非上場株式の売却・評価
非上場株式の評価に関する裁判例
非上場株式の売却を検討されている多くの皆様にとって、重要なことは、少しでも高い価格で売却するということです。一般に会社や指定買取人が提示する金額は低くなりがちですが、それを受け入れるか否かについては、慎重に判断しなければなりません。そこで今回は、具体的な裁判例を説明します。会社や指定買取人の提示する金額を受け入れるかどうかのご判断の一助にしていただければと存じます。
1.平成26年9月26日決定(東京地裁)
<事案の概要>
申立人2名が会社に対し、譲渡制限株式の譲渡について、承認を求めたところ、会社は、承認を拒絶し、買取人を指定した。申立人2名及び指定買取人はそれぞれ、裁判所に対し、株式の売買価格の決定を申し立てた。発行済株式総数(自己株式を除く)は、122万9000株、申立人2名の保有株式数は30万株(発行済株式総数の約24.4%)である。
<当事者の主張>
申立人2名:1株1439円、30万株で4億3170万円
収益還元法により株価を算定
指定買取人:1株90円、30万株で2700万円
配当還元法75円、取引事例法75円、DCF法0円~150円50銭、清算処分時価純資産法222円10銭を、7対1対1対1の割合で採用し、株価を算定
<裁判所の判断>
1株693円、30万株で2億790万円
DCF法845円、再調達時価純資産法997円、配当還元法162円を35対35対30の割合で採用し、株価を算定
<裁判所決定額と指定買取人主張額の差額>
1株差額:+603円、30万株差額:+1億8090万円
指定買取人主張額を100とした場合の裁判所決定額:770
2.平成25年1月31日決定(大阪地裁)
<事案の概要>
申立人が会社に対し、譲渡制限株式の譲渡について、承認を求めたところ、会社は、承認を拒絶し、株式の半分を会社が自ら買い取る旨を表明するとともに、残り半分については買取人を指定した。申立人は、裁判所に対し、株式の売買価格の決定を申し立てた。発行済株式総数は192万株、申立人の保有株式数は36万2900株(発行済株式総数の約18.9%)である。
<当事者の主張>
申立人:1株3149円、36万2900株で11億4277万2100円
収益還元法により株価を算定
会社:1株1903円~2326円、36万2900株で6億9059万8700円~8億4410万5400円
DCF法により株価を算定
指定買取人:1株2067円、36万2900株で7億5011万4300円
DCF法により株価を算定
<裁判所の判断>
1株2460円、36万2900株で8億9273万4000円
収益還元法3000円、配当還元法300円を8体2の割合で採用し、株価を算定
<裁判所決定額と会社主張の最低価額との差額>
1株差額:+557円、36万2900株差額:+2億213万5300円
会社主張の最低価額を100とした場合の裁判所決定額:約129
3.平成20年1月22日決定(東京地裁)
<事案の概要>
申立人が会社に対し、譲渡制限株式の譲渡について、承認を求めたところ、会社は、承認を拒絶し、買取人を指定した。申立人は、裁判所に対し、株式の売買価格の決定を申し立てた。発行済株式総数は6000株、申立人の保有株式数は2400株(発行済株式総数の40%)である。
<当事者の主張>
申立人:1株3万9970円、2400株で9593万円
2400株について、取引事例法1億3333万3000円、収益還元法1億0063万1000円、類似会社比較法5382万8000円を1対1対1で採用し、株価を算定
指定買取人:1株約6572円、2400株で1577万2315円
2400株について、純資産法1770万8800円、収益還元法1688万777円、配当還元法0円を7対2対1で採用し、株価を算定
<裁判所の判断>
1株1万2929円、2400株で3102万9600円
収益還元法を採用し、株価を算定
<裁判所決定額と指定買取人主張額の差額>
1株あたり差額:+約6357円、2400株差額:+1525万7285円
指定買取人主張額を100とした場合の裁判所決定額:約197
4.平成3年9月26日決定(千葉地裁)
<事案の概要>
申立人が会社に対し、譲渡制限株式の譲渡について、承認を求めたところ、会社は、承認を拒絶し、会社が自ら買い取る旨を表明した。申立人は、裁判所に対し、株式の売買価格の決定を申し立てた。
発行済株式総数は10万4000株、申立人の保有株式数は1万400株(発行済株式総数の10%)である。
<当事者の主張>
申立人:1株9532円、1万400株で9913万2800円
再調達時価純資産法により株価を算定
会社:1株2603円、1万400株で2707万1200円
純資産法により算定された価額3252円を、相続税財産評価に関する基本通達に準じて、その80%相当額として、株価を算定
<裁判所の判断>
1株5066円、1万400株で5268万6400円
配当還元法4196円、純資産法5937円を1対1で採用し、株価を算定
<裁判所決定額と会社主張額の差額>
1株あたり差額:+2463円、1万400株差額:+2561万5200円
会社主張額を100とした場合の裁判所決定額:約195
5.最後に
以上、裁判例で明らかなように、会社や指定買取人の主張する金額と、裁判所により決定された金額には大きな差があることが分かります。裁判所による株価決定においては、会社の業種、業態、経営状況、売却対象株式数、発行済株式総数に占める割合、当該株主と大株主との関係など、様々な要素が考慮されるとともに、株価決定非訟手続における訴訟活動が極めて重要な役割を果たします。
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