⑴
ある取締役が違法又は不適切な業務執行により株式会社に損害を与えた場合、
ア
当該行為をした取締役自身
イ
この取締役に対する監視義務を尽くさず、その行為を阻止できなかった取締役は、株式会社に対し損害賠償責任を負います。
また、当該取締役の業務執行が、取締役会の決議に基づいてなされた場合には、
ウ
その決議に賛成した者も、それについて任務懈怠があるときは、同一の責任を負います。
平成17年改正前商法266条2項は、取締役会決議に賛成した取締役は当該行為を したものとみなしていました。しかし、会社法は、取締役の責任の制度を当該取締役自身に過失がなければその取締役は責任を負わないことを原則とする制度に改めたこと(過失責任化)に伴い、平成17年改正前商法266条2項の制度を廃止しました。
ただし、利益相反取引の場合には、決議に賛成した取締役は、任務懈怠が推定されます(会社法423条3項)。
また、決議に参加した取締役等は議事録に異議をとどめておかないと決議に賛成したものと推定されます(会社法369条5項)。
ただし、利益相反取引の場合には、決議に賛成した取締役は、任務懈怠が推定されます(会社法423条3項)。
また、決議に参加した取締役等は議事録に異議をとどめておかないと決議に賛成したものと推定されます(会社法369条5項)。
⑵
責任を負う取締役相互の関係
以上のようにして株式会社に対する損害賠償責任を負う取締役が複数存在する場合、 これらの取締役の責任は連帯責任となります(会社法430条)。したがって、各取締役は株式会社が被った損害の全額を賠償する義務を負います。
一方、連帯責任を負う取締役相互間の内部関係においては、負担部分の問題が生じます。当該違法、不適切な業務執行をなした取締役と、監視義務違反した取締役を比較すれば、当然その責任の程度には差異がありますので、それぞれの責任の度合いに応じて負担部分が決定されるものと解されます。
自己の負担部分を超えて株式会社に対する損害賠償義務を履行した取締役は、その超えた部分につき、他の取締役に対し、求償請求をすることができます(民法442条1項)。
一方、連帯責任を負う取締役相互間の内部関係においては、負担部分の問題が生じます。当該違法、不適切な業務執行をなした取締役と、監視義務違反した取締役を比較すれば、当然その責任の程度には差異がありますので、それぞれの責任の度合いに応じて負担部分が決定されるものと解されます。
自己の負担部分を超えて株式会社に対する損害賠償義務を履行した取締役は、その超えた部分につき、他の取締役に対し、求償請求をすることができます(民法442条1項)。
責任を負う取締役の範囲