株式交換の知識3|株式交換の法律実務ー会社法2

企業法務ガイド|株式交換

第1編

株式交換の法律実務

第2

株式交換の法律手続と規制

1

会社法

(5)
簡易手続、略式手続
(イ)
簡易手続
簡易手続とは、一定の場合に、完全親会社となる会社の株主総会決議を省略して行う株式交換手続をいいます(会社法796条3項)。
簡易手続は、株式交換に際し、完全親会社となる会社が完全子会社となる会社の株主に対し交付する株式の数に1株あたり純資産額(会社法規則196条)を乗じて得た額と、株式交換に際し交付する社債その他の財産の帳簿価格の合計額が完全親会社となる会社の純資産額の5分の1(定款でこれを下回る割合を定めることも可能です。)を超えない場合に行うことができます(会社法796条3項)。
ただし、完全親会社となる会社に株式交換差損が生じる場合、及び、完全親会社となる会社が公開会社ではなく、かつ、交付される株式が譲渡制限株式である場合には(会社法796条3項但書)、簡易手続によって株式交換を行うことはできません。
簡易手続においては、反対株主の株式買取請求に係る株主に対する通知・広告の日から2週間以内に、法務省令(会社法規則196条)に定める数の株式を有する株主が、当該株式交換に反対する旨の通知した場合は、株主総会の承認決議が必要となります。
(ロ)
略式手続
略式手続とは、完全親会社となる会社が完全子会社となる会社の総株主の議決権の10分の9(定款でこれを上回る割合を定めることも可能です。)以上を有する場合、完全子会社となる会社の株主総会決議を省略して行う株式交換手続をいいます(会社法784条1項、796条1項)。
ただし、完全親会社となる会社が完全子会社となる会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する場合(特別支配会社)であっても、完全親会社となる会社が公開会社でなく、かつ、交付される株式が譲渡制限株式である場合には(会社法796条1但書)、略式手続によって株式交換を行うことはできません。
また、完全子会社となる会社が公開会社であり、かつ、種類株式発行会社でない場合で、交付される金銭等が譲渡制限株式等である場合にも(会社法784条1項但書)、略式手続によって株式交換を行うことはできません。
(6)
株式買取請求権等
(イ)
株式買取請求権
株式買取請求権とは、株式交換に反対する株主が、会社に対して、自己の所有する株式を買い取るよう請求することができる権利をいいます。
(ロ)
株式買取請求権の手続
株式交換に際して、当事会社は、株主に株式買取請求の機会を与えるため、株式交換の効力発生日の20日前までに、株式交換をする旨並びに相手会社の商号及び住所を通知又は広告することになります(会社法785条3項、4項、797条3項、4項)。
株主は、株主総会(種類株主総会も同様です。)に先立って、当該会社に対して、株式交換に反対する旨の通知をし、かつ、株主総会において株式交換に反対した場合には、株式交換の効力発生日の20日前からその前日までの間に、株式買取請求権を行使することができます(会社法785条、797条)。 なお、株主総会の決議を要しない場合及び議決権を有しない株主も、株式買取請求権を行使することは認められており、この場合には、株式交換に反対する旨の意思表示をする必要はありません。
株式買取請求権の効力は、完全親会社となる会社の場合には、株式の代金の支払時に生じ、完全子会社となる会社の場合には、株式交換の効力発生時に生じます。
株式の買取価格は、「公正な価格」とされており、この買取価格について、株主と当事会社との間で協議が調った場合には、当事会社は、株式交換の効力発生日から60日以内にその代金を支払わなければなりません(会社法786条1項、会社法798条1項)。
一方、株式の買取価格について、株式交換の効力発生日から30日以内に、株主と当事会社との間で協議が調わない場合には、株主または当事会社はその日から30日以内に、裁判所に対し、株式の価格決定の申立てをすることができます(会社法786条2項、798条2項)。効力発生日から60日以内に、同申立がない場合、その後、株主は、いつでも株式買取請求を撤回することができます(会社法786条3項、798条3項)。
(ハ)
新株予約権の買取請求
株式交換に際して、完全子会社となる会社の新株予約権者に対して、完全親会社となる会社の新株予約権を交付する場合に、完全子会社となる会社の新株予約権の内容として、そもそもこのような取扱を予定していない場合又は予定していた条件と異なる取扱を受けるような場合には、当該新株予約権者は、会社に対して、自己の所有する新株予約権を買い取るよう請求することができる権利をいいます。
株式交換に際して、完全子会社となる会社は、新株予約権者に新株予約権の買取請求の機会を与えるため、株式交換の効力発生日の20日前までに、株式交換をする旨並びに完全親会社となる会社の商号及び住所を通知又は広告することになります(会社法787条3項、4項)。
新株予約権の買取請求をし得る新株予約権者は、株式交換の効力発生日の20日前からその前日までの間に、新株予約権の買取を請求することができます(会社法787条)。
なお、新株予約権付社債の場合、新株予約権の買取を請求するときは、原則として、社債についても合わせて買取を請求しなければなりません。
新株予約権の買取請求の効力は、株式交換の効力発生時に生じます。
新株予約権の買取価格は、「公正な価格」とされており、この買取価格について、新株予約権者と完全子会社となる会社との間で協議が調った場合には、完全子会社となる会社は、株式交換の効力発生日から60日以内にその代金を支払わなければなりません(会社法788条1項)。
一方、新株予約権の買取価格について、株式交換の効力発生日から30日以内に、新株予約権者と完全子会社となる会社との間で協議が調わない場合には、新株予約権者または完全子会社となる会社はその日から30日以内に、裁判所に対し、新株予約権の価格決定の申立てをすることができます(会社法788条2項)。効力発生日から60日以内に、同申立がない場合、その後、新株予約権者は、いつでも新株予約権の買取請求を撤回することができます(会社法788条3項)。
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