(1)
実質株主の確定
会社設立当初から名義株が存在しており、 その名義人 (名義を貸した人) が死亡した場合を想定します。
名義人は生前の株式が名義株であることを認めていたものの、 その旨の念書などは書いておらず、 かつ、 名義人の相続人に対しても、当該株式が名義株であるという話をしたこともなかったというケースは、 実質株主の確定をめぐる紛争が起きやすい状態です。
このような場合、 名義株主の相続人から会社に対して株式を相続したので名義書換をしてほしいという請求があると、 会社としてはこの名義書換請求を拒絶することは容易ではありません。 名義書換を拒絶するためには、 当該株式の真の所有者が名義人以外の特定の者であるということを会社において立証しなければなりません。
株主権確認の訴え等が提起された場合、 会社側で真の株主が名義人以外の特定の者 (「A」 とします) であることを立証しなければなりませんが、 これを示す直接の証拠はありませんから、 例えば次のような間接的な事実を主張、立証していく必要があります。
名義人は生前の株式が名義株であることを認めていたものの、 その旨の念書などは書いておらず、 かつ、 名義人の相続人に対しても、当該株式が名義株であるという話をしたこともなかったというケースは、 実質株主の確定をめぐる紛争が起きやすい状態です。
このような場合、 名義株主の相続人から会社に対して株式を相続したので名義書換をしてほしいという請求があると、 会社としてはこの名義書換請求を拒絶することは容易ではありません。 名義書換を拒絶するためには、 当該株式の真の所有者が名義人以外の特定の者であるということを会社において立証しなければなりません。
株主権確認の訴え等が提起された場合、 会社側で真の株主が名義人以外の特定の者 (「A」 とします) であることを立証しなければなりませんが、 これを示す直接の証拠はありませんから、 例えば次のような間接的な事実を主張、立証していく必要があります。
・
会社は過去に増資を行っており、 その増資金の払込はAがしていたこと。
・
株式の配当をAが収受していたこと、 またはその配当をAの所得として確定申告していたこと。
・
名義人が生前、 Aから名義借り料と思われる金銭を受領したこと。
これらのように、真の株主であるならば当然に取るべき行動や金銭の流れとは何かを考え、そのような行動を実際にAがどれだけ実行していたかを調査し、その証拠を収集することが裁判を有利に進めるためのポイントとなります。
(2)
株式買取交渉
会社支配権紛争の渦中においては、 株主権確認の訴えをはじめ、 取締役職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分、 新株発行差止の仮処分等様々な裁判上の手続が進行しますが、 紛争の収束過程においては、 多くの場合、 対立するグループ間で株式の譲渡交渉がなされる局面となります。
逆に言うと、 会社における少数派株主グループが、 自分たちの保有する株式を多数派株主グループに高く譲渡することを目的として、 支配権紛争を惹き起こす場合すらあります。
このような場合、 株式の譲渡 (買取) 交渉をいかに有利かつ迅速に進めるかが紛争当事者にとって極めて重要な課題となります。
譲渡価格について容易に協議が成立しない場合は、 公認会計士等の専門家による株価の鑑定が必要になりますし、このような準備が、最終的に価格決定が裁判所に持ち込まれた場合の武器(証拠)となるのです。
逆に言うと、 会社における少数派株主グループが、 自分たちの保有する株式を多数派株主グループに高く譲渡することを目的として、 支配権紛争を惹き起こす場合すらあります。
このような場合、 株式の譲渡 (買取) 交渉をいかに有利かつ迅速に進めるかが紛争当事者にとって極めて重要な課題となります。
譲渡価格について容易に協議が成立しない場合は、 公認会計士等の専門家による株価の鑑定が必要になりますし、このような準備が、最終的に価格決定が裁判所に持ち込まれた場合の武器(証拠)となるのです。
(3)
