土地、建物の明け渡しの急所、明け渡しの具体的事例

貸地・貸家明け渡しガイド

土地、建物の明け渡しの急所

貸地、貸家の明け渡しを考える場合、当該貸地、貸家が借地法、借家法の適用を受けるものか否か、貸地、貸家の賃貸借契約に債務不履行による解除事由がないかどうかをまず検討することが大切です。借地法、借家法の適用がない場合や債務不履行がある場合は、明け渡しの際に明渡料が不要であり、そのうえ明け渡しをより迅速に行うことが可能であるからです。
借地法、借家法の適用があり、かつ債務不履行もない場合には、期間満了による更新拒絶又は解約申入れ (借家の場合) をするには 「正当事由」 が必要となります。この場合、十分資料を集めて正当事由要素を調査し、しっかりとした法律構成をし、かつ明渡料の見積をしたうえで、明渡交渉、明渡裁判に臨む必要があります。
このように、法的に正当な手順さえ踏んでいけば、貸地、貸家の明け渡しを行うことは極めて現実的なものとなっています。

土地の明け渡しの具体的事例

(1)

事案の概要

(イ)

事実関係

本件土地
大阪市近郊の所在の宅地約280㎡
権利の負担
種類
非堅固建物所有を目的とする賃借権
賃借人
男性 (70歳)
賃料
月額約6万円
土地の特性
交通至便な住宅地
本件土地の更地価格
約1億円
(ロ)

紛争の内容

本件賃貸借契約は、大正14年に締結され、平成7年12月31日に期間が満了しました。 賃貸人 (本件土地の所有者)は、本件土地を含む一団地を所有しており、この一団地上に中高層の賃貸マンションを建築し、有効活用したいと希望していました。
(2)

解決の方針

(イ)

なるべく低い明渡料で解決することを目標とする。

(ロ)

示談交渉では、賃借人に明渡料の提示をさせるように交渉していく。

(ハ)

示談交渉で、可能な限り、賃借人から情報を収集する。

(ニ)

示談交渉で賃借人が明渡料の提示をした後に、示談交渉を継続するか訴訟手続で和解をするかの判断を行う。

(3)

結果

示談交渉で、借地人から金4000万円の明渡料を提示させたのち訴訟を提起。訴え提起後、4か月(第5回期日)で金2000万円(内、1500万円は10年払)で和解が成立。
更地価格約1億円の土地をその約2割の2000万円の立退料を支払うことで明け渡しを受けることができました。
(イ)

示談交渉で、賃借人に明渡料の提示をさせたこと。

(ロ)

示談交渉で、賃借人側の家族構成、今後の同居の方針等の重要情報を収集できた。

(ハ)

示談交渉に早期に見切りをつけて、訴訟での和解に持ち込んだこと。

(4)
成功のポイント
(イ)
示談交渉で、賃借人に明渡料の提示をさせたこと。
(ロ)
示談交渉で、賃借人側の家族構成、今後の同居の方針等の重要情報を収集できた。
(ハ)
示談交渉に早期に見切りをつけて、訴訟での和解に持ち込んだこと。

建物の明け渡しの具体的事例

事例その1
(1)

事案の概要

(イ)

事実関係

本件土地:大阪市中心部所在の宅地約130坪
権利の負担:
種類:地上建物につき賃借権
賃借人:23人(居住用16名、 営業用7名)
賃料:居住用1軒当り月額金2万5000円前後/営業用1軒当り月額金6万円前後
期間:定めなし
土地の特性:交通至便な商業地
本件土地の更地価格:金10億2700万円 (平成4年)
(計算)坪790万円×130坪
(ロ)

明け渡しの目的

賃貸人 (本件土地建物の所有者) は、貸家人明け渡しの後、同敷地に高層賃貸マンションの建設を計画していました。
(2)

解決の方針

(イ)

できるだけ低い明渡料で解決する。

(ロ)

居住目的の賃借人と営業目的の賃借人を分断して解決していく。

(ハ)

まず、居住目的の賃借人との示談交渉を行い、大部分の示談による明け渡しの合意を成立させたのち、営業目的の賃借人と示談交渉をし、交渉期間を2~3か月程度と決めておき、その間に明け渡しの合意ができなければ訴訟を行う。

(ニ)

訴訟は、賃借人1名ずつ別々に提起する。

(ホ)

訴訟は、有利な見通しのものから順次判決をとる。

(3)

結果

(イ)

弁護士3名が、居住目的の賃借人16名と交渉を開始し、3か月以内に14名と明渡料金20万円~75万円で示談による明け渡しの合意が成立。

(ロ)

交渉開始後4か月後に、営業目的の賃借人7名に対し、訴え提起。

(ハ)

訴え提起3か月後に営業目的の賃借人1名と裁判上の和解が成立。
訴え提起7か月後に訴えを提起していなかった居住目的の賃借人2名と示談による明け渡しの合意が成立。

(ニ)

訴え提起後約1年6か月後に、営業目的の賃借人7名全員に対し、第1審判決ですべて勝訴。その後、約6か月で明け渡し完了。

(ホ)

明け渡しに要した期間約2年3か月、明渡料合計金4555万円 (更地価額の4.4%)で明け渡しが実現。

(4)

成功のポイント

(イ)

複数の弁護士が組織的に交渉、訴訟に従事したこと。

(ロ)

相手方をまとめさせず1軒ずつ別々に交渉したこと。

(ハ)

賃借人との交渉の順序が正しかったこと。

(ニ)

居住目的の賃借人との間で早期から低額の明渡料で示談解決をしたこと。

(このことが営業目的の賃借人に対する勝訴判決に大きく影響している)
(ホ)

賃借人1名ごとに訴訟を提起し、有利な見通しのものから判決をとり、その判決を他の訴訟に有利に利用したこと。

事例その2
(1)

事案の概要

(イ)

事実関係

本件土地
446㎡
本件建物
鉄骨造陸屋根3階建共同住宅 (S49築)
1F~3F各212㎡
借家人
15名中12名在室
家賃
5万3000円~4万6000円
保証金
30万円~50万円
(ロ)

明け渡しの目的

建替えのために借家人に対し明け渡しを要求。
(2)

解決の方針

(イ)

貸主の希望条件 (交渉から6か月間で明け渡しを完了してほしい。明渡料は借家人1人につき100万が上限、保証金は全額返還)に沿うべく早急に解決する。

(ロ)

100万円以下で明け渡しに応じる者から先に示談解決する。

(ハ)

時間的制約があったため、 4名の弁護士が同時に交渉。

(3)

結果

(イ)

平成9年4月中頃から交渉をはじめ、同年10月末に明け渡し完了 (期間6か月)。

(ロ)

明渡料100万円前後ですべて示談解決。

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