相続の承認と放棄

事業承継マニュアル

第3章

事業財産の承継

集合写真
第1

法定相続による承継

6

相続の承認と放棄

相続人は、被相続人が死亡すると同時に、そのことを知ると否とを問わず、被相続人の権利義務を承継することとされています。
しかし、相続財産には債務のようなマイナスの財産もあり、また、相続を潔しとしない相続人もいますので、相続人にすべてを当然に承継するよう強制すべきではありません。
そこで、相続人は、(1)無条件で被相続人の権利義務をすべて承継する(単純承認)、 (2)すべての相続を放棄する(相続放棄)、(3)相続財産の限度で債務を負担する(限定承 認)、のいずれかを選択することができます。ただし、この選択は、原則として、自分が 相続人であることを知ったとき(被相続人の死亡時であることが一般的です)から3ヶ 月以内に行わなければなりません。この3ヶ月の期間(熟慮期間)内に(2)または(3)を 行わなければ、積極財産も消極財産も含めたすべての相続財産につき、自己の相続分の 割合にしたがって承継することになります。
(1)
単純承認
単純承継の方式について、特に明確な規定はありません。
ただし、一定の事由があれば、法律上当然に単純承認の効果が発生するとされています。一定の事由とは、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、3ヶ月の熟慮期間を徒過した場合、相続財産の隠匿・消費等の背信行為をした場合、の3つです。
(2)
相続放棄
相続放棄は、相続人が、「当該相続に関して、自分を初めから相続人とならなかったも のとみなしてもらいたい」とする意思表示です。相続人には相続放棄をする自由があり、 遺言によって禁止することも認められていません。
相続放棄の方式は法律上定められており、前記した3ヶ月の熟慮期間中に、相続放棄 する旨を家庭裁判所で申述しなければなりません(限定承認と異なり、財産目録は不要 です)。
相続前の相続の放棄は認められません。この点、遺留分の放棄と異なります。家庭裁 判所に対する申述の方式によらず、放棄の合意をしたり、他の共同相続人に放棄通知を するなどしても無効です。そのため、後継者以外の相続人に相続させたくない場合は、 そのような内容の遺言書を作成し、後継者以外の相続人に遺留分の放棄をしてもらうことになります。
(3)
限定承認
限定承認は、「相続によって取得する積極財産の限度内でのみ、被相続人の債務・遺贈 に責任を負う」という条件で相続を承認するものです。積極財産と債務・遺贈の負担の どちらが多いのか不明の場合に有効です。
限定承認の方式は法律上決められており、前記した3ヶ月の熟慮期間中に、財産目録 を調製して家庭裁判所に提出し、限定承認する旨、家庭裁判所で申述しなければなりません。

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