消極損害の範囲3

交通事故損害賠償請求ガイド

交通事故が発生したときの措置、損害賠償責任、損害賠償の範囲、遅延損害金と時効、自動車保険、紛争の解決方法、刑事責任という7つの主題について、交通事故損害賠償請求のQ&Aをご紹介します。

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損害賠償の範囲のQ&A

(3)

消極損害

(ト)

会社が休職中の従業員に支払った給料

Q:
会社の従業員が自動車事故のために入院している間、会社が従業員に給料を支払った場合、会社は加害者に対して支払給料相当額の支払を請求できますか?
A:
本件のような場合、本来、加害者が被害者に対して直接支払うべき賠償金を、会社が加害者の代わりに立替払いしているものといえます。この場合、会社は、従業員に支払った給料相当額の支払いを、加害者に請求しうるとされています。
(チ)

従業員の勤務不能による会社の逸失利益

Q:
会社の従業員が自動車事故により欠勤したために、会社の業務に支障が生じ、損失が出た場合、会社は加害者に対して損失の賠償を請求することはできますか?
A:
1.
本件のような場合に、会社の加害者に対する損害賠償請求が認められるためには、次のいずれかの場合であることが必要です。
(1)
従業員が欠勤した場合に、会社に通常生じ得るような損失であるといえること
(2)
自動車事故により従業員が欠勤することによって、会社に損失が生じるという認識があったこと、または、少し注意すれば容易にそのような認識を有し得たこと
(3)
直接の被害者である従業員と間接的な被害者である会社との間に、経済的に同一であるといえるような関係が認められること
2.
ただし、上記1については、従業員もおらず実質的に家族経営の会社の社長のような場合とは異なり、従業員と会社との間に経済的に同一であるといえるような関係が認められることは通常は考えられないため、このような考え方で会社の損害賠償請求が認められることは非常に困難といってよいでしょう。
(リ)

休業損害とは

Q:
休業損害とは何ですか?
A:
1.
休業損害とは
(1)
休業損害とは、自動車事故による怪我の治療のために休業した場合に、労働の対価としての収入を得ることができなかったことによる損害のことです。
(2)
休業損害は、事故当時の収入に休業期間を乗じて算出します。これを数式化すると、「休業損害」=「1日当たりの収入」×「休業日数」となります。
(3)
もっとも、事故後、時間の経過とともに症状が回復し、徐々に労働能力も回復することから、段階的に労働能力の喪失割合に応じて休業損害を算出する場合もあります。これによると、例えば、1日当たりの収入が1万円の被害者が、治癒までに6か月かかった場合であって、最初の2か月は100%、その後の2か月は60%、最後の2か月は20%の労働能力喪失割合とした場合、(1万円×2か月×30日)×(100%+60%+20%)=108万円となります。
2.
被害者が給与所得者の場合
(1)
給与所得者の1日あたりの収入と休業日数は、勤務先が発行する休業損害証明書、源泉徴収票、診断書等によります。
(2)
休業が原因となって賞与が減額・不支給とされたり、昇給・昇格が遅れた場合には、それによる損害も賠償が認められます。
(3)
休業期間中に、有給休暇を使用した場合も、賠償されるべき休業損害の額に影響はありません。
3.
被害者が事業所得者の場合
(1)
事業所得者の1日当たりの収入は、前年度の所得税の確定申告書によりますが、業績に著しい変動がある場合は、数年間の実績の平均値による場合もあります。
(2)
休業したことにより支出を免れた原材料費等の変動経費は休業損害から控除されますが、賃料・人件費等の固定経費については相当な範囲内で休業損害とされます。
4.
被害者が専業主婦の場合
(1)
専業主婦であっても、家事労働にも財産的価値があることから、家事をすることができなかった期間について、賃金センサスにおける女子労働者の全年齢平均賃金または年齢別平均賃金を基準とした基礎収入により算出される休業損害が認められます。
(2)
パート等の収入がある主婦の場合は、現実の収入額が賃金センサスの女子労働者の平均賃金より低いときは平均賃金を、平均賃金より高いときは現実の収入額を基礎収入とした休業損害が認められます。
5.
被害者が無職者・学生の場合
(1)
無職者・学生については、原則として、休業損害は認められません。
(2)
ただし、就職が内定している場合、または、治療期間中に就職の可能性がある場合には、予定どおり就職した場合に得られるはずであった給料額、または、賃金センサスの平均賃金もしくはこれを下回る額を基礎収入として、休業損害が認められます。
(3)
アルバイトをしていた場合には、現実に失ったアルバイト収入が休業損害となり、さらに、就職が遅れた場合には、得られるはずであった給料が休業損害となります。

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