離婚、離縁
普通養子と特別養子
1 はじめに
養子縁組とは,血縁関係にない者同士が法律上の親子関係を結ぶための制度をいいます。養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組があります。普通養子は,養子が実親との親子関係を残したまま他の人と法律上の親子関係を結ぶ養子縁組です。他方,特別養子は,養子と実親との親子関係を終了させて,他の人と法律上の親子関係を結び,養子を実の子に近い扱いをするものです。
特別養子は,実親との親子関係が終了するという強い効果を有するため,縁組成立のための要件は普通養子に比べて厳しくなっています。
例えば,普通養子は養親の年齢が20歳以上であれば独身者であっても養子縁組をすることができますが,特別養子は夫婦でなければ養親になれず,一方の養親が25歳以上,もう一方の養親が20歳以上である必要があります。
このような違いは,普通養子が子の養育・相続・後継者を獲得するため等の多用な目的のために利用されることを想定しているのに対し,特別養子が保護を必要とする幼児の養育のため利用されることを想定し,より子の利益に配慮していることから生じています。
2 成立の要件
⑴ 普通養子の成立の要件
普通養子縁組を成立させるためには,養親と養子が養子縁組を結ぶことを合意し,届出を行う必要があります。
また,普通養子縁組をする場合には,以下の要件を満たしている必要があります。
① 養親が20歳以上であること
② 養子が尊属又は年長者ではないこと
③ 後見人が被後見人を養子とする場合,家庭裁判所の許可を得ること
④ 配偶者のある者が未成年者を養子とする場合,原則として,夫婦共同で養親となること
⑤ 配偶者のある者が縁組をする場合,原則として,他方配偶者の同意を得ること
⑥ 15歳未満の者を養子とする場合,養子の法定代理人の承諾を得ること
⑦ 未成年者を養子とする場合,原則として,家庭裁判所の許可を得ること
⑵ 特別養子の成立の要件
普通養子縁組が,養親と養子が合意の上,届出を行うことによって成立するのに対し,特別養子縁組は,当事者の申立てに基づき家庭裁判所が審判をすることによって成立します。
成立の要件としては,以下のとおりです。
① 原則として,養親となる者が夫婦共同で縁組をすること
② 一方の養親が25歳以上であり,もう一方の養親が20歳以上であること
③ 原則として,養子が15歳未満であること
④ 原則として,実方の父母の同意を得ること
⑤ 子の利益のための特別の必要性があること
3 離縁の要件
離縁とは,養子縁組を解消することをいい,協議離縁,調停離縁,審判離縁,裁判離縁などがあります。
離縁をするための要件も,普通養子と特別養子とでは次のとおり異なっています。
⑴ 普通養子の離縁の要件
① 協議離縁
協議離縁は,養親と養子が離縁をすることに合意し,届出を行うことで成立します。なお,養親が夫婦の場合に,未成年の養子と離縁をするには,夫婦が共に離縁をしなければなりません。
② 調停離縁
養親又は養子が離縁を拒否し,協議離縁ができない場合は,家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停離縁は調停委員と裁判官が間に入り,養親と養子の話し合いによって合意を目指す手続きです。調停における協議の結果,養親と養親が離縁に合意できれば,離縁をすることができます。
③ 審判離縁
調停を経ても当事者間に合意が成立しない場合には,家庭裁判所が相当と認めれば,審判により離縁ができます。もっとも,審判離縁は当事者から適法な異議申立てがあると離縁の効力が失われてしまいます。
④ 裁判離縁
一方当事者の異議申立てにより審判の効力が否定されてしまうと,離縁を希望するもう一方の当事者は,離縁の訴えを提起し,裁判離縁を求めていくことになります。
裁判離縁が認められるためには,
a 他の一方から悪意で遺棄されたとき
b 他の一方の生死が3年以上明らかでないと
c その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき
のいずれかが必要です。もっとも,上記a,bの事由があっても,家庭裁判所は,一切の事情を考慮して養子縁組を継続すべきと判断するときは,離縁の請求を棄却することができます。
⑵ 特別養子の離縁の要件
特別養子においては,次の要件を全て満たす場合のみ,養子,実父母又は検察官の請求により,家庭裁判所が審判によって離縁させることができます。
① 養親による虐待,悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること
② 実父母が相当の監護をすることができること
③ 養子の利益のため離縁をすることが特に必要であると認められること
なお,保護を必要とする幼児の養育という特別養子の趣旨から,養親から離縁を求めることはできません。
また,仮に上記①及び②の事実があっても,それが一時的,突発的なもので,養親に対する児童相談所等の指導により,事態が改善され,養父母を実の父母と信じている子との関係を切断しない方が子の利益に適うと判断されるような場合は,上記③の要件を満たさず,離縁は認められないということがあります。
4 離縁における弁護士活用の重要性
離縁は,協議離縁の場合は別として,特に裁判においては,離縁の要件が認められるかが争点になります。感情的対立があることも多く激しい紛争になることがあります。多くの場合,裁判例を引用するなどして説得力のある主張をしていく必要がありますので,離縁に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
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