株式の価格の算定方式

非上場株式換価、評価マニュアル

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株式の価格の算定方式

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株式の価格の算定方式として、純資産価額方式、収益方式、配当還元方式、類似会社(又は類似業種)比準方式、取引先例価格方式、併用方式などがあります。
(1)

純資産価額方式

(イ)
純資産価額方式は、企業のストックとしての純資産に着目して、企業の価値及び株価等を算定する方式です。この方式による評価は企業や株式の静的価値を表すものであるといえます。
会社法144条第3項は「裁判所は、前項の決定を為すには、譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない」と規定しており、譲渡制限株式の売買価格を決定するに当たっては第一に考慮されるべき方式であると考えられます。但し、この方式は、企業の静的評価であり、企業評価に重要な収益力が反映されないという欠点があります。
純資産価額方式には、簿価純資産価額方式と時価純資産価額方式があり、後者はさらに、再調達時価純資産方式と、清算処分時価純資産方式とに区分されます。
(ロ)
簿価純資産価額方式は、時価の算出が困難な場合などにおいて、計算が簡便であるとの利点がありますが、簿価純資産が名目資産であるため、地価の高騰などによる名目資本と実質資本の乖離が大きい場合には、適正な株価算定を行うことはできないとされています。
(ハ)
清算処分時価純資産方式は、処分価額を用いる方式で清算処分することを前提としているので、解散を前提としている会社に適する算定方式であるといえます。
(ニ)
再調達時価純資産方式は、同一の事業の継続を前提としており、現時点で事業を開始した場合と同様の価値を算定する方式です。
また、一般に支配株主等が取得する株式等の評価において考慮される方法です。
(2)

収益方式

(イ)
収益方式は、企業のフローとしての収益又は利益に着目して、企業の評価及び株価等を評価する方法です。この方式による評価は企業の動的価値を現し、継続企業を評価する場合、理論的には最も優れた方法であるといえます。その反面、鑑定評価額が将来収益に全面的に依存しており、その根拠が不確実となる欠点が指摘されています。
収益方式は、収益を利益として展開する収益還元方式と収益を資金上の収入として展開するDCF法とに分類されます。
(ロ)
収益還元方式は、評価対象会社が将来生み出す収益の現在価値に着目した算定手法です。収益還元方式は、過去の決算数値等から評価対象会社の将来予想収益を推計し、その将来予想収益を資本還元率で現在価値に割り戻すことにより、価格算定を行います。
この方式は、経営支配株主又は経営参加株主にとって適当な算定方式であるとされています。
(ハ)
DCF法は、企業が将来獲得するであろうキャッシュフロー(現金収支)を資本還元率で現在価値に還元する方式です。しかし、適正なDCF法に基づく評価を行うためには、その前提となる事業計画が合理的に算定され、客観的に検証可能であることが非常に重要な要素となります。したがって、事業計画が恣意的な要素や証明可能性の低い前提を含んでいる場合には、妥当な算定を行うことは困難であるといえます。
(3)

配当還元方式

配当還元方式は、将来期待される配当金額に基づいて株価を算定する方式です。
株式の価値を擬制資本と見る点において、基本的に収益還元法と同じ発想に立つといえますが、収益還元方式が会社全体の利益を自己の所得と見る支配株主としての視点に立つのに対し、配当還元方式は、会社の利益ではなく、自己の受取る配当金だけを自己の所得と見る少数株主としての視点に立つ算定方式です。
したがって、配当還元方式は、一般に売買当事者が配当のみを期待する一般投資家である場合に、最も理論的な方法であるとされています。
(4)

類似会社(又は類似業種)比準方式

業種、規模等が類似する公開会社(類似会社)又は、同じ業種の公開会社の平均とを比較して、会社の価値及び株価を鑑定する方式です。しかし、類似性のある会社又は業種の選定が困難な場合が多く、また、類似性の検証が客観的に困難であるとの欠点があります。
(5)

取引先例価格方式

取引先例価格は、過去の取引事例を基にして株価を算定する方法ですが、市場性のない株式の取引先例が株式の交換価値を適正に反映していることは稀であるとの指摘がなされています。
(6)

併用方式

併用方式は、上述した各種方式を一定のルールで組み合わせて、会社の価値及び株価等を鑑定する方式です。株式の有する多面的要素を算定に取り入れるものであり、裁判実務上主流となっている方式です。
支配株式の評価にあっては、時価純資産方式と収益還元方式を加重平均して株価を算定するのが一般的です。
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