6
増資を活用する承継
(1)
増資の場合の課税方法
(イ)
株主割当増資の課税方法
株主割当増資は、全株主に持株割合に応じて新株を発行する方法です。全株主が増資に応じた場合には、各株主間の持株割合に変動はありませんので、発行価額がいくらであっても、課税関係は生じません。ただし、同族会社において時価より低い価額で増資があった場合に、株主である同族関係者の中に増資を引受けなかった者がいる場合においては、同族関係者間で、引受けをしなかった同族株主から引受けをした同族株主に対し、株式の価値が移転した分の贈与があったとして、認定課税される可能性があります。この場合には、引受けをした株主に対し、その贈与とされた金額から1年間に 110 万円の基礎控除額を差し引いた金額に超過累進税率を適用して計算した贈与税が課税されることになります。
(ロ)
第三者割当増資の課税方法
既存株主の持株割合に関係なく、特定の者に新株を発行する第三者割当増資では、新株の発行が時価で行われなかった場合に課税関係が生じる可能性があります。例えば、時価よりも低い価額で新株の発行を受けた場合には、価値の高い株式を安く取得したこととなり、その株式価値の差額分の贈与を受けたものとして、贈与税の認定課税が行われる恐れがあります。この場合には、その新株の発行を受けた株主に対し、その株式価値の差額分の金額から1年間に 110 万円の基礎控除額を差し引いた金額に超過累進税率を適用して計算した贈与税が課税されることになります。
(2)
増資の場合の課税での自社株の評価
新株発行価額が税法上の問題となるのは第三者割当増資の場合のみです。この場合には第三者割当増資を受ける者によって、税法上の適正価額が異なります。
(イ)
同族個人株主が引受けする場合
相続税評価額が適正価額の基準となります。同族個人株主の場合、相続税評価における原則的評価額が適用されます。
ただし、中心的同族株主が存在する会社で、配当還元価額の適用可能な株主については、配当還元価額での引受けが認められます。
詳細は章末<参考>1、(1)を参照して下さい。
ただし、中心的同族株主が存在する会社で、配当還元価額の適用可能な株主については、配当還元価額での引受けが認められます。
詳細は章末<参考>1、(1)を参照して下さい。
(ロ)
同族関係法人が引受けする場合
法人税法上の時価が適正価額の基準となります。(<参考>2、(3)参照)
(ハ)
取引先等の第三者が引受けする場合
原則として、当事者間で合意された価額が税法上も認められます。
(ニ)
従業員、従業員持株会が引受けする場合
相続税評価における配当還元価額が適正価額の基準となります。
(3)
増資による承継のメリット・デメリット
(イ)
株主割当増資による承継のメリット・デメリット
(a)
株主割当増資による承継のメリット
時価に比べて低い価額で新株を発行したときは、一株あたりの単価が下がることになります。一株あたりの単価が高額になっている会社においては、単価が下がることにで、より細分した株数での贈与や売買による移転を行うことができます。
(b)
株主割当増資のデメリット
持株割合に応じて新株が発行された場合には、直接後継者に株式が移転する効果はありません。
(ロ)
第三者割当増資のメリット・デメリット
(a)
第三者割当増資のメリット
後継者に対して増資を行った場合には、後継者の持株割合を直接増やすことができます。また、同族関係者以外の従業員等に対して増資を行った場合には、配当還元価額等での同族関係者よりも低い時価での発行が可能となり、一株あたりの相続税評価額が下がるため、後継者への移転対策を行いやすくなります。
(b)
株主割当増資のデメリット
後継者に対して増資を行った場合、贈与税の課税を避けるためには、時価での発行が必要となりますので、後継者の資金負担が大きくなります。
また、従業員等の第三者に発行する場合は、オーナー一族の持株割合が低下します。
また、従業員等の第三者に発行する場合は、オーナー一族の持株割合が低下します。