離婚財産分与の知識2|離婚財産分与の割合と時期
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財産分与は、いつの時点での財産を基準にして決めるのでしょうか。
離婚する前に夫婦が別居しているケースは非常に多く見られます。このような場合、別居時の時点を基準にして分与を決めるのでしょうか、それとも別居から期間が経過している裁判時(裁判の審理終結時)の財産が基準になるのでしょうか。これについても裁判例は分かれていて、一概にこうと決め付けることはできません。
前述の(2)の(ロ)(ハ)に出てきた扶養的財産分与、慰謝料的財産分与については、裁判所が判断するときの時点を基準にせざるを得ないでしょう。
財産分与の中心である清算的財産分与については、別居時に夫婦の協力関係が解消するとすれば、別居時の時点を基準にすることになると、一応いうことができると思われます。ただ別居とはいっても、別居中も夫が住宅ローンの支払いをし、妻が子の養育を行っている場合など、別居時に協力関係がまったく終了したと考えるのもどうかと思われるケースもあるところです。
結局、協力関係の終了した別居時を一応の基準時点とし、それでは公平とはいえない事情があればこれを修正していくということになると思われます。
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財産分与は離婚からいつまで請求できるのでしょうか。
財産分与が請求できるのは離婚から2年間ということになっています。ですから、離婚から2年たつと財産分与は請求できなくなりますので、財産分与の請求を考えている場合は、この期間を過ぎないようにして下さい。これは年金分割のところでも述べましたが、財産分与、年金分割を考えているときは、離婚から早めにすることあるいは離婚と同時に財産分与、年金分割を解決することが大切です。
もし離婚から2年を過ぎても財産分与の調停の申立はできないわけではありませんが、相手方に離婚から2年たっているから応じられないと言われればそれまでです。これがもし離婚から2年以内の調停申立であれば、調停で合意ができなかった場合、裁判所が、審判といって、判決と同じように判断を示してくれることになります。
慰謝料請求権の時効は3年間ですが、財産分与は2年間なので、混同しないようにして下さい。
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財産分与の課税についてはどうでしょうか。
現金の分与
現金で支払ったり、支払いを受けたりする場合は、原則として課税はされません。支払いを受けた側は所得税も贈与税も課税されません。ただ財産分与に名を借りて、夫婦で築いた財産の寄与度に応じた分配を超えた、実質的には贈与に等しいようなことをすると、贈与税が課されることになります。
不動産の分与
問題は不動産を財産分与で渡す場合です。
このときは受け取った方ではなく、渡した方に譲渡所得税が課されることになっています。
不動産を受け取った方に不動産取得税が課されるのはやむを得ないとしても、渡したほうは何の利得もなしに譲渡所得税が課されるのは納得できないと思われるかもしれません。そう思っている法律家もたくさんいます。ただ現実は渡した方に譲渡所得税が課されるのが確立した判例となっています(最判昭和50年5月27日)。
理屈としては、財産分与義務が消滅するのであるから、それ自体一つの経済的利益であるとするのですが、渡した方には売買のように代金が入ってくるわけではありませんので、釈然としない思いは残ってしまうと思います。
現に、夫が不動産を財産分与したところ、後になって約2億円の譲渡所得の課税がなされたため、妻に対して財産分与の無効を訴えた裁判でそれを認めようとしている例があります(最判平成元年9月14日)。
しかし不動産を渡した方に譲渡所得が課税されるという原則が変えられたわけではありませんので、不動産を財産分与で渡す場合はくれぐれもこの点に注意して下さい。場合によってはあらかじめ税理士さん等の専門家に相談したほうがいいでしょう。そうでないと後になって先ほどの最高裁の裁判例のようなことにならないとも限らないと思います。
なお、不動産を渡す方がこれに居住していた場合、いわゆる居住用不動産の譲渡の特別控除3000万円の適用を受けることはできますが、長期間の別居等により居住していなかった場合、居住用財産と認められないことになりますので注意が必要です。
婚姻期間20年以上の夫婦の場合、居住用財産の贈与については2000万円の控除があります。
このあたりのことになりますと、弁護士でも慎重な人は精通した税理士に相談しているくらいですので(不動産の場合、課税額が大きく、そんなに税金がかかるとは思わなかったでは済まされないため)、一人で判断せず税理士さんや税務署の相談コーナーで尋ねてみるのがいいと思います。
このときは受け取った方ではなく、渡した方に譲渡所得税が課されることになっています。
不動産を受け取った方に不動産取得税が課されるのはやむを得ないとしても、渡したほうは何の利得もなしに譲渡所得税が課されるのは納得できないと思われるかもしれません。そう思っている法律家もたくさんいます。ただ現実は渡した方に譲渡所得税が課されるのが確立した判例となっています(最判昭和50年5月27日)。
理屈としては、財産分与義務が消滅するのであるから、それ自体一つの経済的利益であるとするのですが、渡した方には売買のように代金が入ってくるわけではありませんので、釈然としない思いは残ってしまうと思います。
現に、夫が不動産を財産分与したところ、後になって約2億円の譲渡所得の課税がなされたため、妻に対して財産分与の無効を訴えた裁判でそれを認めようとしている例があります(最判平成元年9月14日)。
しかし不動産を渡した方に譲渡所得が課税されるという原則が変えられたわけではありませんので、不動産を財産分与で渡す場合はくれぐれもこの点に注意して下さい。場合によってはあらかじめ税理士さん等の専門家に相談したほうがいいでしょう。そうでないと後になって先ほどの最高裁の裁判例のようなことにならないとも限らないと思います。
なお、不動産を渡す方がこれに居住していた場合、いわゆる居住用不動産の譲渡の特別控除3000万円の適用を受けることはできますが、長期間の別居等により居住していなかった場合、居住用財産と認められないことになりますので注意が必要です。
婚姻期間20年以上の夫婦の場合、居住用財産の贈与については2000万円の控除があります。
このあたりのことになりますと、弁護士でも慎重な人は精通した税理士に相談しているくらいですので(不動産の場合、課税額が大きく、そんなに税金がかかるとは思わなかったでは済まされないため)、一人で判断せず税理士さんや税務署の相談コーナーで尋ねてみるのがいいと思います。
財産分与の分与(分割)割合はどのようなものでしょうか。
夫婦二人で築いた財産をどのような割合で分割するかは要するにその財産を築き上げるについての寄与度(貢献度)で決められます。もっとも、家庭裁判所での調停などの実務においては、原則として1:1の割合(平等に分ける)というのが最近の傾向と思われます。以前は、いわゆる専業主婦などの場合、平等よりは多少低い割合で決められたこともあったようですが、主婦の家事労働といえどもそれがあってこその夫の収入というように考えると、原則としては平等ということになるでしょう。
ただし、どちらかの寄与度がはっきりと大きいといえるような場合は、平等ではなく、寄与度に応じて分与割合を定めている例もあります。古い裁判例ですが、夫が病院経営をしており、昭和42年当時で1億3000万円近い診療報酬を得ているケースで、財産分与は2分の1と主張する妻に対して、それは無理とした裁判例(福岡高裁昭和44年12月24日判決)、逆に、夫婦でプロパンガス販売店を営んでいたところ、夫が女狂いが多く遊興にふけることが往々で、と認められたケースで、妻の寄与度を7割とした裁判例(松山地裁西条支部昭和50年6月30日判決)といったものがあります。
これらの例は確かに平等とするとかえって不公平になるケースでしょう。夫婦平等というのはあくまでも原則で、原則どおりとするとかえって不公平と思われるようなケースではそれぞれ具体的な事情に応じて決められることになります。