訴訟手続、 保全処分手続の利用
(イ)
紛争解決のための主要な訴訟手続と保全処分手続
会社支配権紛争は、 様々な訴訟手続や保全処分手続となって現われます。 そしてそれらの訴訟手続や保全処分手続それ自体が会社支配権紛争の解決手段となります。
会社支配権紛争において採られる訴訟手続や保全処分手続には主に次のようなものがあります。
会社支配権紛争において採られる訴訟手続や保全処分手続には主に次のようなものがあります。
(a)
訴訟手続
・
株主総会決議の取消し、無効ないし不存在確認の訴え
・
株主権確認の訴え
・
株式譲渡無効確認の訴え
・
新株発行や新株予約権発行の差止めの訴え
・
新株発行や新株予約権発行の無効、不存在確認の訴え
・
会社の組織に関する行為の無効の訴え
・
株主代表訴訟
・
取締役解任の訴え
・
会社解散の訴え
(b)
仮処分申請手続
・
取締役職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分申請
・
新株発行、新株予約権発行の差止めの仮処分申請
・
株主総会開催や議決権停止の仮処分申請
・
取締役の違法行為差止の仮処分申請
・
会計帳簿閲覧謄写の仮処分申請
(c)
商事非訟手続
・
少数株主による株主総会招集許可の申請
・
株式会社の業務及び財産状況の検査のための検査役選任の申請
・
株式価格決定の申請
(ロ)
複数の手続の同時又は順次進行
例えば、 少数派株主グループが多数派株主グループを攪乱させて支配権の確保を企図する場合、 次のような複数の手続を同時又は順次に実行して行くことが考えられます。
①
多数派株主グループの一部の株主から株式を買取る。
②
少数派株主による臨時株主総会招集請求を行う。 取締役会がこれに応じない場合は、 裁判所に対し、 株主総会招集許可申請を行い、 株主総会招集の許可を得る。
③
臨時株主総会において、 一部の取締役の解任と新取締役の選任を決議し、 取締役会における多数派となる。
④
取締役会で少数派株主に対する第三者割当増資を決議し、 実行する。 これにより、 会社の支配権を確立する。
これに対し、 このような動きを察知した多数派グループは、 少数派の攻撃を防禦し、 現在の支配権を保持するため、 次のような手続を同時又は順次進めて行くことになります。
⑤
少数派株主に対する株式譲渡につき、 株式譲渡無効確認の訴えを提起する。
⑥
少数派株主が臨時株主総会招集請求を行った段階で、 株主総会開催禁止の仮処分や議決権停止の仮処分を申請する。
⑦
取締役解任と新取締役選任の株主総会決議について、総会決議取消の訴えを提起する。
⑧
選任された新取締役について、 職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分を申請する。
⑨
少数派株主に対する第三者割当増資に対して、新株発行差止の仮処分を申請する。
このように、 支配権を奪取する側と防禦する側の両サイドから複数の訴訟手続や仮処分手続が同時又は順次に飛び交うのが支配権紛争の常態です。
(ハ)
周到な準備と計画
前述のように、 支配権紛争はその端緒から収束までの間に、 複数の訴訟手続や仮処分手続が行われ、 その間にも様々な交渉や和解の試みがなされます。
そして、 それらの各手続が原因と結果の関係をなしたり、 連携し合ったり、 また、 攻撃とカウンターという様々な関係を有し、 紛争の全体は非常に複雑な様相を呈してきます。
したがって、 支配権紛争の端緒となる請求や仮処分申請、訴訟提起が行われた時点で、 支配権紛争の当事者は、 まるで将棋の棋士のように常に次の相手方の動きを予測し、 相手方がこの手続をとってくれば、 当方はあの手続を使うという具合に、 緻密な作戦を立てていかなければなりません。
特に重要なことは、 複数の訴訟手続や仮処分手続の量とスピードに対応していける態勢づくりをすることです。 矢継ぎ早に展開する複数の訴訟手続や仮処分手続に量とスピードの面で対応していけなければ、 それだけで勝負ありとなってしまいます。
