任意後見制度3|任意後見人、任意後見の終了

成年後見ガイド

第3

任意後見制度

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任意後見人

(1)

任意後見人の代理権の範囲

任意後見契約は基本的には当事者間の合意で決められる委任契約ですので、任意後見人は、この契約に定められた事務を行います。任意後見契約では事実行為を委任することができないことは前述のとおりです。
委任することができる主な事務としては、預貯金の管理、介護契約、医療契約の締結、訴訟行為の委任などが考えられるでしょう。
(2)

費用、報酬

(イ) 
任意後見の事務の費用
任意後見契約は委任契約ですので、費用については、民法の委任についての費用の規定に従います(649条、650条)。任意後見事務の費用は本人が支払います。また、事前に任意後見人は費用の前払いを求めることもできますし、一時的に任意後見人自身が支払った(立て替えた)ときは後で本人に請求できます。
(ロ)
任意後見人の報酬報酬
についても、民法の委任の規定に従うのですが、民法上委任契約は原則として無償のものとされています(648条1項)。親族が任意後見人になる場合などは無報酬でもよいかもしれませんが、法人や複数の人が任意後見人になれるようになり、実際上は報酬が必要となることが多くなってくるでしょう。そうした場合は特約で報酬の定めを結んでおくことが必要です。
(3)

任意後見人の義務

任意後見契約は委任契約ですので、任意後見人は民法上の委任契約の受任者が負わされている善管注意義務(民法644条)を負います。
また、認知症の高齢者、障害者といった本人の保護をするには身上に関係する行為も多くしなければならないでしょうから、法定後見制度の場合と同じように、身上配慮義務を負うことが法律上明らかにされています(任意後見法6条)。
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任意後見の終了

任意後見契約は当事者間の委任契約ですから、当事者以外の人がこの契約に干渉できないというのが原則的な考え方ですが、任意後見契約は判断能力の不足した弱者を保護するためのものですから、一定の場合には家庭裁判所が介入して不適当な任意後見人を解任することができることになっています。
解任事由については法定後見人の解任事由と同じであり、任意後見人に不正な行為、著しい不行跡、その他任意後見の任務に適さない事由です。ただし、法定後見の場合と違って、申立てによる解任のみが認められており、裁判所の職権による解任はできないとなっています(任意後見法8条)。
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任意後見契約の終了
(1)

委任契約の終了

任意後見契約は委任契約ですから、民法で委任契約一般に認められている終了事由があれば、終了します。それは以下の三つです(653条1号から3号)。
(イ)
本人、任意後見人の死亡
(ロ)
本人、任意後見人が破産したこと
(ハ)
任意後見人について後見が始まったこと
(2)

任意後見契約の解除

任意後見契約はあくまで当事者間の契約ですから、契約を解除することによっても終了します。
ただ、任意後見契約は公正証書による厳格な手続きによって結ばれたものなので、解除するときにも公証人の認証を受けた書面によってしなければなりません(任意後見法9条)。
また、すでに任意後見が始まった後は、本人の保護が必要な状況(=判断能力が不十分な状態)になっているので、正当な事由と家庭裁判所の許可が必要とされており、この条件は辞任の場合と同じです。

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