第2
6
調停手続の終了
(1)
効果
紛争に関して、当事者間の話合いがまとまると、その内容の調停調書が作成され調停手続が終了します。この調書には、原則として、後から不服を唱えることはできません。この調書には、確定した判決と同様の効力があり、当事者の一方が、調停の内容に従わない場合には、その内容を実現するため、強制執行を申立てることができます。強制執行とは、一定の義務を負っている者がその義務に従わない場合に、国の権力によって強制的にその義務を実現させるための制度のことをいいます。なお、調停調書は、裁判所に調停調書交付の請求書を提出することにより受け取ることができます。調停調書交付の請求書の記載方法等については、担当の裁判所書記官に相談して下さい。
(2)
調停不成立後の手続
当事者間の話合いがまとまらず不成立となった場合には、民事調停手続は終了します。そして、民事調停が終了した後の紛争解決方法としては、訴訟を提起するという方法があります。この訴訟を、調停打切りの通知を受けてから2週間以内に提起した場合には、調停申立の際に納めた手数料の額は、訴訟の手数料の額から差し引かれます。詳細は、担当の裁判所書記官に相談して下さい。
7
民事調停委員とは
法律は、「民事調停委員・・・は、弁護士となる資格を有する者、民事若しくは家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満の者の中から、最高裁判所が任命する。ただし、特に必要がある場合においては、年齢四十年以上七十年未満の者であることを要しない。」と規定しています(民事調停委員及び家事調停委員規則1条)。したがって、民事調停委員とは、いわゆる有識者である民間人の中から選任された者です。
具体的には、専門的知識経験を有している者として、弁護士、大学の教授、元公務員等が、豊富な社会生活経験を有している者として、定年後のサラリーマン、主婦等が民事調停委員として選任されています。
8
第三者の参加
民事調停法は、「調停の結果について利害関係を有する者は、調停委員会の許可を受けて、調停手続に参加することができる。」と規定しています(民事調停法11条1項)。したがって、民事調停の結果に利害関係を有している者であれば、調停委員会の許可を受けて、民事調停に参加することができます。ここにいう「利害関係」には、調停の結果について、直接的又は間接的に法律上の利害関係を有する場合のみならず、直接的又は間接的に事実上の利害関係を有する場合も含まれます。具体的には、貸金の返還について、貸主と借主とが当事者として調停を行っている場合に、その貸金についての保証人は、調停の結果について利害関係があるため、調停に参加することができます。
また、マンションの家賃の額について、そのマンションの所有者である貸主と借主とが当事者として調停を行っている場合に、同一のマンションの他の借主は、調停の結果について利害関係があるため、調停に参加することができます。
以上のように、第三者の民事調停への参加が認められています。
さらに、民事調停法は、「調停委員会は、相当であると認めるときは、調停の結果について利害関係を有する者を調停手続に参加させることができる。」と規定しています(民事調停法11条2項)。
したがって、自ら民事調停への参加を望んでいない場合であっても、調停委員会より、民事調停に参加するよう命じられることもあります。
9
罰則等
(1)
罰則の種類
民事調停法は、下記(イ)及び(ロ)の場合に罰則を科しています。
(イ)
民事調停の呼出しを受けたのにもかかわらず、裁判所に出頭しない場合
(ロ)
調停前の措置に違反した場合
したがって、民事調停の当事者となった場合で、(イ)民事調停の呼出し、及び(ロ)調停前の措置に違反したときには、原則として罰則が科せられます。
(2)
呼び出しに応じない場合
民事調停法は、「裁判所又は調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由なく出頭しないときは、裁判所は、5万円以下の過料に処する。」と規定しています(民事調停法34条)。したがって、民事調停に「正当な事由」なく出頭しなかった場合には、5万円以下の過料を科せられる可能性があります。
上記「正当な事由」が認められる場合は、個別の事案によって異なりますが、重病であり裁判所に出頭できる状態でない場合等は「正当な事由」が認められますが、単に多忙である等は「正当な事由」は認められません。
(3)
調停前の措置命令に違反した場合
民事調停法は、「当事者又は参加人が正当な事由がなく、調停前の措置に従わないときは、裁判所は、10万円以下の過料に処する。」と規定しています(民事調停法35条)。したがって、調停前の措置に違反した場合には、10万円以下の過料を科せられる可能性があります。
上記「正当な事由」が認められるか否かも、具体的事案によりますが、客観的に見て調停前の措置に違反することが、やむを得ないと認められる場合には、「正当な事由」が認められます。もっとも、上記「正当な事由」が認められることは非常に稀なケースに限られます。
(4)
民事調停委員による秘密保持
民事調停法は、「民事調停委員又は民事調停委員であった者が、正当な事由なくその職務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6箇月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。」と規定しています(民事調停法38条)。すなわち、民事調停法は、民事調停委員に対する罰則を設けることにより、民事調停手続において話した個人の秘密が外部に漏れることを防止しています。また、民事調停委員は、裁判所より適切な人材として選定された者であることからしても、民事調停で話した秘密が、民事調停委員より外部に漏れることは基本的にありません。
にもかかわらず、民事調停委員が紛争当事者の秘密を外部に漏らした場合には、その被害者は、秘密を漏らした民事調停委員に対して、民事責任、場合によっては刑事責任を追及することができます。
民事調停