会社分割の知識5|会社分割の法律上の規制ー労働承継法の趣旨

企業法務ガイド|会社分割

第1編

会社分割の法律実務

第3

会社分割の法律上の規制

2

労働承継法

(1)
労働承継法の趣旨
「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」(労働承継法)では、会社分割が行われる場合の労働者保護の重要性に配慮し、分割会社に対し、会社の分割に伴う労働契約の承継に関し労働者との協議を義務付けており、労働者の保護を図りつつ円滑な労働契約の承継を図っています。
(2)
労働承継の手続
(イ)
労働者等との協議
分割会社は、分割計画又は分割契約について株主総会の決議による承認を要するときは、株主総会の日の2週間前の日の前日、株主総会の決議による承認を要しないときは、分割契約が締結された日又は分割計画が作成された日から起算して2週間を経過する日(以下、通知期限日といいます。)までに、分割に伴う労働契約の承継に関して、労働者と事前に協議をしなければなりません(平成12年商法改正法附則5条、労働承継法2条3項)。
この協議では、労働者が勤務することになる会社の概要、労働者が労働承継法2条1項1号に掲げる労働者に該当するか否かを説明し、本人の希望を聴取し、労働者ごとの労働契約の承継の有無、従事する業務の内容、就業場所、就業形態について話し合うことが予定されています。
また、労働承継法第7条は分割会社がその雇用する労働者の理解と協力を得るように努めるものとすると規定されており、労働組合や労働者の過半数代表者との協議が期待されています。
(ロ)
労働者の異議申出手続き
分割会社は、分割会社が雇用する次の(a)の労働者に対し、通知期限日までに、(b)の事項を書面により通知しなければなりません(労働承継法2条1項、3項、4条2項)。
(a)
1)
承継される事業に主として従事している労働者
2)
承継される事業に従として従事する者で、分割計画又は分割契約に労働契約を分割承継会社が承継する旨の記載がある労働者
(b)
1)
分割によりその労働者の労働契約を分割承継会社が承継する旨の分割計画又は分割契約の記載の有無
2)
異議申出期限日(分割計画又は分割契約について株主総会の決議による承認を要するときは、通知期限日の翌日から株主総会の日の前日までの期間の範囲内で、分割会社が定める日、株主総会の決議による承認を要しないときは、分割の効力発生日の前日までの日で分割会社が定める日)
3)
通知対象の労働者が上記(a)のいずれに該当するかの別
4)
分割会社から分割承継会社に承継される事業の概要
5)
分割後の分割会社及び分割承継会社の名称、所在地、事業内容及び雇用することを予定している労働者の数
6)
分割をなすべき期日
7)
分割後の分割会社及び分割承継会社においてその労働者について予定されている従事する業務の内容、就業場所その他の就業形態
8)
分割後の分割会社及び分割承継会社のそれぞれの負担すべき債務の履行の見込みがあること及びその理由
9)
異議がある場合はその申し出を行うことができる旨及び異議の申し出を行う際のその申し出を受理する部門の名称及び所在地又は担当者の氏名、職名及び勤務場所
(c)
また、分割会社が労働組合との間で労働協約を締結しているときは、その労働組合に対し、通知期限日までに、次の事項を書面により通知しなければなりません(労働承継法2条2項、3項)。
1)
分割によりその労働契約を分割承継会社が承継する旨の分割計画又は分割契約の記載の有無
2)
分割会社から分割承継会社に承継される事業の概要
3)
分割後の分割会社及び分割承継会社の名称、所在地、事業内容及び雇用することを予定している労働者の数
4)
分割をなすべき期日
5)
分割後の分割会社及び分割承継会社のそれぞれの負担すべき債務の履行の見込みがあること及びその理由
6)
労働契約が分割承継会社に承継される労働者の範囲及びその範囲の明示によっては労働組合にとってその労慟者の氏名が明らかにならない場合にはその労働者の氏名
7)
分割承継会社が承継する労働協約の内容(上記1)の記載がある旨を通知する場合に限る)
(ハ)
労働契約の承継と異議の関係
会社分割では分割計画又は分割契約に記載された権利義務のみが分割承継会社に承継されます。したがって承継される事業に主として従事している労働者に係る労働契約は、分割計画又は分割契約に記載された場合には、分割の効力発生日に分割承継会社に承継されることになります(労働承継法3条)。
承継される事業に主として従事する労働者に係る労働契約が分割計画又は分割契約に記載されていない場合、上記通知がされた日から異議申出期限日までの間(少なくとも13日間(労働承継法4条2項)に、その労働者は分割会社に対し承継されないことについて書面により異議を申し出ることができます(労働承継法4条1項)。異議を述べた場合には、その労働契約は分割の効力発生日に分割承継会社に承継されます(労働承継法4条4項)。
承継される事業に従として従事する労働者に係る労働契約が、分割計画又は分割契約に承継する旨の記載がある場合、上記通知がされた日から異議申出期限日までの間(少なくとも13日間(労働承継法5条2項、4条2項)に、その労働者は分割会社に対し承継されることについて書面により異議を申し出ることができます。(労働承継法5条1項)。異議を述ベた場合には、その労働契約は分割承継会社に承継されず分割会社に残ります(労働承継法5条3項)。

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