遺産分割協議不存在確認訴訟事例

相続紛争の予防と解決マニュアル

第3

相続紛争の事例研究

集合写真
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遺産分割協議不存在確認訴訟事例

(1)

事案の概要

Aは約20年前に死亡しました。 相続人は、 妻Bと子供C、 D、 E、 Fの4人であり、 遺 産は十数筆の宅地と地上建物及び若干の預貯金でした。 Cは、 Aの財産を事実上管理し ていたこともあって、 A死亡後から遺産整理と評価を始め、 A死亡から約6か月後には、 B、 D、 E、 Fから遺産分割についての合意を取り付け、 相続税の申告を済ませました。 こ の遺産分割協議にもとづき、 A の遺産である不動産は、 その後 B、 C、 D、 E、 F に分割さ れ、 その旨の登記を完了しました。 しかし、 遺産分割協議書は作成していません。
その十数年後、 B が死亡し、 B の相続人である C、 D、 E、 F 間で B の遺産の分割協議が なされました。 しかし、 その協議の過程でE、 Fは、 Cの協議の進め方に不満を持ち、 そ れを契機として、 遺産分割協議書を作成していないことを奇貨として、 十数年前の A の 遺産分割協議はなかったと主張し、 C に対し A の遺産の再分割を求めました。
C がこれに応じなかったため、 E、 F は、 C、 D を相手どって、 A の遺産の分割協議の不 存在確認訴訟を提起しました。
(2)

解決

このケースでは、 Aの遺産分割協議書が文書の形では残っておらず、 C、 D (の訴訟代理人) は、 右訴訟の方針として、 A の遺産の分割協議が実際になされたことを示す膨大 な間接事実を整理し、 主張立証することとしました。 具体的には、 Aの遺産の形成過程、 B、 C、 D、 E、 F が A の遺産の内容を知っていたことを示す事実、 A が生前、 自分の死後 の財産の分配方針を語っていたこと、 B、 C、 D、 E、 FがAの気持ちを知っていたこと等 を一連の歴史的事実として整理しました。 そして、 B、 C、 D、 E、 F が A の死亡直後、 一 同に会し、 Aの財産をAが生前語っていたとおりに分割するという財産の分配方針につ いて全員同意した事実及び実際にその方針どおり不動産の相続登記がなされたことを詳 細に主張立証するとともに、 その後、 Bの死亡に至るまでE、 Fからはこれについて何ら の異論も出なかったこと等を丹念に主張立証しました。
その結果、 E、 Fの訴訟提起から約1年8か月後、 C、 Dの全面勝訴の第一審判決があ り、 右判決は控訴審でも維持され確定しました。
(3)

コメント

本件は、 遺産分割協議書が作成されなかったケースであり、 実際になされた分割どおりの遺産分割協議が存在したことを C、 D が立証しなければならなかったものです。 こ のようなケースでは、 A、 B、 C、 D、 E、 F をとり巻くすべての歴史的経過を整理し、 そ の中から当該遺産分割協議がなされたことを推認させる事実を取り上げなければなりま せん。 一方で、 もし当該遺産分割協議が成立していなければ絶対にとっていないであろ う行動を当事者がとっているという事実にも焦点を当てて立証活動をする必要がありま す。
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