(1)
事案の概要
X社は、 定款による株式譲渡制限の定めのある株式会社ですが、 その発行済株式総数をいずれも取締役であるX1 (社長)、 A(副社長)、 X2 (専務) の3人がほぼ均等の割合で保有していました。 3人のうちX1とX2 (以下、 両者を合わせて 「X1ら」 といいます) は、 X社の創業者ですが、 Aは他社からヘッドハンティングされ、 X社に取締役として途中入社した経緯があります。
ところが、 次第にX1らとAは、 その経営姿勢をめぐって対立したため、 Aは是が非でもX1らの保有する株式を自己又は自己と意の通じた第三者に売却させ、 既に保有済みのAの株式と合わせて、 X社の実権を握ることを画策しました (当時、 既にこの意思を秘匿したAの第三者割当増資の申し出は、 X1らに却下されていました)。
そこで、Aは、 自己と意を通じた経理部長Y1を利用して、 X1らに対し、 X社の資金繰りが苦しいこと、 取引銀行がX1らの株式保有率の引下げを求めていること等の虚偽の事実を述べさせ、 これらの事実を誤信したX1らは、 その保有株式の相当数部分をY1、 Y2 (以下 「Y1ら」 といいます) に譲渡しました。
その後、 X1らは、 この申告事実が真実に反することから、 Y1らに対して株式の返還を求めて提訴しました。
ところが、 次第にX1らとAは、 その経営姿勢をめぐって対立したため、 Aは是が非でもX1らの保有する株式を自己又は自己と意の通じた第三者に売却させ、 既に保有済みのAの株式と合わせて、 X社の実権を握ることを画策しました (当時、 既にこの意思を秘匿したAの第三者割当増資の申し出は、 X1らに却下されていました)。
そこで、Aは、 自己と意を通じた経理部長Y1を利用して、 X1らに対し、 X社の資金繰りが苦しいこと、 取引銀行がX1らの株式保有率の引下げを求めていること等の虚偽の事実を述べさせ、 これらの事実を誤信したX1らは、 その保有株式の相当数部分をY1、 Y2 (以下 「Y1ら」 といいます) に譲渡しました。
その後、 X1らは、 この申告事実が真実に反することから、 Y1らに対して株式の返還を求めて提訴しました。
(2)
解決
裁判でY1らは、 当初Aとの共謀や欺罔の事実を否認しましたが、 AがX社の他の社員にもX1らに述べたのと同様の事実を述べていたのに加え、 「X1らの会社支配が続けばX社は早晩倒産する」 と述べて、 Aの動きに与するよう画策していた事実が発覚し、 これにより、 頑強に否認していたY1らが態度を軟化するに至りました。
そこで、 裁判所は、 両当事者に和解を勧告し、 協議の結果、 ①Y1らが譲受けた株式をX1らが受領した代金と引換えに引渡し、 ②Aがその全保有株式を時価相当額でX1らに譲渡する旨を内容とする和解が成立しました。
これは、 ①X1らの請求を認めさせた点及び、 ②本件により会社から孤立化したAの保有する全株式を譲受けることにより、 X1らの会社支配権がより盤石化する結果となりました。
そこで、 裁判所は、 両当事者に和解を勧告し、 協議の結果、 ①Y1らが譲受けた株式をX1らが受領した代金と引換えに引渡し、 ②Aがその全保有株式を時価相当額でX1らに譲渡する旨を内容とする和解が成立しました。
これは、 ①X1らの請求を認めさせた点及び、 ②本件により会社から孤立化したAの保有する全株式を譲受けることにより、 X1らの会社支配権がより盤石化する結果となりました。
(3)
コメント
本件のような株式譲渡に関する紛争では、 ①株主又は第三者が、 会社支配権獲得のために株式を取得するケースと、 ②株主が会社にとって好ましくない者に株式譲渡する旨を会社に通告して、 会社自身による高価買取というを目論むケース(会社支配権という利益を放棄する代わりになるべく高い値段で株式を手放すケース)などがあります。
本件は、 当初は①のケースでしたが、 次第に②のケースの様相を呈しました。 すなわち、 Y1らは自分たちの株式を、 株式の外部流出をおそれるX1らに高価に買い取らせようと考えて、 第三者に対する譲渡承認をX社に請求してきたのです。
このような紛争では、 会社経営者や事業オーナーにとって後手後手の対応をしていると、 その不安に乗じている相手方のペースになって、 結果として相手方の不当な要求に屈する結果になりかねません。
本件は、 X1らの迅速な対応と機動的かつ組織的な活動が見事に実を結んだ好例と言えるでしょう。
本件は、 当初は①のケースでしたが、 次第に②のケースの様相を呈しました。 すなわち、 Y1らは自分たちの株式を、 株式の外部流出をおそれるX1らに高価に買い取らせようと考えて、 第三者に対する譲渡承認をX社に請求してきたのです。
このような紛争では、 会社経営者や事業オーナーにとって後手後手の対応をしていると、 その不安に乗じている相手方のペースになって、 結果として相手方の不当な要求に屈する結果になりかねません。
本件は、 X1らの迅速な対応と機動的かつ組織的な活動が見事に実を結んだ好例と言えるでしょう。