過失相殺の範囲3

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

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損害賠償の範囲のQ&A

(7)

損益相殺

(ヘ)

自動車同士の事故の過失割合の基準

Q:
自動車同士の事故において、どのような場合にどのような割合で双方に過失が認められるかの基準があれば教えてください。
A:
1.
過失相殺
民法722条2項により、被害者に過失(落ち度)がある場合には、裁判所は、これを考慮して損害賠償額を算定することができます(過失相殺)。例えば、被害者に総額1000万円の損害が生じた場合でも、被害者側に3割の過失があれば、加害者の賠償すべき損害額は700万円になるということです。
2.
交差点での直進車同士の事故
(1)
青信号に従って直進する車両と、赤信号を無視して直進した車両との過失割合は、原則として、0対100とされます。ただし、青信号に従っていても、通常の速度と前方注視により通常の注意をしていれば衝突を回避できた場合には、青信号に従って直進した車両にも過失を認めることができる場合があります。
(2)
黄信号時に直進した車両と、赤信号を無視して直進した車両との過失割合は、20対80とされています。
(3)
信号機が設置されておらず、交通整理が行われていない交差点での事故の場合、ア道路の幅員が同じで、見通しが悪い交差点の場合、双方に徐行義務が課せられますから、徐行義務をどちらが果たしたかにより過失割合は決まります。イ交差点への進入速度も幅員も同じで、同時に進入した場合、左方優先の原則により、左方車と右方車の過失割合は40対60とされます。ウ一方に一時停止の標識がある場合は、原則として、一時停止義務違反車と他方の車両とでは80対20の過失割合とされます。
(4)
優先道路または一方が明らかに広い道路との交差点の場合、優先道路または広い道路の車両が優先しますから、優先道路または広路を進行する車両の過失割合は10%または20%とされます。
3.
右折車と直進車の事故
右折車は直進車の進行を妨げてはならないとされていることから(道路交通法37条)、右折車と直進車の過失割合は30対70とされています。
4.
対向車同士の事故
センターラインを越えたことによる対向車同士の衝突事故の場合、センターラインを越えた車両が100%の責任を負い、過失相殺はなされないのが原則です。
ただし、
(1)
道路の左側部分の幅員が車両の通行に不十分なとき、
(2)
道路の損壊、道路工事その他の障害のために左側部分を通行することができないとき、
(3)
左側部分の幅員が6メートルに満たない道路において、他の車両を追い越すとき
等の場合は、道路の右側部分にはみ出して(センターラインを越えて)通行することができるとされていることから(道路交通法17条5項)、左側部分を通行する車両にも一定の過失を認めることができる場合もあるでしょう。
5.
同一方向進行車両同士の事故
(1)
追突事故の場合、原則として、追突車両に100%の過失が認められます。
(2)
追越禁止場所での事故では、原則として、追越車両に100%の過失が認められます。追越禁止場所でなくても、追越車両に10%から20%程度の過失が認められています。
(ト)

単車対四輪自動車の事故の過失割合の基準

Q:
単車と四輪自動車との事故において、どのような場合にどのような割合で双方に過失が認められるかの基準があれば教えてください。
A:
1.
過失相殺
民法722条2項により、被害者に過失(落ち度)がある場合には、裁判所は、これを考慮して損害賠償額を算定することができます(過失相殺)。例えば、被害者に総額1000万円の損害が生じた場合でも、被害者側に3割の過失があれば、加害者の賠償すべき損害額は700万円になるということです。
2.
単車修正
道路交通法上、運転者に課せられる義務は、単車の場合と四輪自動車の場合とで基本的に異なるところはありませんが、四輪自動車同士の事故の場合に比べて、通常、単車の過失は10%から20%程度低いものとされています。
3.
二段階右折違反による事故
原動機付自転車が二段階右折をしなければならない交差点で、二段階右折をしなかったために、直進してきた自動車と衝突した場合、原動機付自転車の過失は否定できませんが、四輪自動車同士の交差点右折時の事故の場合に比べて、原動機付自転車の過失は5%増程度とされているようです。
4.
巻込み事故
交差点で四輪自動車が左折する際に、合図をしなかったり、左後方を確認しなかったために、直進する単車を巻き込む事故の場合、四輪自動車の過失は大きいと言わざるを得ません。この場合で、左折する四輪自動車が先行している場合には、漫然と直進しようとした単車側にも過失があることは否定できないことから、四輪自動車の過失は80%程度とされています。他方、単車が先行している場合に、四輪自動車が単車を追い抜きざまに左折したために巻込み事故が起きた場合には、四輪自動車の過失は90%程度となります。
5.
渋滞中の車両間での出合い頭事故
渋滞中の車両の間を右折または横断しようとする四輪自動車と、渋滞中の車両の左側を直進する単車との事故では、四輪自動車の過失は70%程度とされます。

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