株式移転の知識2|株式移転の法律実務―会社法1

企業法務ガイド|株式移転

第1編

株式移転の法律実務

第2

株式移転の法律手続と規制

1

会社法

(1) 
株式移転の意義
株式移転とは、1または2以上の会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいいます(会社法2条32号)。
株式移転は、完全子会社となる会社の株式をすべて完全親会社となる新設会社が取得することにより、完全親子会社関係を創設する制度です。
(2)
株式移転計画
株式移転をするためには、一定の事項(会社法773条)を定めた株式移転計画を作成する必要があります(会社法772条)。
なお、会社法は、株式移転計画書の作成を要求していませんが、商業登記法との関係上、株式移転計画書の作成は必要となります。
株式移転計画で定めるべき事項は、下記(イ)から(ヌ)になります(会社法773条)。
(イ)
完全親会社となる新設会社の目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数
(ロ)
上記(イ)のほか、完全親会社となる新設会社の定款で定める事項
(ハ)
完全親会社となる新設会社の設立時取締役の氏名
(ニ)
(a)
完全親会社となる新設会社が会計参与設置会社である場合、設立時の会計参与の氏名、又は名称
(b)
完全親会社となる新設会社が監査役設置会社である場合、設立時の監査役の氏名
(c)
完全親会社となる新設会社が会計監査人設置会社である場合、設立時の会計監査人の氏名又は名称
(ホ)
株式移転に際して、完全子会社となる会社の株主に対して、その株式に代わり交付する完全親会社となる新設会社の株式に関する事項(その数、算定方法、完全親会社となる新設会社の資本金及び準備金の額)
(へ)
完全子会社となる会社の株主に対する上記(ホ)の割当てに関する事項
(ト)
株式移転に際して、完全子会社となる会社の株主に対して、その株式に代わり交付する完全親会社となる新設会社の社債に関する事項(その種類、金額等)
(チ)
完全子会社となる会社の株主に対する上記(ト)の割当てに関する事項
(リ)
株式移転に際して、完全子会社となる会社の新株予約権者に対して、その新株予約権に代わり交付する完全親会社となる新設会社の新株予約権に関する事項(その内容、数、算定方法等)
(ヌ)
完全子会社となる会社の新株予約権者に対する上記(リ)の割当てに関する事項
株式移転は、完全親会社となる新設会社の登記時に効力が発生するため、株式移転計画においては、株式交換契約で定めるべき事項として必要となる「効力発生日」を定める必要ありません。
(3)
事前開示書類
株式移転をするためには、完全子会社となる会社は、一定の事項を記載した書面または電磁的記録(事前開示書類等)を本店に備え置く必要があります(会社法803条)。
完全子会社となる会社の株主、新株予約権者は、事前開示書類等の閲覧、謄本・抄本の交付等を請求することができます(会社法802条3項)。
事前開示書類は、下記(a)から(d)のいずれか早い日から6か月間、備え置かなければなりません。
(a)
株式移転の承認に関する株主総会の2週間前の日
(b)
反対株主の株式買取請求に関する通知または公告のいずれか早い日
(c)
新株予約権買取請求に関する通知または公告のいずれか早い日
(d)
債権者異議手続の公告または催告のいずれか早い日
事前開示すべき事項は、下記1)から7)になります(会社法803条1項、会社法規則206条)。
1)
株式移転計画の内容
2)
株式移転に際して、完全子会社となる会社の株主に対して、その株式に代わり交付する完全親会社となる新設会社の株式、社債及びそれらの割当て、各々の相当性に関する事項
3)
株式移転に際して、完全子会社となる会社の新株予約権者に対して、その新株予約権代わり交付する完全親会社となる新設会社の新株予約権及びその割当て、各々の相当性に関する事項
4)
他に完全子会社となる会社がある場合には、当該会社の計算書類等の内容
5)
最終事業年度の末日後に生じた重要な事象等の内容
6)
株式移転について異議を述べることができる債権者がいる場合、完全親会社となる新設会社の債務の履行の見込みに関する事項
7)
株式移転の効力が生ずるまでの間に、上記1)から6)の事項に変更が生じたときは、変更後の当該事項
(4)
株主総会の承認
株式移転をするためには、完全子会社となる会社は、その効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、株式移転の承認を受けなければなりません(会社法804条1項)。
株主総会の決議は、特別決議によらなければなりませんが(会社法309条2項12号)、完全子会社となる会社において、一定の場合には、特殊決議、種類株主総会の承認、総株主全員の同意が必要となります(会社法309条3項2号、3号、324条1項、3項2号、804条2項)。
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