任意後見契約2

成年後見ガイド

法定後見、任意後見といった成年後見に関する法律相談に、朝日中央綜合法律事務所の弁護士が答えたQ&Aをご紹介します。

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任意後見制度のQ&A

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任意後見契約2

Q:
任意後見人に公正証書で代理権を与える場合、どのようにして代理権の内容が示されるのですか?
A:
任意後見契約における委任事務の代理権は、代理権を与える項目を契約の中で示したり、別紙の代理権目録をつけるなどして示すのが一般的です。
代理権目録の一例は以下のとおりです。
代 理 権 目 録
(1)
不動産、動産等すべての財産の保存、管理、変更及び処分に関する事項
(2)
金融機関、証券会社とのすべての取引に関する事項
(3)
保険契約(類似の共済契約等を含む。)に関する事項
(4)
定期的な収入の受領、定期的な支出を要する費用の支払に関する事項
(5)
生活費の送金、生活に必要な財産の取得、物品の購入その他の日常生活関連取引に関する事項
(6)
医療契約、入院契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約、福祉関係施設入所契約に関する事項
(7)
登記済権利証、印鑑、印鑑登録カード、各種カード、預貯金通帳、株券等有価証券、その預り証、重要な契約書類その他重要書類の保管及び各事項処理に必要な範囲内の使用に関する事項
(8)
登記及び供託の申請、税務申告、各種証明書の請求に関する事項
(9)
以上の各事項に関する行政機関等への申請、行政不服申立て、紛争の処理(弁護士に対する民訴法55条2項の特別授権事項の授権を含む訴訟行為の委任、公正証書の作成嘱託を含む。)に関する事項
(10)
復代理人の選任、事務代行者の指定に関する事項
(11)
以上の各事項に関連する一切の事項

Q:
任意後見契約で将来の後見人に与える代理権の内容を特定するための様式があるとききましたがどのようなものですか?
A:
任意後見契約に関する法律第3条は法務省令で任意後見契約の様式を定めるとしており、その様式の1つがチェックリストの形式で代理権の内容を特定するものになっています(任意後見契約に関する法律第三条の規定による証書の様式に関する省令 付録第1号様式)。その様式は次のように□(チェックボックス)にチェックをいれて代理権の範囲を特定するものです。
A
財産の管理・保存・処分等に関する事項
□ 甲に帰属する別紙「財産目録」記載の財産及び本契約締結後に甲に帰属する財産(預貯金〔B1・B2〕を除く。)並びにその果実の管理・保存
□ 上記の財産(増加財産を含む。)及びその果実の処分・変更
□ 売却
□ 賃貸借契約の締結・変更・解除
□ 担保権の設定契約の締結・変更・解除
□ その他(別紙「財産の管理・保存・処分等目録」記載のとおり)
B
金融機関との取引に関する事項
□ 甲に帰属する別紙「預貯金等目録」記載の預貯金に関する取引(預貯金の管理、振込依頼・払戻し、口座の変更・解約等。以下同じ。)
□ 預貯金口座の開設及び当該預貯金に関する取引
□ 貸金庫取引
□ 保護預り取引
□ 金融機関とのその他の取引
□ 当座勘定取引
□ 融資取引
□ 保証取引
□ 担保提供取引
□ 証券取引〔国債、公共債、金融債、社債、投資信託等〕
□ 為替取引
□ 信託取引(予定(予想)配当率を付した金銭信託(貸付信託)を含む。)
□ その他(別紙「金融機関との取引目録」記載のとおり)
□ 金融機関とのすべての取引
(以下省略)

Q:
任意後見契約は公正証書によるそうですが、様式面でほかに注意すべき点がありますか?
A:
「任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。」(任意後見契約に関する法律第3条)と定められており、具体的な様式については、「付録第1号様式または付録第2号様式による用紙に、任意後見人が代理権を行なうべき事務の範囲を特定して記載しなければならない。」と定められています。この第1号様式は、個別的に与えられた代理権を特定していくというチェックリスト方式をとっています。
一方、第2号様式は第1号様式を用いない場合、とされています。
これらの様式には一長一短があります。
まず第1号様式では、代理権の特定が明確に行え、チェックリスト方式という点も扱い易いといえます。しかし、任意後見契約はその効力が生じた後は委任者が能力を喪失しているので、代理権の範囲でカバーできていない問題が生じうるのではないかという不安が残ります。
これに対し第2号様式は、代理権の範囲を包括的に定めることができるという利点がありますが、それだけ任意後見人の権限が強くなり、任意後見人が権利濫用をする危険も大きくなるといえます。

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