成年後見

被保佐人になった後の生活(2)

前回は、保佐人の同意権・取消権についてご説明しました。今回は、それ以外の保佐人の権限・義務についてご説明します。

1.代理権

(1)保佐人は、保佐開始の審判により当然に代理権を有するものではありません。

保佐人は被保佐人本人(以下、「本人」といいます。)の代わりに法律行為はできないのです。

しかし、保佐人が一定の法律行為について本人の代理が出来るようになると便利な場合もあるでしょう。そのような場合は、「保佐人に代理権を付与する旨の審判」(民法876条の4第1項)を特別に行うことで、保佐人に代理権を付与することが出来ます。

この審判は、家庭裁判所に対する請求により行いますが、本人以外の請求による場合は、必ず本人の同意が必要とされています(同法同条第2項)。代理権を付与するということは、それだけ本人の財産を処分できる機会のある者が増えるというリスクもありますので、本人の意思を尊重する必要があるためです。

(2)保佐人の代理権は「特定の法律行為について」付与されます。

たとえば、収益不動産を多数所有している本人が、自分で不動産を管理処分するのは大変だと感じ、保佐人に本人が所有する不動産の管理処分に関する代理権を付与するという形になります。一方で、本人の全財産を管理処分する代理権というのは、「特定の」法律行為についての代理権とはいえないため、このような代理権を付与することは出来ません。

成年後見人の記事でも説明しましたが、同じように保佐人においても、本人の居住用不動産を処分する際は、家庭裁判所の許可が必要です(民法876条の5第2項、859条の3)。本人が住んでいる不動産が、勝手に保佐人によって売られてしまったり、他人に貸されてしまったりしたら、本人の生活が不安定になるためです。たとえば本人が、今は一戸建ての自宅に住んでいるけれど、なにかあった時便利なように介護施設付の老人ホームに移ろうと考え、施設入所費捻出のため一戸建ての自宅を売るという場合は、保佐人は家庭裁判所の許可を得る必要があります。

(3)保佐人は、付与されて「特定の法律行為」の範囲においてのみ、本人の財産管理事務を行うこととなります。

2.身上配慮義務

保佐人は、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮して保佐の事務にあたらなければならないとされています(民法876条の5)。

たとえば、本人の体調に合わせて、ご自宅から施設に生活の場を移すなど、細やかな配慮が必要になります。特に、被保佐人は成年被後見人などと比べて判断能力の低下が穏やかですので、保佐人は被保佐人である本人とよく話し合い、本人のご意思を十分に尊重して保佐の事務にあたらなければならないのです。

ご不明点等は、朝日中央綜合法律事務所へご相談ください。

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