離婚財産分与の知識1|離婚財産分与とは

離婚、離婚財産分与ガイド

離婚財産分与とは、離婚に際して夫婦二人で築いてきた財産を財産分けすることです。つまり夫婦の財産の清算です。
二人で築きあげた財産を分け合うものですから、離婚原因を作った側からも財産分与の請求は可能です。
有責配偶者であっても清算的財産分与を請求できるとする判例もあります。
財産分与は二人で築きあげた財産を分け合い清算するものですが、清算以外の要素として扶養的要素、慰謝料的要素があると理論上はされています。
しかし裁判実務では、これらの要素が認められるケースは多くはないというのが実情です。結局離婚財産分与とは、夫婦二人で築きあげた財産を分け合い清算することがやはり中心となります。

離婚にあたっては財産分与に関する法律をひととおり理解しておくことが非常にたいせつです。財産分与とは、財産分与の際に考慮すべきこと、財産分与の対象となる財産などにについてわかりやすくご説明します。

離婚財産分与の知識1|離婚財産分与とは

(1)

財産分与とは、簡単にいうとどういうことでしょうか。


離婚の際の慰謝料というのは割合よく知られていると思います。離婚の際の財産分与というのは、もしかしたら慰謝料ほどには知られていないかも知れませんが、難しいことではありません。要するに離婚に際して、夫婦2人で築いてきた財産をどう分けるかということです。分与という言葉を使っていますが、別れるときの夫婦の財産分けなのです。例えば、2人で築き上げた財産が1000万円ある夫婦の場合、離婚するときには500万円ずつ分ける、これが財産分与です。
これに対して、離婚の際の慰謝料というのは、離婚の原因となったことについて責任のある方が責任のない方あるいは責任の少ない方に対して支払う、いってみればお詫びのお金です。もし、夫の不倫が原因で別れることになった場合、例えば、夫から妻にお詫びとして(妻からすると慰め料として)200万円支払う、これが慰謝料です。
一方、財産分与は、2人で築き上げた財産を分け合うものですから、たとえ、妻が不倫をして別れることになっても、財産分与を請求することができます。有責配偶者(離婚の原因となったことについて責任のある方の配偶者)であっても清算的財産分与を請求できるとした裁判例もあります(東京高裁平成3年7月16日判決)。
(2)

財産分与は、二人で築いた財産を分けて清算すること(清算的分与)以外にも考慮する要素はあるのでしょうか


財産分与については(イ)清算的財産分与のほか、(ロ)扶養的要素、(ハ)慰謝料的要素があるといわれています。
(ロ)については、明治44年生の夫と昭和2年生まれの妻との間の離婚で、離婚判決が確定した月から妻が死亡するまで毎月15万円の扶養的財産分与を認めた例(横浜地裁平成9年1月22日判決)、その控訴審である東京高裁平成10年3月18日判決では扶養的財産分与は認められないとしたものなどがありますが、実務的には、例としてはあまり多くなく、財産分与は(イ)の清算的財産分与を中心に考えていいと思います。それから、先ほどの横浜地裁と東京高裁の事件は同じ事案ですが結論は違っています。これは裁判官により考え方が違ったことが大きく、このようなことからしても、法律問題は○か×か、YESかNOかという割り切った答が難しいことがお分かり頂けると思います。 (ハ)については、夫の慰謝料請求については、財産分与の裁判の中で、夫の取得分に慰謝料の性質を有する分与分を加える方法により解決するのが相当とした裁判例(東京高裁平成8年12月25日判決)、一方、離婚に伴う慰謝料請求を基礎づけるに足る事実は認められないとして慰謝料的財産分与は否定した例(名古屋高裁平成18年5月31日決定、もっともこの決定は扶養的財産分与として、夫が6分の5の持分を有するマンションについて、二女が高校を、長男も小学校を卒業するまで、約8年間無償使用できる権利を認めており、このような形での扶養的財産分与を認めた例ということにもなります)などがありますが、実務的には、慰謝料は慰謝料という独立の項目で請求することがほとんどですので、結局、財産分与は、(イ)の清算的なものが中心になります。
(3)

