不動産
改正民法による不動産賃貸業への影響(1)
1 はじめに
約120年ぶりの大改正と言われている令和2年4月1日施行の改正民法は、不動産賃貸業にどのような影響をもたらしたのか。今回は、不動産賃貸借契約において、賃借人側に個人保証人を置く場合について詳説いたします。
2 個人保証の場合の極度額の定め
個人の保証人を置く場合には、その保証人が負担する極度額を書面等で定める必要があることとされました(改正民法465条の2)。
この改正は今までには無かった全く新しいルールです。この場合の保証人は、賃借人が賃貸人に対して負っている将来の家賃等という不特定の債務を保証するため、いわゆる「根保証」に類する責任を負うことになります。そこで、今回の改正によって、書面等でその極度額を定めないと保証契約自体が無効とされることになりました。
3 極度額とは何か
極度額とは、保証人が負担する債務の上限額です。注意が必要なのは、その債務は、賃借人が滞納した家賃等に限られないということです。
すなわち、滞納家賃の利息・遅延損害金・賃借人による損害賠償金・違約金といった全てを含めた債務の上限額を定める必要があります。
未払い家賃のみを想定して、極度額を定めていたところ、賃借人に賃貸人への違約金等が生じたという場合は、すでに定めていた極度額の範囲内でしか保証人に対して請求することはできないことになります。
4 極度額の定め方
極度額の定め方は、シンプルに「300万円」、「1000万円」といった金額で定めてもよいし、「家賃10か月分」という定め方をしても問題ありません。
ただし、例えば家賃が7万円であるところ、極度額を10億円と定めてしまうと、結局のところ極度額を何ら定めていないのと同じこととなりますので、保証契約自体が公序良俗に反し無効とされる可能性があります。したがって極度額は、合理的な範囲に止めておく必要があります。
5 最後に
以上のとおり、不動産賃貸をめぐる保証人の責任について重要な法改正がなされました。保証人を付すことは安定した賃貸経営においては重要なことであり、法改正を踏まえて対応する必要があります。
不動産賃貸借をめぐっては、保証人の問題に限らず、今回の民法改正で思わぬ損害を被ることも想定されますので、不動産賃貸をめぐるトラブルの事前予防については、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。
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