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法定後見制度のQ&A
(3)
Q:
成年被後見人、被保佐人、被補助人は遺言をすることができますか?
A:
遺言は15歳に達した者であればすることができます(民法961条)。そして、遺言については、成年後見人の取消権はなく、保佐人・補助人の同意も不要であると明記されています(民法962条)。したがって、成年被後見人、被保佐人、被補助人は遺言内容を理解し、その結果を理解できる意思能力(「遺言能力」といいます)があれば遺言をすることができます。
但し、成年被後見人は判断能力を欠く常況にあるので、原則として遺言能力はありません。しかし、時として意思能力を回復している状態であれば医師2人以上の立会いのもと、一時的に遺言をすることができる状態にあったことを遺言書に付記してもらうという手続きにより遺言をすることができます(民法973条)。
被保佐人や被補助人にはこのような手続上の要件はありません。
但し、成年被後見人は判断能力を欠く常況にあるので、原則として遺言能力はありません。しかし、時として意思能力を回復している状態であれば医師2人以上の立会いのもと、一時的に遺言をすることができる状態にあったことを遺言書に付記してもらうという手続きにより遺言をすることができます(民法973条)。
被保佐人や被補助人にはこのような手続上の要件はありません。
Q:
成年被後見人が婚姻するには成年後見人や保佐人の同意が必要ですか
A:
成年被後見人が婚姻をするために、成年後見人の同意は必要ありません(民法738条)。また、婚姻は性質上代理人をたてない行為ですので、成年後見人が代理して婚姻することもできません。
ただ、成年被後見人において、婚姻の意味を理解し判断できる能力があることが前提です。このような婚姻の法的な効果を理解することができる判断能力、精神能力(「婚姻能力」といいます)がなければ婚姻は無効になります。
なお、成年後見制度が導入される以前は、婚姻能力があることを証する医者の診断書が婚姻の届出に必要とされていましたが、現在は不要になりました。
ただ、成年被後見人において、婚姻の意味を理解し判断できる能力があることが前提です。このような婚姻の法的な効果を理解することができる判断能力、精神能力(「婚姻能力」といいます)がなければ婚姻は無効になります。
なお、成年後見制度が導入される以前は、婚姻能力があることを証する医者の診断書が婚姻の届出に必要とされていましたが、現在は不要になりました。
Q:
成年後見の開始は登記されると聞きましたがどのような登記なのですか?
A:
禁治産、準禁治産の制度では、禁治産宣告等がなされると、本人の戸籍上に、禁治産、準禁治産の宣告の事実と後見人の氏名が記載されました。そのため、本人や家族の抵抗が大きく、制度の利用はあまり進みませんでした。
これに対し、成年後見制度では、戸籍への記載に代わる成年後見登記制度が新しく創設されています。この制度は、成年後見人などの権限や任意後見契約の内容などをコンピュータ・システムによって登記し、登記官が証明書(登記事項の証明書・登記されていないことの証明書)を発行することによって登記情報を開示する制度です。法定後見、任意後見の登記は、原則として裁判所書記官または公証人の嘱託に基づいて、後見登記等ファイルに所定の事項を記録する方法で行われ、東京法務局の後見登録課で、全国の成年後見登記事務が扱われています。ただ、登記事務のうち窓口での証明書の交付事務については東京法務局の他、各法務局と地方法務局戸籍課でも扱っています。
登記される事項は、法定後見の場合、法定後見の種類、審判、確定日、本人の氏名、生年月日、住所および本籍、成年後見人等・成年後見監督人の氏名および住所、補助人や保佐人の同意権の内容・代理権の範囲等、数人の後見人等の事務の分掌・共同行使の有無、法定後見終了に関する事項等です。任意後見の場合は、任意後見契約の公正証書に関わる事項、本人の氏名、生年月日、住所および本籍、任意後見人等・任意後見監督人の氏名および住所、任意後見監督人選任の審判の確定日、共同代理に関する事項任意後見終了に関する事項等です。
戸籍が利用されていた禁治産制度とは異なり、成年後見人等の多様な権限を公示することが可能になっています。
これに対し、成年後見制度では、戸籍への記載に代わる成年後見登記制度が新しく創設されています。この制度は、成年後見人などの権限や任意後見契約の内容などをコンピュータ・システムによって登記し、登記官が証明書(登記事項の証明書・登記されていないことの証明書)を発行することによって登記情報を開示する制度です。法定後見、任意後見の登記は、原則として裁判所書記官または公証人の嘱託に基づいて、後見登記等ファイルに所定の事項を記録する方法で行われ、東京法務局の後見登録課で、全国の成年後見登記事務が扱われています。ただ、登記事務のうち窓口での証明書の交付事務については東京法務局の他、各法務局と地方法務局戸籍課でも扱っています。
登記される事項は、法定後見の場合、法定後見の種類、審判、確定日、本人の氏名、生年月日、住所および本籍、成年後見人等・成年後見監督人の氏名および住所、補助人や保佐人の同意権の内容・代理権の範囲等、数人の後見人等の事務の分掌・共同行使の有無、法定後見終了に関する事項等です。任意後見の場合は、任意後見契約の公正証書に関わる事項、本人の氏名、生年月日、住所および本籍、任意後見人等・任意後見監督人の氏名および住所、任意後見監督人選任の審判の確定日、共同代理に関する事項任意後見終了に関する事項等です。
戸籍が利用されていた禁治産制度とは異なり、成年後見人等の多様な権限を公示することが可能になっています。
Q:
成年後見制度に関して登記されている内容はどのようにして確認したり証明したりすることができますか?
