第1
4
判例
(1)
東京高裁 昭46.1.19決定( 事件番号:昭45(ラ)120号 )
(イ)
事案の概要
対象会社甲社の株式の価格について、原審静岡地裁がA鑑定(498円20銭)とB鑑定(1,068円41銭)の間をとり750円と定めたのに対し、当事者双方が抗告した事案
対象会社甲社の株式の価格について、原審静岡地裁がA鑑定(498円20銭)とB鑑定(1,068円41銭)の間をとり750円と定めたのに対し、当事者双方が抗告した事案
(ロ)
対象企業の特性
(業種)
我国有数の大手自動車メーカーの静岡県下全域を販売区域とする販売会社
(規模)
資本金450万円
赤字が続いており、累積赤字は約1億1,300万円(その他)赤字続きといいながらも経営首脳部に会社解散の意向は全くなく、メーカーからの要請もあって、10%の配当を実現する五ヶ年計画を建てている。
赤字が続いており、累積赤字は約1億1,300万円(その他)赤字続きといいながらも経営首脳部に会社解散の意向は全くなく、メーカーからの要請もあって、10%の配当を実現する五ヶ年計画を建てている。
(ハ)
株主構成
発行済株式総数9万株
うち3000株(全体の3.3%)の譲渡
発行済株式総数9万株
うち3000株(全体の3.3%)の譲渡
(ニ)
採用された算定方式
類似会社比較による収益還元法
(A鑑定を採用し、1株498円20銭)
類似会社比較による収益還元法
(A鑑定を採用し、1株498円20銭)
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
・
会社の資産については、貸借対照表上の評価額だけでなく、清算価値をも斟酌すべきであるが、このことから解散価値法による評価方法を常に至当するものと解すべきではない。
・
会社解散の意向がなく、会社再建の5ヶ年計画を建てている事実が窺われるので、会社の解散を想定して解散価値法によって株価を算定するのは妥当ではない。
・
会社の営業状態及び5ヶ年計画等を斟酌すると、A鑑定のとった類似会社比較による収益還元法を採用するのが最も合理的である。
(2)
東京高裁 昭47.4.13決定( 事件番号:昭45(ラ)488号 )
(イ)
事案の概要
対象会社甲社の株式の売買価格につき、原審が1株2,500円と決定したのに対し、指定買受人が抗告した事案
対象会社甲社の株式の売買価格につき、原審が1株2,500円と決定したのに対し、指定買受人が抗告した事案
(ロ)
対象企業の特性(業種)製品梱包作業請負業(規模)資本金1,000万円
純資産5,412万5,318円
純資産5,412万5,318円
(ハ)
株主構成
対象株式は1000株(全体の5%)
譲渡人は、対象会社を社長とともに設立した原始株主
対象株式は1000株(全体の5%)
譲渡人は、対象会社を社長とともに設立した原始株主
(ニ)
採用された算定方式
純資産価額方式を重視(同方式による算定価額は、1株2,706円であるが、結論として2,500円とした)。
純資産価額方式を重視(同方式による算定価額は、1株2,706円であるが、結論として2,500円とした)。
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
・
過去の取引事例は偶然の場合であってかつその価格(500円)が券面額と同一であることの合理性を認めるべきものはなく、また、一般利子率による逆算は抽象的に過ぎて適当でない。
・
類似業種比較の方法はよるべき資料はない。
・
本件の如き閉鎖的会社の株式価格においては端的に会社の資産状態そのものを最も重視すべきであって、各株式の化体する会社資産の割合が基本となる。
・
相手方(譲渡人)は、もと申請外会社にて対象会社甲社の社長のもとで部長として従事していたが、社長兄弟間の内紛の結果甲社が設立された際も、社長に従って常務取締役をしていたが、会社が一応の軌道にのるとともに次第に疎んぜられ、不本意ながら辞任せざるを得なくなった。この点も本件株式の価格を決定するについて事情として相手方に有利に加味さるべきである。
(3)
東京高裁 昭51.12.24決定( 事件番号:昭51(ラ)831号 )
(イ)
事案の概要
対象会社甲社の株式の売買価格につき、指定買受人から抗告がなされた事実(1株647円が相当と主張)
対象会社甲社の株式の売買価格につき、指定買受人から抗告がなされた事実(1株647円が相当と主張)
(ロ)
対象企業の特性
(業種)
輸送用機器のオイルフィルター及びエアクリーナー製造業
(規模)
資本金1,500万円
従業員53名
従業員53名
(業績)
昭和49年3月末までの業績は悪く、繰越欠損金が多額、無配状態だが、最近の業績は著しく改善している。
(ハ)
相手方(譲渡人)
Y1 5000株(全体の16.66%)
Y2 4000株(全体の13.33%)
抗告人(指定買受人)X 2万1000株(全体の70%)
設立当時の株主はY1 Y2のみ。その後X会社が資本参加。
甲社は、X会社の全面的協力工場。
Y1 5000株(全体の16.66%)
Y2 4000株(全体の13.33%)
抗告人(指定買受人)X 2万1000株(全体の70%)
設立当時の株主はY1 Y2のみ。その後X会社が資本参加。
甲社は、X会社の全面的協力工場。
(ニ)
採用された算定方式
再調達時価純資産方式:収益還元方式=1:1
(1株1,410円)
再調達時価純資産方式:収益還元方式=1:1
(1株1,410円)
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
・
甲社は、全く配当が実施されていない会社で、配当の予想は困難であり、本件株式の売買当事者が一般投資家でないことからいって配当還元方式を採ることは相当でない。
・
甲社の業態では適切な類似会社を選定することが困難であることから類似会社比準方式を採用することもできない。
・
本件は事業継続を前提とする株式の評価をするものであるので、特段の事情のない限り単純に時価純資産方式によることは相当でなく最近の業績が著しく改善しているので、簿価純資産方式も相当でない。
・
本件株式の評価は、売買当事者が経営支配を目的としており、配当額よりも企業利益そのものに関心をもっているといえるので、収益還元方式は本件株式の評価に適する。しかし、抗告人は甲社の全株式を取得することになり一切の企業利益は勿論、会社財産も抗告人に帰属するので収益還元方式だけによるのは妥当性を欠き、会社財産の実質的取得の側面から時価純資産価額方式にも相当のウェイトを置き、複合して適用するのが適切である。
・
時価純資産方式の採用にあたっては、解散を前提とする処分可能価格によるのではなく、最有効利用を前提とした再調達価格によるのが相当といえる。
非上場株式の譲渡手続と株式の評価