財産分与の対象になるのはどのような財産でしょうか。

(イ)
一口でいうと、結婚してから二人の力で築き上げた財産は全て対象になります。
【例】結婚してから買った不動産、預金、生命保険(これは離婚のときもし解約したらいくらのお金になるかということで金額を計算します)、自動車、家財(但し買ったときと比べ離婚のときは価値が減っていることが多いと思います)、貴金属類、株などの有価証券、ゴルフ会員権などのほか、営業による財産であっても二人が協力して築いたものであれば財産分与の対象です。
【財産の名義はどう関係しますか】名義については、夫婦共同名義はもちろん、たとえ夫名義、妻名義であっても、実質的に二人で築き上げたものがもとになっていれば財産分与の対象です。また子供名義の預金なども、子供が小遣いやお年玉を貯めたというような比較的小額のものはともかく、夫婦二人で築き上げたものであれば財産分与の対象となります。夫婦と夫の父とが畜産業を営んでいた場合、収入はすべて夫の父名義としていたとしても、その中には夫婦の働き分があるとして400万円(但し昭和52年当時)の財産分与を認めた例もあります(熊本地裁昭和52年7月5日判決)。要するにポイントは名義ではなくて、実質的に二人で築き上げた財産といえるかどうかです。
(ロ)
年金や退職金はどうでしょうか。
【年金について】年金については、年金分割の制度ができました。 年金分割できるのは厚生年金部分、共済年金部分で、国民年金部分は年金分割対象でありません。
必要な手続
年金分割するときは家庭裁判所での審判、調停、公正証書または公証人の認証を受けた私署証書ですることが必要です。通常は家庭裁判所での調停にするか(夫婦の間で事実上おおむねの合意ができていても、家庭裁判所で確定的に合意したうえ、調停調書という書類を作ってもらうため調停の申立てをすることは可能です)、公正証書にするといいでしょう。
その際、按分割合(年金分割割合、最大で0、5<50%>です)の範囲等の確認のため、社会保険事務所、共済組合から「年金分割のための情報通知書」というのをもらっておいてください。
年金分割についての公正証書や調停調書ができても、それだけでは年金分割されたことにはならず、社会保険事務所、共済組合等に年金分割の請求(「標準報酬改定請求書」という書類を提出することになります)をする必要があります。
手続の期限
その期限は、離婚から2年以内です。調停申立て等は早めにしていたのに調停の成立が本来の期限を過ぎてしまったときなどは調停成立等から1ヶ月以内という例外はありますが、いずれにしても早めに合意や調停の申立て等をする必要があります。
なお、平成20年4月1日以降は年金分割割合は0.5と思っておられる方があるかもしれませんが、これはあくまでも平成20年4月1日以降の報酬部分に限ってのこと、つまり、平成20年4月1日以降の給料等に対応する年金部分に限ってのことで(この場合も、社会保険事務所等に対する年金分割の請求手続は必要です。)、それ以前の報酬の分(つまり、平成20年3月31日までの給料等に対応する年金部分ですから、平成20年4月1日以降に離婚する場合も、平成20年3月31日以前に結婚している期間があり、厚生年金、共済年金をもらえる収入があった場合は、やはり年金分割の割合を決める手続は必要です。)についてまで合意等もせずに0.5ということになるわけではありません。
【退職金について】退職金は、賃金の後払い的な要素があります。 それで遠くない将来退職金が入る見込みがある場合は財産分与の対象とする考え方が有力です。 裁判例を見ると、夫が6年後に取得する退職金は財産分与の対象になるとして、これを現在の価値に引き直してその5割に相当する額(但し実質的婚姻期間に対応する分)を分与したもの(東京地裁平成11年9月3日判決)、平成21年3月31日定年の夫に対し、退職したときは退職金の2分の1に相当する一定額を分与(支払い)せよとしたもの(名古屋高裁平成12年12月20日判決)などがあります。
(ハ)
逆に離婚時に夫婦のどちらかが持っていても、二人で築き上げたといえない財産(特有財産といっています)は財産分与の対象とはなりません。例えば結婚前から持っていた預金、結婚後親が亡くなって相続した財産などがこれにあたります。このような財産は二人で築き上げた財産とはいえないので、財産分与の対象にならないのです。
もっとも、夫婦の一方が相続によって得た財産であっても、その維持に他方が協力した場合は財産分与の対象となることがあります。
東京高裁判決(昭和55年12月16日)は、夫が父から借地権の贈与を受け(これだけですと夫婦の共同の財産ではなく夫の特有財産になります)、妻が家計の維持に多大な寄与をしてきた場合、借地権についてはその価格の1割を妻に財産分与するとしています。
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