(1)
募集株式の意義
募集株式の発行とは、会社が発行する新株、または会社が処分する自己株式を引き受けて、株主となる者を募集することをいいます。
新たに株主となるものを募集して出資を募り、会社の資金調達をはかることが目的とされます。
募集株式の発行には、2種類の割当方法が存在します。
募集対象を既存の株主のみとし、 しかも、 株主の持株数に応じて、比例的に募集株式の割当てを受ける権利を与える場合を株主割当といいます(会社法第202条第1項)。
A会社が株主a(60株保有)、株主b(40株保有)で構成される場面を事例にすれば、A会社が50株の新株による募集株式の発行を行った場合、aに30株、bに20株の割当を受ける権利を与える場合のことです。株主割当の前後で既存株主の議決権割合が変化しない(aは60%、bは40%)ことが特徴的です。
一方、株主以外の第三者を募集対象とする場合、もしくは株主を募集対象とする場合であっても、持株数に比例しないで募集株式の割当てを受ける権利を与える場合を第三者割当といいます。
上の事例で外部の第三者cに募集株式の発行を行う場合や、aのみに募集株式の発行を行う場合、またa及びbを募集対象とするもののaに40株、bに10株(従前の持株数に比例しない割合)の割当を受ける権利を与える場合、などが第三者割当の具体例です。前者の例はcの登場によりa,bともに議決権割合が低下し、後2者の例はaの議決権割合が増え、bの議決権割合が減じることになります。すなわち株主割当と異なり、第三者割当の前後で既存株主の議決権割合が変化することが特徴的です。
新たに株主となるものを募集して出資を募り、会社の資金調達をはかることが目的とされます。
募集株式の発行には、2種類の割当方法が存在します。
募集対象を既存の株主のみとし、 しかも、 株主の持株数に応じて、比例的に募集株式の割当てを受ける権利を与える場合を株主割当といいます(会社法第202条第1項)。
A会社が株主a(60株保有)、株主b(40株保有)で構成される場面を事例にすれば、A会社が50株の新株による募集株式の発行を行った場合、aに30株、bに20株の割当を受ける権利を与える場合のことです。株主割当の前後で既存株主の議決権割合が変化しない(aは60%、bは40%)ことが特徴的です。
一方、株主以外の第三者を募集対象とする場合、もしくは株主を募集対象とする場合であっても、持株数に比例しないで募集株式の割当てを受ける権利を与える場合を第三者割当といいます。
上の事例で外部の第三者cに募集株式の発行を行う場合や、aのみに募集株式の発行を行う場合、またa及びbを募集対象とするもののaに40株、bに10株(従前の持株数に比例しない割合)の割当を受ける権利を与える場合、などが第三者割当の具体例です。前者の例はcの登場によりa,bともに議決権割合が低下し、後2者の例はaの議決権割合が増え、bの議決権割合が減じることになります。すなわち株主割当と異なり、第三者割当の前後で既存株主の議決権割合が変化することが特徴的です。
(2)
既存株主との関係
株主割当の場合には、株主構成やその持株比率に変化が生じないため、議決権割合が維持される一方、第三者割当の場合には、株主構成や持株比率が変化する結果、議決権割合が低下する既存株主が必ず発生することとなります。
さらに、第三者割当において設定される払込金額が従来の株価より低い場合、これを割当を受ける第三者から見れば、少額で多くの株式を取得できることを意味します。
会社に払い込まれた財産以上に株式の数が増えたわけですから、第三者割当の恩恵にあずかれなかった既存株主から見た場合、その有する株式の価値が下がるという結果になるのです。
このように、株主割当よりも第三者割当、単純な第三者割当よりも払込金額が安い(第三者にとって有利な)第三者割当の順で、既存株主に対する影響が大きくなるといえ、相応の手続きが設けられています。
支配権との関係では、株主割当の場合、その前後で株主構成や議決権の割合に変化はなく、会社支配の構造が維持されるため、さして重要な意味はありません。
一方で第三者割当の場合、会社が特定の株主あるいはその味方をしてくれる第三者にのみ募集株式を発行すれば、当該株主側の議決権割合が増え、他の株主の議決権割合は低下しますから、会社支配権の維持や奪取に大きく関わることとなります。
ただし、募集株式の発行は、会社の資金調達のために設けられた制度であり、この視点を忘却して、募集株式の発行を会社支配権の道具と化し、特定あるいは少数派の株主の利益を侵害することは認められないことには注意が必要です。
さらに、第三者割当において設定される払込金額が従来の株価より低い場合、これを割当を受ける第三者から見れば、少額で多くの株式を取得できることを意味します。
会社に払い込まれた財産以上に株式の数が増えたわけですから、第三者割当の恩恵にあずかれなかった既存株主から見た場合、その有する株式の価値が下がるという結果になるのです。
このように、株主割当よりも第三者割当、単純な第三者割当よりも払込金額が安い(第三者にとって有利な)第三者割当の順で、既存株主に対する影響が大きくなるといえ、相応の手続きが設けられています。
支配権との関係では、株主割当の場合、その前後で株主構成や議決権の割合に変化はなく、会社支配の構造が維持されるため、さして重要な意味はありません。
一方で第三者割当の場合、会社が特定の株主あるいはその味方をしてくれる第三者にのみ募集株式を発行すれば、当該株主側の議決権割合が増え、他の株主の議決権割合は低下しますから、会社支配権の維持や奪取に大きく関わることとなります。
ただし、募集株式の発行は、会社の資金調達のために設けられた制度であり、この視点を忘却して、募集株式の発行を会社支配権の道具と化し、特定あるいは少数派の株主の利益を侵害することは認められないことには注意が必要です。
