不動産
改正民法による不動産賃貸業への影響(2)
1 はじめに
約120年ぶりの大改正と言われている令和2年4月1日施行の改正民法は、不動産賃貸業にどのような影響をもたらしたのか。今回は、不動産賃貸借契約において、賃貸物件の一部分を使用できなくなった場合の法律関係について説明します。
2 改正前民法及び改正民法の定め
賃貸借契約は、有償で(賃料を受領して)、物件を使用させる契約です。したがって、対象物件の一部が使用できなくなった場合、その分の対価としての賃料をもらう理由がなくなります。
改正前民法では、賃借人の責任によらずに(例えば、台風や地震等で)賃貸物件の一部が使用できなくなった場合、賃借人は、賃貸人に対し、「賃料の減額を請求することができる。」(改正前民法第611条第1項)とされていました。
これに対し、改正民法第611条第1項は、「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。」と規定しており、賃料が当然に(賃借人の請求がなくても)減額されることとなりました。
3 賃借人の対応
賃借人は、賃貸人に対し、「〇月〇〇日の台風を理由に、〇〇が使用できなくなったため、〇月〇〇日以降、月額〇〇円を賃料として支払います。」などと通知することにより賃料が減額されることとなります。ただし、減額賃料が相当かどうかについて、賃貸人が納得しない場合は、賃貸人は、その額について異議を唱えることができ、その場合、賃料額は最終的には裁判によって決定されることとなります。
4 賃貸人の対応
上記のとおり、賃借人からの請求がなくても賃料が減額されることになりますが、現実には、対象物件を賃借人が使用中であるため、使用不可能な箇所の確認をすることができず、減額された賃料が相当なのかどうかの判断もできません。さらに、果たして本当に賃借人の責任によらずに使用できなくなったのかどうかも判断することができません。
よって、まず、賃貸人としては、賃借人に対し、原因や損傷箇所などの確認・説明を求める必要があります。
5 最後に
以上のとおり、不動産賃貸における賃料減額をめぐって、重要な法改正がなされました。賃貸人としては、賃借人の一方的な減額通知のみを鵜呑みにせず、法改正を踏まえて対応する必要があります。
不動産賃貸借をめぐっては、賃料減額のみならず、今回の民法改正で思わぬ損害を被ることも想定されますので、不動産賃貸をめぐるトラブルの事前予防については、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。
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