斜め横断をしたり、蛇行したり、道路上で立ち止まったりと、適切な横断方法を取らなかった場合には、その行為の危険性に応じて過失割合が増加します。その差は歴然で、如何に信号を守ることが大切かということを痛感する程です。
一方、信号がない場所や歩道がない場所であっても、問題は生じ得ます。安全上支障がないのに左側を通行した場合や、急に飛び出すなど様々な要因により、5%から10%の過失割合を負担することがあります。

(2) 被害者も自転車運転手である場合

 交差点において、被害自転車走行側の信号が赤色である場合には、60%から80%の割合で過失相殺が認められる傾向にあります。

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