法定後見の内容1

成年後見ガイド

法定後見、任意後見といった成年後見に関する法律相談に、朝日中央綜合法律事務所の弁護士が答えたQ&Aをご紹介します。

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法定後見制度のQ&A

(3)

法定後見の内容1

Q:
後見開始、保佐開始、補助開始の審判がなされると、どのようにして本人の保護が図られるのですか?
A:
法定後見制度では、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。ただし、法定後見3類型中、最も法律的権限の強い成年後見人であっても、本人の自己決定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、取消すことができません。
より具体的には、成年後見人が選任されることによって、成年被後見人にかわって成年後見人が不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結ぶことができます。また、難しい遺産分割の協議を代わりにすることも可能になります。さらに、本人に不利益な契約であることが判断ができずに悪徳商法の被害にあうといったこともなくなります。

Q:
法定後見制度の場合、成年後見人、保佐人、補助人にはどのような権限が与えられますか?
A:
1.
成年後見人の権限
成年後見人には、日常生活に関する行為を除き、成年後見人がすべての法律行為に関して、同意権・取消権・代理権を行使します。
2.
保佐人の権限
(1)
同意権
保佐人の場合は、民法13条第1項(借財、保証、不動産その他重要な財産の売買等)で規定されている重要な法律行為に関して同意権があります。
また、13条第1項所定以外の行為で家庭裁判所が特に指定した行為がある場合にはこれについても同意権があります。保佐人はこれらの同意のない行為については追認することや取消権を行使することもできます。
(2)
代理権
しかし、保佐人の代理権は、当事者が申立てた「特定の法律行為」について、審判申立てとは別に代理権付与の審判申立てが必要になります。つまり、保佐人には法律上当然に代理権は付与されておらず、家庭裁判所の代理権付与の審判によって特定の法律行為についての代理権が付与されます。ただし、本人の利害に大きく影響するため、本人の自己決定権を尊重して、代理権付与の申立が本人以外の者によってなされる場合には、本人の同意が必要とされています。
3.
補助人の権限
(1)
同意権
補助人には、特定の法律行為について同意権、取消権、追認権を与えることができます。この同意権の対象となる行為は民法13条第1項の行為の一部に限られます。被補助人は被保佐人より高い判断能力を有しているはずなので同意の対象は13条第1項の行為の一部に限定されています。
(2)
代理権
また、補助人には特定の法律行為をするための代理権を、保佐人と同様に付与の審判によって与えることができます。代理権を付与することができる法律行為については制限がないので、不動産の処分をはじめとし、遺産分割協議を行うこと、介護施設に入るための契約など様々なものが対象となり得ます。

Q:
成年後見人、保佐人、補助人にはどのような人が選ばれますか?
A:
成年後見人、保佐人、補助人は、本人のためにどのような保護・支援が必要かを判断して、家庭裁判所が選任します。最高裁のまとめでは、成年後見人の約8割は親族が統計的に一番多く選任されており、同時に審判開始の申立人であることもしばしばです。しかし、本人の親族以外にも、弁護士や社会福祉士などの法律・福祉の専門家その他の第三者や、福祉関係の公益法人その他の法人が選任されることがあります。また、成年後見人等は複数選任されることもあります。

Q:
成年後見人になるには特別な資格が必要でしょうか?
A:
1.
資格は不要
成年後見人になるために特別な資格は必要ありません。しかし、誰でも成年後見人になれるわけでもありません。民法847条には後見人になれない人として5つの類型(欠格事由といいます)が示されていますので、このいずれにも該当しないことが必要です。保佐人や補助人も同様です。
2.
欠格事由
欠格事由は次のとおりです。
(1)
未成年者未成年者は原則として、単独で有効に契約の締結などをすることができません。したがって、成年被後見人のために財産管理などを担当しなければならない成年後見人として、未成年者はふさわしくありません。
(2)
家庭裁判所に解任された法定代理人(成年後見人等)・保佐人・補助人本人との関係で裁判所に成年後見人として不適格として解任された者や、第三者の法定後見人等に就職していて解任されたことがある者もふさわしくないということです。
(3)
破産者破産手続き開始の決定を受けて、未だ免責されていない人を指します。破産手続き開始の決定を受けていても、既に裁判所で免責許可決定をうけていれば、欠格事由には該当しません。
(4)
被後見人に対し訴訟をし、またはした者およびその配偶者並びに直系血族成年被後見人と利害関係はもちろん感情的にも敵対関係にある者として、排除されています。
(5)
行方不明者後見人の重要な職務を任せられないことは明らかです。

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