倒産時の選択肢

会社更生、民事再生、破産、特別清算、任意整理実務マニュアル

第1

倒産総論

集合写真

倒産時の選択肢

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清算型と再建型

会社が倒産状況に陥ったときに、このまま会社をたたむのか(清算型)、それとももう一度やり直すか(再建型)という選択を迫られることになります。
清算型を選択した場合には、会社は営業活動を停止し、その有する全ての財産を換価するなどして債務の弁済にあてることになります。再建型を選択した場合には、再建計画に従って営業活動を継続し、債務の一部免除や弁済期の繰り延べを行って、会社の建て直しが行われることになります。
さらに清算型、再建型それぞれについて、裁判所を通じた手続を行っていくのか(法的整理)、それとも裁判外で手続を行っていくのか(任意整理)という選択肢が存在します。
法的整理を選択した場合には裁判所が手続に関与しますから、公平性、確実性が担保される一方で、予納金等の費用が発生したり、手続規定を逐一遵守する必要が生じたり、また法的手続を行っていることが公知となり、世間からマイナスイメージを植えつけられやすいといった一面も有します。
任意整理は、会社と債権者とが個別の合意をすることによって清算ないし再建をすすめていくため、より柔軟な再建計画や弁済計画を立案することが可能であるとともに、費用面でも優れているといえます。しかし、債権者の同意を取り付けるために多大な労力や時間を要することもありますし、一部の債権者が抜け駆けをしたりする危険性や、債権者間の力関係が不平等である場合には、公平な処理が困難になるといった危険性を有しています。
清算型の法的手続は、破産(破産法)、特別清算(会社法)の二種類があり、再建型の法的手続は、会社更生(会社更生法)、民事再生(民事再生法)の二種類があります。
任意整理も、清算型、再建型の二種類に分類することは可能ですが、手続や内容を規制する特別の法律は存在しません。
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清算型と再建型のフローチャート

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再建型を選択するための条件

会社、会社経営者の多くは、たとえ倒産状況に陥った場合であっても、まず再建の方法を模索することと思われます。長年継続してきた事業を何とか続けて行きたいという感情、今まで会社を支えてきた従業員の立場を思えば、会社をたたむという決断はなかなか下しにくいものです。
例えば、会社経営者のワンマン経営による資金の無駄遣い等によって倒産状況がもたらされた場合には、経営者の交代や、経営の相互監視等によって再建を行うことは容易でしょう。また燃料や食品といった相場が変動しやすい原料の調達コストの増加が原因で倒産状況がもたらされた場合にも、再建の可能性は高いといえます。
一方、商品の需要そのものが衰退して、慢性的に売上げが減少しているといった倒産状況においては、同種の事業を継続して会社の再建をはかることはほぼ不可能といえ、事業そのものの転換や清算に踏み切る必要があります。
ひとたび倒産状態に陥った会社にとっては、たとえ裁判所を通す場合であれ、裁判外で行う場合であれ、債権者、従業員、取引先等の周囲の関係者の理解を得られなければ、再建はできません。以下では、再建型の手続を選択するための前提条件について説明します。
(イ)
経営側の再建意欲と適切かつ実現可能な再建計画
会社や会社経営者に再建の意欲があることが大前提です。再建計画、弁済計画の実行は非常に長期間に及びますし、倒産状況に至ったことに対する債権者、取引先からの対応は非常に厳しいものが予想されます。
再建を行うに際しては、債権者、取引先を納得させる再建計画、弁済計画を呈示できなくては何も始まりません。いかなる事業にどのように取り組んでいくのか、どのように債務の弁済を行っていくのかについて、明確なビジョンが必要ですし、その再建計画は客観的に実現可能であり、なおかつ収益を生み出すものでなければなりません。
(ロ)
従業員の理解
会社の再建にあたっては、従業員のより一層の奮起が不可欠である一方、倒産状況に直面した多くの会社において、従前の雇用状況をそのまま維持することは不可能といえます。
再建のための人員整理や賃金カットは避けて通れないことになるため、従業員と交渉を重ね、労働条件の変更について従業員の理解を得ることが不可欠です。さらに、人員整理に伴って退職金や解雇予告手当て等の支払い義務が生じる場合には、それ相応の資金が必要となります。
なお、人員整理を行う際であっても、再建にあたって真に必要な人材が会社から去ってしまうことを防ぐ必要がありますし、人員整理を巡って、会社と従業員側と激しく対立するような事態が生じれば、再建が頓挫してしまいます。
(ハ)
債権者の理解
会社が倒産状態に陥ったとき、債権者は自分の債権の回収を第一に考えることでしょう。債権者からはすぐに支払いの催促が来ることが予想されますし、債権者が会社の財産に対して担保を有している場合には、一刻も早く担保の実行を行いたいと考えるのが通常です。会社の営業に関連する財産が担保にとられている場合には、債権者の担保の実行によって、物理的に会社活動を継続していくことが不可能になってしまいます。
また債権者の中には、どうせ再建は無理だから、早く今の財産を換価して、1日も早く、弁済をしてほしいと考える人も存在します。会社としては再建を考えているのに、債権者から破産を申し立てられるという可能性も存在するわけです。
このように債権者は、再建の方針を理解、納得してもらう最も重要な相手方といっても過言ではありません。現に再建型の法的手続においては、一定数、一定割合以上の債権者による計画(更生計画、再生計画)への同意が法定の要件として定められていますし、再建型の任意整理においては、基本的に全ての債権者の同意が必要となります。
(ニ)
取引先の維持
ひとたび倒産状況に陥った会社は、社会的な信用を失ってしまうことになり、倒産状況が発生した後になってから、新規の取引先を開拓することは至難の業といえるでしょう。
倒産状態にある会社が再建を目指すには、現状の取引先との関係をいかに継続していけるかが重要なポイントになります。
今まで原料を仕入れていた取引先から、支払いに対する不安を理由に、取引を打ち切られてしまっては、今後新たに製品を作ることができませんし、今まで得意先であった取引先から、倒産状態の会社とは取引をしたくないといわれてしまっては、売り上げをあげることもできなくなってしまうのです。
(ホ)
資金の確保
倒産状況に陥った後に、新たな融資を得ることは事実上不可能でしょうから、再建を行うにあたって、当面の資金が自前で用意できていることが必要となります。
事業の継続のための資金、人員整理のための資金、再建のために弁護士に依頼する場合にはその費用、法的整理を行う場合には予納金(裁判所に収める手数料)、等の費用が必要になります。
必要であれば、不要な財産の売却や売掛金の早期回収を行うことになります。
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