第1
4
判例
(4)
名古屋高裁 昭54.10.4決定( 事件番号:昭54(ラ)109号 )
(イ)
事案の概要
対象会社甲社の株式の売買価格につき、原審が1株845円と決定したのに対し、譲渡人が抗告した事案(1株純資産価格6,409円が相当と主張)
対象会社甲社の株式の売買価格につき、原審が1株845円と決定したのに対し、譲渡人が抗告した事案(1株純資産価格6,409円が相当と主張)
(ロ)
対象企業の特性
(業種)演芸の公開、不動産の賃貸業
(業種)演芸の公開、不動産の賃貸業
(ハ)
株主構成
株主は、現に稼業する芸妓または芸妓寮主に限定されている。
譲渡人Xの持株93株。
指定買受人Y組合は、現に稼業する芸妓または芸妓寮主をもって組織された甲社と密接な関係にある団体。
株主は、現に稼業する芸妓または芸妓寮主に限定されている。
譲渡人Xの持株93株。
指定買受人Y組合は、現に稼業する芸妓または芸妓寮主をもって組織された甲社と密接な関係にある団体。
(ニ)
採用された算定方式
{(配当還元方式+取引先例)+(時価純資産方式+類似業種比準方式) × 1/2 × 0.5 } × 1/3
(1株845円)
{(配当還元方式+取引先例)+(時価純資産方式+類似業種比準方式) × 1/2 × 0.5 } × 1/3
(1株845円)
*
配当還元方式 250円
取引先例 500円
時価純資産方式 6,409円
類似業種比準方式 737円
取引先例 500円
時価純資産方式 6,409円
類似業種比準方式 737円
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
・
本件は営業の継続を前提として、その売買価格を決定するものであるから、破産や清算の場合の売却価格(清算価格)によるべきでないことは明らかである。
・
時価による財産評価のみによることは本件のような物的会社たる株式会社についてしかもその営業の存続を前提とした場合は、客観的交換価値より遊離し、著しく高価なものとなり相当でない。
・
商法204条の2(注:会社法136条、138条等に相当)に規定する株式買取請求は、営業の継続を前提とした投下資本の回収方法であり、その価格は会社の現有純資産、営業成績及び流通価格等に由来する。この観点から株価算定の基礎として一株当りの純資産価格、営業成績(会社の安定性、将来性、収益力、配当率等)、流通価格(類似業種の市場価格、取引先例価格等)を併用するのが妥当。
・
相続税財産評価基本通達によれば配当還元方式によることになり、これのみによる評価は相当でないが、無視しえない。
・
本件株式は非上場で市場性に欠け、市場性に欠ける株式では評価の5割控除を行うのが取扱慣行とされている。
・
これまで芸妓が廃業して脱退する際は例外なく相手方組合において1株500円で買取ってきており、取引慣行として無視できない。
(5)
広島高裁 昭55.3.28決定( 事件番号:昭51(ラ)5号、6号 )
(イ)
事案の概要
対象会社甲社の株式の売買に関する原審の決定に対し、当事者双方から抗告された事案
対象会社甲社の株式の売買に関する原審の決定に対し、当事者双方から抗告された事案
(ロ)
対象企業の特性
(業種)
清酒製造業
(規模)
資本金 500万円
純資産額約 4億4,500万円
清酒業界では企業規模が大きく、全国的に知名度が高い。
純資産額約 4億4,500万円
清酒業界では企業規模が大きく、全国的に知名度が高い。
(ハ)
株主構成
譲渡人8名の持株比率は5.73%で経営に関与していない株主(非常勤取締役に就任していた被相続人から相続により取得)。
指定買受人は、甲社の代表取締役で9.18%の株式を所有する筆頭株主。
(譲渡人)を除き、零細株主で、同族株主は存在しない。
株主数237名
譲渡人8名の持株比率は5.73%で経営に関与していない株主(非常勤取締役に就任していた被相続人から相続により取得)。
指定買受人は、甲社の代表取締役で9.18%の株式を所有する筆頭株主。
(譲渡人)を除き、零細株主で、同族株主は存在しない。
株主数237名
(ニ)
採用された算定方式
類似業種比準方式(但し、比準価額の85%に減額)
(1株1万6,256円)
類似業種比準方式(但し、比準価額の85%に減額)
(1株1万6,256円)
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
・
純資産価額方式は、会社といっても個人企業とあまり変らない小規模の会社の場合、会社を解散して清算する場合または企業支配を目的として株式を取得する場合(いわば企業譲渡にも比すべき場合)には妥当するが、本件はいずれにも該当しない。
・
収益還元方式は、会社の収益がすべて株主への配当にまわされるものではないこと、利子率(割引率)を決定することが困難であること、将来各期の利益を現在または過去の利益におきかえ、しかもそれが永久に続くものと仮定していることから株価算定方式としては妥当ではない。
・
会社はかなり高い利益を上げながら増資もせず、資本金を事業規模に比し著しく低額にとどめ配当を一定に抑えて利益の大部分を保留しており、被申請人自身配当を多くしたいと考えており、(配当還元法による)1株200円の価額は各鑑定結果と比較して極端に低く、算定方式として妥当ではない。
・
客観的交換価値を適正に反映した取引事例はない。
・
山一方式が国税庁方式よりも合理性があると認められるべき資料はない。
・
山一方式の市場性の欠如を理由とする50%のディスカウントはいかにも高率にすぎる。
・
国税庁方式は、①係数化が困難であるため比準要素とすることができない株価構成要素があること、②現実に取引の市場をもたない株式を上場株式と全く同一視した評価を行なうことは妥当ではなく、評価の安全性を図るため、70%相当額により評価しているが、比準価額に乗ずべき係数が一未満になる可能性と一以上になる可能性があり、国税庁方式においては過大評価となることを避けるため、右係数を一未満にしたと解され、前者(①)は合理性がなく②のみが考慮されるべきである。
非上場株式の譲渡手続と株式の評価