売買決済引渡し

不動産投資・運用マニュアル

第3

不動産の売却

集合写真

売買決済引渡し

売買契約書等の締結後(もしくは、締結準備完了後)、売買決済引渡しのための準備を行ないます。
(1)

引渡書類等の準備

引渡書類等には下記のものがあります。
(イ)
承継される契約書
引渡時に承継される契約については契約書原本を全て引渡す必要があります。
主なものは下記のとおりですが、物件により異なりますので、漏れがないか、事前に十分チェックを行ないます。
(a)
賃貸借契約書等
入居者との賃貸借契約書(原本)以外に、駐車場使用契約書(原本)、売主発行の敷金預り証(写し)、同居人がいる場合の同居承諾書(写し)、入居者の印鑑証明書、資格証明書等の入居審査資料等が必要になります。
既に解約通知を受けている入居者がある場合は、解約通知書も引渡します。
(b)
電気室借用契約書等
高圧受電の場合、電力会社の変圧器を設置するために電気室、変圧器室等を電力会社に無償貸与することがあります。その場合、電力会社との借用契約書等が必要になります。ガス会社のガスガバナー室、公共下水の公共枡、電力会社、電話会社の電柱等も同様となります。
(c)
無線基地局設置契約書等
携帯電話やPHSのアンテナを設置している場合は、その契約書が必要となります。
(d)
管理委託契約書等
管理代行契約、建物管理委託契約等の他に、機械警備契約、エレベーター保守契約等を個別に締結しておれば、各契約書が必要となります。
(ロ)
境界確認書・官民査定書
境界確認書、官民査定書は原本を全て引渡す必要があります。境界確認立会書等、付属する書類、記録がある場合は、それらも全て引渡します。
(ハ)
官庁許認可等書類
建築確認通知書等、官庁許認可書類については、原本を全て引渡す必要があります。主なものは下記のとおりですが、物件により異なりますので、漏れがないか、事前に十分チェックを行ないます。
(a)
建築確認通知書
建築確認については、建築確認申請書2部(正・副)を所轄官庁(民間検査機関を含む)に提出し、審査が終われば、確認申請書(副)に確認通知書(または、確認済証)が添付されて申請者に戻るシステムとなっています。この場合の、確認申請書(副)には、法令チェックシート、建築図面、構造計算書等、確認審査に必要な図書が一式含まれています。確認通知書(確認済証)を引渡す場合は、これら一式の引渡しが必要となります。
また、建築工事中に設計変更が行なわれた場合は、再申請(計画変更確認申請といいます)がされていますので、その場合は計画変更確認申請書及び確認通知書(または、確認済証)の引渡しが必要となります。
その他、エレベーター、屋上広告塔等がある場合は、これらについても、工作物の確認申請書及び確認通知書(または、確認済証)の引渡しが必要です。
(b)
検査済証
建築が竣工した時点で、所轄官庁(民間検査機関を含む)の確認検査を受け、合格すると検査済証が交付されます。この検査済証が建築時点で違法建築ではなかった証となりますので、官庁許認可書類の中で一番重要なものとなります。
検査済証の交付を受けているかどうかの事実が重要ですので、万一、検査済証を紛失等して現存しない場合は、所轄官庁から、検査済証を発行した旨の証明(一般的に、台帳記載事項証明といいます)の発行を受けて引渡します。
(c)
消防法関係書類
建築基準法とは別に、消防用設備等については、消防法に基づく消防用設備等設置届、消防用設備等検査済証、消防用設備等点検結果報告書、消防立入検査結果通知書等の書類がありますので、それらについては、引渡しが必要となります。
(d)
建築基準法に基づく定期検査報告書
建築基準法に基づいて、各行政庁ごとに定期検査対象建築物を定めて、対象建築物については、検査資格者が作成した建築設備定期検査報告書の提出を求めています。建築指導官庁は、その報告に基づいて、是正勧告等を行ないます。
定期検査対象建築物に該当する場合は、検査報告書(是正勧告を受けておれば、その内容と処理内容を含む)の引渡しが必要となります。
(e)
道路占用許可書等
建物の付属物のために道路上空等を占用している場合等は、道路管理者に占用許可申請を行っていますので、その許可書の引渡しが必要となります。
(ニ)
所有権移転に必要な書類
所有権移転に必要な書類は、決裁引渡し当日に一つでも欠けていると決済自体が行なえませんので、事前にコピー等により買主側司法書士に内容を十分確認してもらう必要があり、場合によっては、買主側司法書士立会いのもとに原本確認を行ないます。通常、必要となる書類は以下のとおりです。
(a)
登記済権利証
土地、建物両方について必要です。万一、紛失している場合は、保証書の手続が必要になり、通常、この手続には2週間程度を要しますので、注意が必要です。
(b)
印鑑証明書、資格証明書
(c)
固定資産税評価証明書
(d)
抵当権の抹消に必要な抹消承諾書等
(e)
委任状、その他所有権の移転登記に必要な書類
(ホ)
鍵、備品等
鍵についてはリストを作成し、メーカー、№、本数、貸出中のものは貸出し先と本数、等を一覧表にします。売主保管のものについては、キーボックスでリストと実物の照合を行い、引渡すことになります。貸室の玄関キー等で入居者への貸出中のもの、及び管理委託会社に預けている鍵については、貸出先発行の鍵預り証(原本)を引渡します。
備品(脚立、清掃用具、マンホールハンドル等)についてもリスト化し、保管場所において、実物との照合を行い、引渡すことになります。
(ヘ)
竣工図等
建築時に引渡された下記の書類も引渡します。改修工事等を行なった場合は改修工事等に係る同様の書類も引渡します。
(a)
工事請負契約書
(b)
地盤調査報告書
(c)
杭工事施工結果報告書
(d)
竣工図製本(意匠・構造・設備)
(e)
施工図製本(躯体図、平面詳細図、設備施工図等)
(ト)
信託受益権売買契約に特有の引渡書類
信託受益権売買契約の場合は、上記書類に加えて、下記の書類が必要となります。
(a)
信託原簿の受益者を売主から買主に登記上変更するために必要な譲渡証書等
(b)
信託契約書の売主保有原本
(c)
受益権譲渡承諾書
(d)
売主が法人の場合、売買契約及び信託契約の締結を承認する取締役会議事録
(2)

