⑴
従前の民事責任ルールであった過失責任の原則にかえて、欠陥責任の原則が採用されています。
すなわち、製造物責任法3条本文は、「製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第3項第2号若しくは第3号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」と規定し、欠陥責任の原則によることを明らかにしています。
すなわち、製造物責任法3条本文は、「製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第3項第2号若しくは第3号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」と規定し、欠陥責任の原則によることを明らかにしています。
⑵
欠陥の定義
製造物責任法2条2項は、「この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」と規定し、欠陥の定義を定めています。
⑶
製造物の範囲
製造物の範囲は、製造物責任法2条1項により「製造又は加工された動産」と規定されています。
⑷
責任主体
責任主体は、原則として「当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者」です(製造物責任法2条3項1号)。
これ以外に、「自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者」(同法2条3項2号)、「前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者」(同法2条3項3号)も責任主体となります。
これ以外に、「自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者」(同法2条3項2号)、「前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者」(同法2条3項3号)も責任主体となります。
⑸
賠償されるべき損害の範囲
製造物責任法による保護の対象となる被侵害利益は、「他人の生命、身体又は財産」(同法3条本文)とされていますが、それ以外の被侵害利益を除外する趣旨は含まれていません。そして、製造物責任法に賠償されるべき損害の範囲に関する規定は存在しないことから、民法の不法行為の原則に従うことになり(同法6条)、相当因果関係の規定(民法416条)が類推適用されます。一方、製造物責任法3条但書で、損害が製造物についてのみ生じたときは除外されています。
懲罰的損害賠償については、これを認める規定はありません。賠償されるべき損害の限度額についても、これを認める規定はありません。
懲罰的損害賠償については、これを認める規定はありません。賠償されるべき損害の限度額についても、これを認める規定はありません。
⑹
免責事由
製造業者等が、製造物責任を免れるための抗弁事由が2つ規定されています。すなわち、製造物責任法4条は以下のとおり規定しています。なお、1号の抗弁がいわゆる「開発危険の抗弁」です。
「前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
「前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
一
当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
二
当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。」
⑺
期間の制限
製造業者等が、損害賠償の責任を負う期間について、製造物責任法5条1項は、以下のとおり規定しています。
「第3条に規定する損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
「第3条に規定する損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一
被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から3年間行使しないとき。
二
その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年を経過したとき。」
また、同項1号の3年の時効期間に関し、人の生命又は身体という利益は、財産的な利益に比べて保護すべき度合いが強く、権利行使の機会を確保する必要性が高いことから、同条2項は以下のとおり規定しています。
「人の生命又は身体を侵害した場合における損害賠償の請求権の消滅時効についての前項第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。」
さらに、同条1項2号の10年の時効期間に関し、同条3項は以下のとおり規定しています。
「第1項第2号の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。」
また、同項1号の3年の時効期間に関し、人の生命又は身体という利益は、財産的な利益に比べて保護すべき度合いが強く、権利行使の機会を確保する必要性が高いことから、同条2項は以下のとおり規定しています。
「人の生命又は身体を侵害した場合における損害賠償の請求権の消滅時効についての前項第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。」
さらに、同条1項2号の10年の時効期間に関し、同条3項は以下のとおり規定しています。
「第1項第2号の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。」
⑻
民法の適用
製造物責任法6条は、製造物責任法に特別の規定のない事項については(例えば、過失相殺)民法の規定によることを定めています。
⑼
施行期日
製造物責任法は、公布の日である平成6年7月1日から起算して1年を経過した平成7年7月1日から施行されました。
そして、製造物責任法の施行後に、その製造業者等が引き渡した製造物についてのみ適用があります。すなわち、施行前に流通に置かれた製造物については、適用はありません(製造物責任法附則1条)。
これに関連して、漢方薬の服用期間が、製造物責任法の施行日(平成7年7月1日)の前後を跨いでいたため、製造物責任法が適用されるかどうかが問題になった事例があります(名古屋地判平14.4.22 判時1866号108頁では、漢方薬の服用期間が平成5年9月9日から平成7年9月29日までの原告が、漢方薬の輸入業者に対し製造物責任法に基づく損害賠償の請求をしましたが、施行後の服用によって副作用の腎不全に罹患したかどうかは不明であるとして、いずれも製造物責任法の適用が否定されました。ただし、この事案では、不法行為責任が認められ、原告の請求の一部が認容されました。)。
そして、製造物責任法の施行後に、その製造業者等が引き渡した製造物についてのみ適用があります。すなわち、施行前に流通に置かれた製造物については、適用はありません(製造物責任法附則1条)。
これに関連して、漢方薬の服用期間が、製造物責任法の施行日(平成7年7月1日)の前後を跨いでいたため、製造物責任法が適用されるかどうかが問題になった事例があります(名古屋地判平14.4.22 判時1866号108頁では、漢方薬の服用期間が平成5年9月9日から平成7年9月29日までの原告が、漢方薬の輸入業者に対し製造物責任法に基づく損害賠償の請求をしましたが、施行後の服用によって副作用の腎不全に罹患したかどうかは不明であるとして、いずれも製造物責任法の適用が否定されました。ただし、この事案では、不法行為責任が認められ、原告の請求の一部が認容されました。)。
欠陥責任の原則