(3)
第三者割当の手続
公開会社の場合は、取締役会決議で募集事項を決定すれば足りるのが原則ですが、払込金額が第三者にとって特に有利な金額である場合には、株主総会の特別決議で決定することが必要とされています(会社法第201条第1項、第309条第2項第5号)。そして取締役は、特に有利な払込金額で募集株式を発行することを必要とする理由を株主総会の場で説明する義務を負います(会社法第199条第3項)。
非公開会社の場合は、募集事項を株主総会の特別決議で決定するのが原則です(会社法第199条第2項、第309条第2項第5号)。さらに払込金額が第三者にとって特に有利な金額である場合、取締役は、特に有利な払込金額で募集株式を発行することを必要とする理由を株主総会の場で説明する義務を負います(会社法第199条第3項)。
特に有利な払込金額の判断基準について、既存株主の利益と募集株式の発行による資金調達の利益相互の調和の中で決せられますものといえますが、市場価格ある株式については、第1次的には払込金額決定直前の市場価格を基準にし、他に当該株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の資産状況、配当状況、会社の業績予測、発行される募集株式数、株式市況の動向等の事情がその基準となります(最高裁判所昭和50年4月8日判決)。
市場価格のない株式については、会社の資産状況、配当状況、発行される募集株式数や会社の業績予測等の事情が総合的に判断されることとなります。
非公開会社の場合は、募集事項を株主総会の特別決議で決定するのが原則です(会社法第199条第2項、第309条第2項第5号)。さらに払込金額が第三者にとって特に有利な金額である場合、取締役は、特に有利な払込金額で募集株式を発行することを必要とする理由を株主総会の場で説明する義務を負います(会社法第199条第3項)。
特に有利な払込金額の判断基準について、既存株主の利益と募集株式の発行による資金調達の利益相互の調和の中で決せられますものといえますが、市場価格ある株式については、第1次的には払込金額決定直前の市場価格を基準にし、他に当該株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の資産状況、配当状況、会社の業績予測、発行される募集株式数、株式市況の動向等の事情がその基準となります(最高裁判所昭和50年4月8日判決)。
市場価格のない株式については、会社の資産状況、配当状況、発行される募集株式数や会社の業績予測等の事情が総合的に判断されることとなります。
(4)
株主割当の手続
公開会社においては、取締役会の決議で募集事項が決定されます(会社法第202条第3項第3号)。
非公開会社においては、株主総会の特別決議で募集事項が決定されるのが原則ですが、定款の定めにより取締役会の決議に委任することが認められます(会社法第202条第3項、第309条第2項第5号)。
株主割当の場合には、第三者割当のように払込金額が有利であることによる手続的制限はありません。
非公開会社においては、株主総会の特別決議で募集事項が決定されるのが原則ですが、定款の定めにより取締役会の決議に委任することが認められます(会社法第202条第3項、第309条第2項第5号)。
株主割当の場合には、第三者割当のように払込金額が有利であることによる手続的制限はありません。
(5)
差止請求
法令または定款に違反する、 もしくは著しく不公正な方法によって募集株式の発行(新株発行や自己株式の処分)を行おうとする場合で、 これによって、 株主が不利益を受けるおそれがある場合には、 その株主は、 会社に対して当該行為の差止請求をすることができます(会社法第210条)。
手続上必要とされる取締役会や株主総会の特別決議を経ていなかったり(法令違反)、取締役が資金調達とは無関係に、自己の地位保全を意図して、自分を支持する特定の株主や第三者に対して大量の新株を割当てる(著しく不公正な方法)場合などです。
差止請求は、会社がこれから募集株式の発行を行おうするものをやめさせるもので、既に募集株式の発行がなされてしまった後は、無効や不存在確認の訴えによることになります。
手続上必要とされる取締役会や株主総会の特別決議を経ていなかったり(法令違反)、取締役が資金調達とは無関係に、自己の地位保全を意図して、自分を支持する特定の株主や第三者に対して大量の新株を割当てる(著しく不公正な方法)場合などです。
差止請求は、会社がこれから募集株式の発行を行おうするものをやめさせるもので、既に募集株式の発行がなされてしまった後は、無効や不存在確認の訴えによることになります。
(6)
無効、不存在の訴え
募集株式の発行(新株発行や自己株式の処分)は実行されたしまったけれども、その内容や過程に瑕疵がある場合、無効や不存在を求めて提訴することができます(会社法第828条、第829条)。
無効事由は条文上規定されていませんが、すでに募集株式が発行された後であるため、重大な瑕疵に限定されます。経済的な損害を被った株主が存在すれば、それは不正な募集株式の発行をすすめた取締役らに対する損害賠償で解決できるからです。
不存在とは、募集株式発行の外見はあるもののその実体が全く存在しない場合のことで、払込がなされていないのに株式が発行されたような場合です。
無効事由は条文上規定されていませんが、すでに募集株式が発行された後であるため、重大な瑕疵に限定されます。経済的な損害を被った株主が存在すれば、それは不正な募集株式の発行をすすめた取締役らに対する損害賠償で解決できるからです。
不存在とは、募集株式発行の外見はあるもののその実体が全く存在しない場合のことで、払込がなされていないのに株式が発行されたような場合です。