精算等の準備

売買契約の決済日(引渡し日)においては、売主と買主は、下記の金銭の授受を行ないます。
(イ)
売買代金(買主から売主へ)
(ロ)
入居者から預かっている敷金、保証金(売主から買主へ)
(ハ)
固定資産税、都市計画税の精算金(買主から売主へ)
(ニ)
入居者等からの賃料、共益費等の精算金(売主から買主へ)
(ホ)
管理代行委託費、建物管理費、保守点検費等の精算金

上記以外に、水道光熱費、修繕費等についても精算が必要ですが、水道光熱費、修繕費等については、決済日を含む月分の費用が翌月以降に電力会社、水道局、工事施工会社等から請求されることとなり決済時点では金額が確定しませんので、これらの、確定しない金銭については、後日精算することとします。
また、上記のうち、固定資産税、都市計画税の精算金は、税務上は売買代金として取り扱われますので、建物固定資産税、都市計画税の精算金には別途、消費税が加算されます。
上記全ての精算金について、計算根拠を示して「精算覚書」を予め作成し、売主、買主双方が金額について確認を済ませておきます。
精算覚書に基づいて計算されるネット金額((イ)-(ロ)+(ハ)-(ニ)±(ホ))が、決済当日、実際に買主から売主に支払われる金額となります。
領収証については、一般的に、ネット金額ではなく、双方が受け取るべき金額で作成します。
(3)

引渡し

決済日当日は、司法書士による所有権移転に必要な書類の最終確認を行なった上で、引渡書類の引渡し、鍵の引渡し、精算覚書の締結等が行なわれ、売買代金等の受け渡しが行なわれます。
引渡書類の引渡し、鍵の引渡しについては、引渡書、受領書の交換を行ないます。
信託受益権売買の場合は、上記に先立って、不動産管理処分信託契約に関する一連の契約手続が行われます。
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