A:
1.
成年後見登記の証明書
成年後見などについて登記されている内容は、プライバシーに配慮しているため、閲覧することはできません。そこで、本人や成年後見人など限られた方からの請求がある場合に、全国の法務局が発行する「登記事項証明書」によってその内容を確認することができるに留まります。
法定後見、任意後見に関する登記については、2種類の証明書の交付請求が可能です。一つは登記事項を証明する登記事項証明書で、もう一つは、登記記録に記載がないことの登記事項証明書です。いずれもプライバシーに関わる情報なので、交付請求できる者が限定されています。請求できるのは、登記記録に記録されている者、本人の配偶者または四親等内の親族、職務上必要とする国または地方公共団体の職員等です。
上記のように法定後見等の登記情報の開示は、たとえば取引の相手方となるというだけでは請求できません。そこで、成年被後見人であることを疑わせる事情があり、判断能力に不安がある者を相手に取引を予定している場合は、その相手に登記されていないことの証明書または登記事項証明書の提示を求めることになります。
成年後見などについて登記されている内容は、プライバシーに配慮しているため、閲覧することはできません。そこで、本人や成年後見人など限られた方からの請求がある場合に、全国の法務局が発行する「登記事項証明書」によってその内容を確認することができるに留まります。
法定後見、任意後見に関する登記については、2種類の証明書の交付請求が可能です。一つは登記事項を証明する登記事項証明書で、もう一つは、登記記録に記載がないことの登記事項証明書です。いずれもプライバシーに関わる情報なので、交付請求できる者が限定されています。請求できるのは、登記記録に記録されている者、本人の配偶者または四親等内の親族、職務上必要とする国または地方公共団体の職員等です。
上記のように法定後見等の登記情報の開示は、たとえば取引の相手方となるというだけでは請求できません。そこで、成年被後見人であることを疑わせる事情があり、判断能力に不安がある者を相手に取引を予定している場合は、その相手に登記されていないことの証明書または登記事項証明書の提示を求めることになります。
2.
後見人等の資格証明
後見人等は、その資格を登記事項証明書により証明できます。また、裁判所の後見人等選任の審判の謄本、確定証明書によって資格を証明することもできます。
後見人等は、その資格を登記事項証明書により証明できます。また、裁判所の後見人等選任の審判の謄本、確定証明書によって資格を証明することもできます。
Q:
成年後見制度を利用した事例を教えてください。
A:
本人がアルツハイマー病で、妻が成年後見を申立て、自ら成年後見人になった次のような事例があります。
本人は5年程前から物忘れがひどくなり、勤務先の直属の部下を見ても誰だかわからなくなるなど、次第に社会生活を送ることができなくなりました。日常生活においても、家族の判別がつかなくなり、その症状は重くなる一方で回復の見込みはなく、2年前から入院しています。
ある日、本人の弟が突然事故死し、本人が弟の財産を相続することになりました。弟には負債しか残されておらず、困った本人の妻が相続放棄のために、後見開始の審判を申し立てました。家庭裁判所の審理を経て、本人について後見が開始され、夫の財産管理や身上監護をこれまで事実上担ってきた妻が成年後見人に選任され、妻は相続放棄の手続をしました(最高裁判所「成年後見関係事件の概況」より)。
本人は5年程前から物忘れがひどくなり、勤務先の直属の部下を見ても誰だかわからなくなるなど、次第に社会生活を送ることができなくなりました。日常生活においても、家族の判別がつかなくなり、その症状は重くなる一方で回復の見込みはなく、2年前から入院しています。
ある日、本人の弟が突然事故死し、本人が弟の財産を相続することになりました。弟には負債しか残されておらず、困った本人の妻が相続放棄のために、後見開始の審判を申し立てました。家庭裁判所の審理を経て、本人について後見が開始され、夫の財産管理や身上監護をこれまで事実上担ってきた妻が成年後見人に選任され、妻は相続放棄の手続をしました(最高裁判所「成年後見関係事件の概況」より)。
法定後見の内容2