調停の知識14|家事調停委員、罰則等

調停ガイド

第4

家事調停

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家事調停委員とは

法律は、「家事調停委員は、弁護士となる資格を有する者、・・・家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満の者の中から、最高裁判所が任命する。ただし、特に必要がある場合においては、年齢四十年以上七十年未満の者であることを要しない。」と規定しています(民事調停委員及び家事調停委員規則1条)。
したがって、家事調停委員とは、いわゆる有識者である民間人の中から選任された者です。
具体的には、専門的知識経験を有している者として、弁護士、大学の教授、元公務員等が、豊富な社会生活経験を有している者として、定年後のサラリーマン、主婦等が家事調停委員として選任されています。
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家事調停手続への参加方法

(1)

当事者参加

(イ)
能動的参加
当事者となる資格を有する者は、家庭裁判所に対して、参加の趣旨及び理由を記載した参加申出書を提出し、これが却下されない限り、当事者として家事調停手続に参加することができます(家事事件手続法258条1項の準用する同法41条1・3項)。
(ロ)
受動的参加
家庭裁判所は、相当と認める場合、既存の当事者の申立て又は職権により、当事者となる資格を有する者であり、かつ、審判を受ける者となるべき者を、家事調停手続に参加させることができます(家事事件手続法258条1項の準用する同法41条2項)。既存の当事者による申立ては、参加の趣旨及び理由を記載した参加申立書を提出により行います(家事事件手続法41条3項)。
(2)

利害関係参加

(イ)
能動的参加
審判を受ける者となるべき者は、家庭裁判所に対して、参加の趣旨及び理由を記載した参加申出書を提出し、これが却下されない限り、利害関係人として家事調停手続に参加することができます(家事事件手続法258条1項の準用する同法42条1・4項、同法41条3項)。
審判の結果により直接の影響を受ける者及び当事者となる資格を有する者は、家庭裁判所に対して、参加の趣旨及び理由を記載した書面にて参加許可の申立てをし、これが許可された場合、利害関係人として家事調停手続に参加することができます(家事事件手続法258条1項の準用する同法42条2・4項、同法41条3項)。
(ロ)
受動的参加
家庭裁判所は、相当と認める場合、職権により、審判を受ける者となるべき者、審判の結果により直接の影響を受ける者及び当事者となる資格を有する者を、家事調停手続に参加させることができます(家事事件手続法258条1項の準用する同法42条3項)。

具体的事案における参加の可否及び方法については、弁護士等にご相談下さい。
(3)

強制参加

家事審判法は、「家庭裁判所は、相当と認めるときは、調停の結果について利害関係を有する者を調停手続に参加させることができる。」と規定しています(家事審判法12条、20条)。
したがって、自ら家事調停への参加を望んでいない場合であっても、家庭裁判所より、家事調停に参加するよう命じられることもあります。
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罰則等

(1)

罰則の種類

家事事件手続法は、主に以下の場合に各金額の過料に処するとしています。
(イ)
家事調停の呼出しを受けたのにもかかわらず、裁判所に出頭しない場合 5万円以下
(ロ)
履行命令に従わない場合 10万円以下
他にも調停前の処分に従わない場合等にも過料が定められています。
(2)

呼出に応じない場合

呼出しを受けた事件の関係人が、家事調停の手続の期日に正当な理由なく出頭しない場合、家庭裁判所は5万円以下の過料に処すると規定しています(家事事件手続法258条の準用する同法51条)。
したがって、家事調停に「正当な理由」なく出頭しなかった場合には、5万円以下の過料を科せられる可能性があります。
「正当な理由」が認められる場合は、ケースバイケースになりますが、重病であり裁判所に出頭できる状態でない場合等は「正当な理由」が認められますが、単に多忙である等では「正当な理由」は認められません。
(3)

履行命令に従わない場合

家事調停で定められた義務の履行を命令したとき、その履行を命じられた者が「正当な理由」なくその命令に従わない場合、家庭裁判所は、10万円以下の過料に処すると規定しています(家事事件手続法290条)。
したがって、家庭裁判所の履行命令に違反した場合には、10万円以下の過料を科せられる可能性があります。
「正当な理由」が認められるか否かは、ケースバイケースになりますが、客観的に見て履行命令に違反することが、やむを得ないと認められる場合には、「正当な理由」が認められます。
もっとも、「正当な理由」が認められることは非常に稀なケースに限られます。
(4)

家事調停委員による秘密保持

(イ)
家事事件手続法上の規定
家事事件手続法は、「参与員、家事調停委員又はこれらの職にあった者が正当な理由なくその職務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、1年以下の朝敵又は五十万円以下の罰金に処する。」(家事事件手続法292条)、「家事調停委員又は家事調停委員であった者が正当な理由なく評議の経過又は裁判官、家事調停官若しくは家事調停委員の意見若しくはその多少の数を漏らしたときは、三十万円以下の罰金に処する。」(家事事件手続法293条)と規定しています。
すなわち、家事事件手続法は、家事調停委員に対する罰則を設けることにより、家事調停手続において話した個人の秘密や評議の経緯等が外部に漏れることを防止しています。
また、家事調停委員は、家庭裁判所より適切な人材として選定された者であることからしても、家事調停で話した秘密や評議の経緯等が、家事調停委員より外部に漏れることは基本的にありません。
(ロ)
家事調停委員が人の秘密を漏らした場合
上記(イ)の規定にもかかわらず、家事調停委員が紛争当事者の秘密を外部に漏らした場合には、その被害者は、秘密を漏らした家事調停委員に対して、民事責任、場合によっては刑事責任を追及することができます。

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