このような多数の手続が飛び交うなかで、 支配権紛争の当事者は、 刻々と変化する支配権紛争の各段階において、 常に紛争の全局を認識するとともに、 最終解決目標を見定めて行く必要があるのです。
そして、 それらの各手続が原因と結果の関係をなしたり、 連携し合ったり、 また、 攻撃とカウンターという様々な関係を有し、 紛争の全体は非常に複雑な様相を呈してきます。
したがって、 支配権紛争の端緒となる請求や仮処分申請、訴訟提起が行われた時点で、 支配権紛争の当事者は、 まるで将棋の棋士のように常に次の相手方の動きを予測し、 相手方がこの手続をとってくれば、 当方はあの手続を使うという具合に、 緻密な作戦を立てていかなければなりません。
特に重要なことは、 複数の訴訟手続や仮処分手続の量とスピードに対応していける態勢づくりをすることです。 矢継ぎ早に展開する複数の訴訟手続や仮処分手続に量とスピードの面で対応していけなければ、 それだけで勝負ありとなってしまいます。
このような多数の手続が飛び交うなかで、 支配権紛争の当事者は、 刻々と変化する支配権紛争の各段階において、 常に紛争の全局を認識するとともに、 最終解決目標を見定めて行く必要があるのです。
(4)
株価決定手続
(イ)
裁判所が関与する場面
株主総会において、 一定の重要事項が可決された場合、これに反対した株主等は、会社に対し、 自己の有する株式を公正な価格で買取るよう請求することができます。 例えば、事業譲渡や、合併などの場面です。
譲渡制限株式を譲渡によって取得する際に、 会社の承認が得られなければ、会社が指定した買受人あるいは、会社自身がその株式を買い取るという場面が生じます。
譲渡制限株式を相続その他の一般承継によって取得した承継人に対し、会社が当該株式を売渡すことを請求することができます。
いずれの場合もまず、当事者間の協議で売買価格が決定されますが、協議が整わない場合は、裁判所が価格を決定することになります。
譲渡制限株式を譲渡によって取得する際に、 会社の承認が得られなければ、会社が指定した買受人あるいは、会社自身がその株式を買い取るという場面が生じます。
譲渡制限株式を相続その他の一般承継によって取得した承継人に対し、会社が当該株式を売渡すことを請求することができます。
いずれの場合もまず、当事者間の協議で売買価格が決定されますが、協議が整わない場合は、裁判所が価格を決定することになります。
(ロ)
価格決定の方法
以上の各株価決定手続においては、 裁判所は会社の純資産額、 収益性、 配当率、 事業の将来性、 当該株主の持株割合、 会社支配関係等一切の事情を考慮して、 株価を決定します。
実務上は多くの場合、 当事者が株価の鑑定を申請し、 裁判所の選任する鑑定人 (多くは公認会計士) が当該株価を鑑定評価します。 裁判所はこの鑑定意見を参考にするとともに、 会社の取締役、 当該申請をなした株主及び相手方の陳述を聴いたうえ、 最終的に株価を決定します。
支配権紛争の一局面としてこれらの株価決定手続が係属することは数多くありますので、 この手続においては、 有利な株価鑑定を得るべく最善の努力をなすことが必要です。
また、 必ずしも有利とは言えない鑑定意見が出た場合でも、 その鑑定意見の問題点を指摘し、 場合によっては、 別途任意の鑑定書を作成提出し、 裁判官の判断形成の資料とする等の努力が必要です。
実務上は多くの場合、 当事者が株価の鑑定を申請し、 裁判所の選任する鑑定人 (多くは公認会計士) が当該株価を鑑定評価します。 裁判所はこの鑑定意見を参考にするとともに、 会社の取締役、 当該申請をなした株主及び相手方の陳述を聴いたうえ、 最終的に株価を決定します。
支配権紛争の一局面としてこれらの株価決定手続が係属することは数多くありますので、 この手続においては、 有利な株価鑑定を得るべく最善の努力をなすことが必要です。
また、 必ずしも有利とは言えない鑑定意見が出た場合でも、 その鑑定意見の問題点を指摘し、 場合によっては、 別途任意の鑑定書を作成提出し、 裁判官の判断形成の資料とする等の努力が必要です。