2
損害賠償責任のQ&A4
(2)
(イ)
違法駐車により交通事故が起きた場合の責任
Q:
自動車で夜間走行中に、道路上に違法駐車していた車両に追突して、怪我を負った場合、その駐車車両の保有者や運転者に責任を追及することができるのでしょうか?
A:
1.
駐車車両の責任
実務上、とまっている自動車に自ら追突した場合、やはり自らの落ち度が大きいといえることから、追突した方が100%の責任を負うのが一般的とされています。しかし、駐車中の車両であっても、駐車の仕方や場所等によっては、走行中の自動車に危険を及ぼすことがあり、不注意な駐車のせいで走行中の自動車が追突してしまった場合には、その駐車車両の保有者や運転者が責任を負うべきことは当然です。
実務上、とまっている自動車に自ら追突した場合、やはり自らの落ち度が大きいといえることから、追突した方が100%の責任を負うのが一般的とされています。しかし、駐車中の車両であっても、駐車の仕方や場所等によっては、走行中の自動車に危険を及ぼすことがあり、不注意な駐車のせいで走行中の自動車が追突してしまった場合には、その駐車車両の保有者や運転者が責任を負うべきことは当然です。
2.
駐車車両と運行供用者責任
人身損害について、駐車車両の保有者等に運行供用者責任を問えないでしょうか(自動車損害賠償保障法3条)。駐車していることが、運行供用者責任の成立要件である「運行によって」にあたるかが問題です。
判例上、駐車車両が、
人身損害について、駐車車両の保有者等に運行供用者責任を問えないでしょうか(自動車損害賠償保障法3条)。駐車していることが、運行供用者責任の成立要件である「運行によって」にあたるかが問題です。
判例上、駐車車両が、
(1)
後に走行することが予定されていたか、
(2)
どれくらい後に走行が予定されていたか、
(3)
駐車している場所が道路と近接していたか、
(4)
駐車の目的等から、前後の走行と一体として「運行によって」にあたるかどうか
が判断されています。そして、翌朝走行するつもりで深夜に違法駐車していた場合に生じた事故については、「運行によって」にあたるとされています。よって、この場合には、駐車車両の保有者や運行供用者に対して運行供用者責任を追及できることになります。
3.
違法車両と一般不法行為責任
「運行によって」にあたらず、運行供用者責任が認められないとしても、違法駐車により走行車両の追突を招いたことについて不注意があるときは、民法上の不法行為責任に基づき損害賠償責任を負います。
「運行によって」にあたらず、運行供用者責任が認められないとしても、違法駐車により走行車両の追突を招いたことについて不注意があるときは、民法上の不法行為責任に基づき損害賠償責任を負います。
4.
責任割合
以上のように、駐車車両の保有者等に対して損害賠償請求することができる場合があるとしても、やはりとまっている自動車に自ら追突した落ち度が大きいといえます。そこで、上述のとおり、実務上は追突車両が100%の責任を負うのが基本とされ、損害賠償請求は全く認められないこととされていますが、違法駐停車の場合には、追突車両の落ち度を10%減らすべきとされています(逆にいうと、追突車両に生じた損害のうち10%については損害賠償請求が認められるということです)。その他、次のように追突車両の落ち度を修正すべきとされています。
以上のように、駐車車両の保有者等に対して損害賠償請求することができる場合があるとしても、やはりとまっている自動車に自ら追突した落ち度が大きいといえます。そこで、上述のとおり、実務上は追突車両が100%の責任を負うのが基本とされ、損害賠償請求は全く認められないこととされていますが、違法駐停車の場合には、追突車両の落ち度を10%減らすべきとされています(逆にいうと、追突車両に生じた損害のうち10%については損害賠償請求が認められるということです)。その他、次のように追突車両の落ち度を修正すべきとされています。
(1)
降雨、濃霧、暗所等視界不良の場合には、10%減らす
(2)
車道を大きく塞ぐ等の駐停車方法が不適切な場合には、10%から20%減らす
(3)
非常点滅灯の不燈火の場合は、10%から20%減らす
(4)
駐停車の退避が不可能な場合は、10%増やす(この場合、違法駐車であっても、結局、追突車両の落ち度は100%となってしまいます)
(5)
追突車の速度違反の場合は、10%から20%増やす
(ロ)
従業員による交通事故と会社の責任
Q:
従業員が営業中に社用車で交通事故を起こした場合、会社は事故の相手方に対して責任を負わなければならないのでしょうか。従業員が業務時間外に無断で社用車を使用していた場合や、従業員の私用車の場合はどうでしょうか?
A:
1.
使用者責任
(1)
実務上、被害者が、従業員の不注意で起こした事故により被害を被ったこと、および、客観的にみて、従業員が業務として社用車を運転していたことを証明すれば、会社は従業員が起こした交通事故による損害を賠償しなければなりません(使用者責任。民法715条1項)。本件でも、被害者がこれらの要件を証明すれば、無断使用の場合であると、私用車の場合であるとを問わず、使用者責任を追及することができます。
(2)
なお、法律上は、会社が従業員の採用およびその従業員の業務の監督について相当注意していたこと、または、相当注意していたとしても、別の原因により損害を避けられなかったことを会社が証明した場合には、会社は責任を免れることができるとされていますが、実務上、会社がこれらを証明して責任を免れるということはほとんどありません。
2.
運行供用者責任
(1)
会社が「自らのために自動車を運行の用に供するもの」(運行供用者)にあたれば、人身損害については、会社は使用者責任のみならず、運行供用者責任をも負うことになります(自動車損害賠償保障法3条)。
(2)
そして、従業員が営業中に社用車で交通事故を起こした場合、会社は文字通り運行供用者にあたり、運行供用者責任を負います。
(3)
他方、従業員が業務時間外に無断で社用車を使用していた場合には、必ずしも運行供用者にあたるとはいえません。この場合は、次のような事情を総合的に考慮して、第三者の目には「会社のために自動車を運行している」と見えれば、運行供用者責任を負うことになるとされています。
(イ)
鍵の管理が十分でなかったとか、事故を起こした従業員が鍵を管理していた等、社用車を使用されることとなった事情
(ロ)
業務とは全く関係ないときの使用であったか、あるいは、業務の前後であったか等、社用車の使用と業務との関連性
(ハ)
日常的にその従業員が自動車を業務として運転していたか否か
(ニ)
それまでに無断での私用運転が行われていたか
(4)
従業員の私用車であっても、会社の業務に使用していた場合には、会社は運行供用者責任を負うことになります。
様々な関係者の責任1