第1
4
判例
(11)
福岡高裁 昭63.1.21決定( 事件番号:昭62(ラ)93号、95号 )
(イ)
事案の概要
対象会社甲社の元従業員が持株を売却した例(ロ)対象企業の特性
対象会社甲社の元従業員が持株を売却した例(ロ)対象企業の特性
(業種)
鮮魚卸売業
(規模)
創業明治26年(昭和38年株式会社化)
資本金1億7,600万円
従業員 185名
重要な子会社2社(資本金1,000万円及び2,000万円)
発行済株式総数35万2000株
株主数329名
資本金1億7,600万円
従業員 185名
重要な子会社2社(資本金1,000万円及び2,000万円)
発行済株式総数35万2000株
株主数329名
(その他)
概ね順調な営業成績を挙げており(昭和56年以降4年間の売上高は661億円、698億円、641億円、672億円)、今後とも継続営業を長期にわたって期待できる。1株当たりの利益配当性向は11.9%。
(ハ)
株主構成
売主(対象企業に25年間勤務)が3.3%。その余は不明
売主(対象企業に25年間勤務)が3.3%。その余は不明
(ニ)
採用された算定方式
配当還元方式を基礎に、類似業種比準方式及び収益還元方式において検討した要素のうち配当性向の開きを修正要素として考慮(鑑定額を採用し、1株当り2,325円)
尚、鑑定書によればイ.類似業種比準方式4,547円、ロ.純資産方式3,000円弱、ハ.配当還元方式2,325円、ニ.収益還元方式4,600円ないし6,900円
配当還元方式を基礎に、類似業種比準方式及び収益還元方式において検討した要素のうち配当性向の開きを修正要素として考慮(鑑定額を採用し、1株当り2,325円)
尚、鑑定書によればイ.類似業種比準方式4,547円、ロ.純資産方式3,000円弱、ハ.配当還元方式2,325円、ニ.収益還元方式4,600円ないし6,900円
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
・
売主は非支配株主。
・
営業継続が前提となる本件の場合、純資産方式は適当でなく、配当のみに期待する非支配的一般投資家にふさわしい配当還元方式を基礎にその余の方式を修正要素として考慮すべき。
(12)
仙台高裁 昭63.2.8決定( 事件番号:昭62(ラ)59号 )
(イ)
事案の概要
譲渡制限株式譲渡の売買価格決定に対し抗告された事案
譲渡制限株式譲渡の売買価格決定に対し抗告された事案
(ロ)
対象企業の特性
(業種)
食品関係
(規模)
発行済株式総数18万株
昭和53年以降は配当なし。
昭和53年以降は配当なし。
(ハ)
株主構成
売主は30575株(約17%)保有。
その余の株主構成、買主の属性等は不明
売主は30575株(約17%)保有。
その余の株主構成、買主の属性等は不明
(ニ)
採用された算定方式
純資産価額方式
純資産価額方式
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
原決定を支持。抗告審では売渡請求の撤回の可否のみが争点となっており、価格については争点となっていない。
(原決定の理由)
利益配当は不確定な要素が多く、これをもって株式の評価額を決定することは困難かつ確実性に欠けるが、残余財産分配はその範囲が明確である以上は評価が可能。対象会社は無配会社であるから配当還元は適切でなく、また、対象会社の特殊性から同種会社を抽出することも容易でなく、これらの点から鑑定結果が純資産価額方式を採用したことは相当。
原決定を支持。抗告審では売渡請求の撤回の可否のみが争点となっており、価格については争点となっていない。
(原決定の理由)
利益配当は不確定な要素が多く、これをもって株式の評価額を決定することは困難かつ確実性に欠けるが、残余財産分配はその範囲が明確である以上は評価が可能。対象会社は無配会社であるから配当還元は適切でなく、また、対象会社の特殊性から同種会社を抽出することも容易でなく、これらの点から鑑定結果が純資産価額方式を採用したことは相当。
(13)
東京高裁 昭63.12.12決定( 事件番号:昭63(ラ)370号 )
(イ)
事案の概要
同族会社甲社における買取請求の事案。売主は父、買受人は長男。
売主は純資産価額方式のみによって価格を算定すべきと主張して抗告(抗告棄却)
同族会社甲社における買取請求の事案。売主は父、買受人は長男。
売主は純資産価額方式のみによって価格を算定すべきと主張して抗告(抗告棄却)
(ロ)
対象企業の特性
(業種)
不動産賃貸及び管理業
(規模)
昭和44年設立
資本金500万円
発行済株式総数1万株
資産は建物とその敷地の借地権(価格の合計29億1,970万2,000円)がほとんどで、その営業は右建物を第三者に賃貸するのみ。
資本金500万円
発行済株式総数1万株
資産は建物とその敷地の借地権(価格の合計29億1,970万2,000円)がほとんどで、その営業は右建物を第三者に賃貸するのみ。
(その他)
買主の妻が代表取締役、買主及び買主の長男が取締役、買主の二男が監査役で従業員はいない。
直近2年間の年間平均利益額は92万6,000円。利益配当なし。
直近2年間の年間平均利益額は92万6,000円。利益配当なし。
(ハ)
株主構成
売主(買主の父)30%
買主(売主の長男。対象企業の取締役)60%
買主の妻(対象企業の代表取締役)10%
売主(買主の父)30%
買主(売主の長男。対象企業の取締役)60%
買主の妻(対象企業の代表取締役)10%
(ニ)
採用された算定方式
イ.
純資産方式:ロ.収益還元方式=7:3
尚イ.は法人税相当額を控除
尚イ.は法人税相当額を控除
ロ.
は収益還元方式において利益率として10%を採用
イ.12万2,812円、ロ.926円であり、これを上記の割合で斟酌すると8万6,246円となるが、最後にこの価格から市場性の欠如を理由に30%減価し、結論として6万372円。
(ホ)
算定方式採用理由・要旨
・
対象会社甲社は、営業利益を確保して株主に配当することよりはむしろ資産の保有を目的とする色彩が濃いものであるが、ともかくも19年間営業を続けており、今後直ちに解散して清算するものではないから清算を擬制した純資産の価額方式のみでなく、会社の存続を前提とした算定方式も斟酌すべき。
・
本件売買価格は、会社が指定した買主が誰であるかといった主観的事情により左右されるべきものではない。
・
売主が申請外Aとの間で1株15万円での売買を合意していたとしても、その合意価格が客観的、合理的なものと認め得る資料は何もない。
・
本件の場合、類似会社が存在せず、しかも無配であるから、類似業種比準方式、配当還元方式はいずれも採用し難い。
・
純資産方式と収益還元方式のうち、本件会社の実態からは会社資産に対する持分の評価として純資産方式を重視するのが相当。
・
算定された価格から、市場性がなく、譲渡制限があることに鑑み、3割を控除すべきである。
非上場株式の譲渡手続と株式の評価