3
損害賠償の範囲のQ&A
(7)
(ニ)
好意同乗者と過失相殺
Q:
自動車同士の衝突事故により、一方の車両(A)の同乗者が負傷した場合に、双方の運転者に落ち度(過失)がある場合、負傷した同乗者に対する他方(B)の運転者の損害賠償額を算定するに際して、A車両の運転者の過失を斟酌することにより、損害賠償額が減額されることはありませんか?
A:
1.
過失相殺
民法722条2項は、被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、加害者の被害者に対する損害賠償額を定めることができるとしています。これは文字どおりに捉えると、被害者本人に過失がなければならないかのように読めます。
しかし、判例は、(1)民法722条2項の「被害者の過失」とは、単に被害者本人の過失のみでなく、広く被害者側の過失をも含み、(2)被害者本人が幼児である場合の被害者側の過失とは、父母ないしは父母の被用者である家事使用人などのように被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうとしています。さらに判例は、被害者本人が幼児である場合に限らず、被害者本人と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にあれば「被害者側」に含むとしています。
民法722条2項は、被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、加害者の被害者に対する損害賠償額を定めることができるとしています。これは文字どおりに捉えると、被害者本人に過失がなければならないかのように読めます。
しかし、判例は、(1)民法722条2項の「被害者の過失」とは、単に被害者本人の過失のみでなく、広く被害者側の過失をも含み、(2)被害者本人が幼児である場合の被害者側の過失とは、父母ないしは父母の被用者である家事使用人などのように被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうとしています。さらに判例は、被害者本人が幼児である場合に限らず、被害者本人と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にあれば「被害者側」に含むとしています。
2.
身分上の一体関係
(1)
夫婦の婚姻関係がすでに破綻に瀕しているなどの特段の事情がない限り、夫婦につき身分上の一体性を認めた事例
(2)
内縁の夫婦につき身分上の一体性を認めた事例
(3)
内縁関係にない場合であっても、被害者と約20年間同棲している場合に身分上の一体性を認めた事例
(4)
約3年前から恋愛関係にあり、将来結婚する予定があった場合であっても、身分上の一体性を否定した事例
(5)
幼児でない子とその親につき身分上の一体性を肯定した事例
(6)
3歳の弟と7歳の兄につき身分上の一体性を認めた事例(7)被害者とその祖母や叔母につき身分上の一体性を認めた事例
3.
生活関係上の一体性
(1)
家事使用人につき生活関係上の一体性が認められた事例
(2)
2時間ほど幼児の子守を頼まれた近所の主婦とその幼児につき、生活関係上の一体性が否定された事例
(3)
保育園の保母につき生活関係上の一体性が否定された事例
(4)
小学校の教師につき生活関係上の一体性が否定された事例
(5)
職場の同僚につき生活関係上の一体性が否定された事例
4.
雇用関係
上記1の判例の基準とは異なりますが、被害者に雇用されている者は、原則として、「被害者側」として過失相殺が認められています。
上記1の判例の基準とは異なりますが、被害者に雇用されている者は、原則として、「被害者側」として過失相殺が認められています。
(ホ)
自動車対歩行者の事故の過失割合の基準
Q:
自動車と歩行者の事故において、どのような場合にどのような割合で双方に過失が認められるかの基準があれば教えてください。
A:
1.
過失相殺
民法722条2項により、被害者に過失(落ち度)がある場合には、裁判所は、これを考慮して損害賠償額を算定することができます(過失相殺)。例えば、被害者に総額1000万円の損害が生じた場合でも、被害者側に3割の過失があれば、加害者の賠償すべき損害額は700万円になるということです。
民法722条2項により、被害者に過失(落ち度)がある場合には、裁判所は、これを考慮して損害賠償額を算定することができます(過失相殺)。例えば、被害者に総額1000万円の損害が生じた場合でも、被害者側に3割の過失があれば、加害者の賠償すべき損害額は700万円になるということです。
2.
横断歩道上の事故
車は横断歩道を通過する際には、横断歩道上を横断しようとする歩行者がいないことが明らかな場合を除き、横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならず、横断しようとする歩行者がいるときは、横断歩道の直前で一時停止し、歩行者の進行を妨げないようにしなければなりません(道路交通法38条)。
したがって、横断歩道上の事故の場合には、原則として、歩行者に過失はないものとされ、過失相殺はなされません。
ただし、信号機が設置され、歩行者が赤信号を無視して横断歩道を横断していた場合には、歩行者には70%程度の過失があるものとされます。
車は横断歩道を通過する際には、横断歩道上を横断しようとする歩行者がいないことが明らかな場合を除き、横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならず、横断しようとする歩行者がいるときは、横断歩道の直前で一時停止し、歩行者の進行を妨げないようにしなければなりません(道路交通法38条)。
したがって、横断歩道上の事故の場合には、原則として、歩行者に過失はないものとされ、過失相殺はなされません。
ただし、信号機が設置され、歩行者が赤信号を無視して横断歩道を横断していた場合には、歩行者には70%程度の過失があるものとされます。
3.
横断歩道外の事故
(1)
横断歩道が付近にある場合には、歩行者は横断歩道を横断しなければなりません(道路交通法12条)。したがって、横断歩道が付近にあるにもかかわらず、横断歩道外を横断した歩行者には、30%程度の過失があるとされます。
(2)
また、横断が禁止されている道路を横断した場合には、歩行者に50%程度の過失があるものとされます。ただし、フェンス等により物理的に横断を禁止するための設備が施されていない場所については30%程度の過失とされます。
4.
横断歩行者以外の事故
(1)
歩道と車道の区別がある場所では、歩道上の車の通行は禁止されているため、歩道上の歩行者には原則として過失は認められません。
(2)
この場合、逆に、車道上を歩行することは原則として認められないため、車道を歩行している歩行者には、側端の場合で20%、それ以外の場合で30%程度の過失が認められます。
(3)
歩道と車道の区別がない場所では、歩行者は側端を歩行している限り、原則として過失は認められません。
(4)
路上で寝ていたり、遊んでいたりした場合には、20%ないし30%程度の過失が認められます。
5.
修正要素
(1)
以上は、過失相殺の一般的基準ですので、一応の目安にはなりますが、個別具体的な事情によって修正されることは当然です。
(2)
車の直前直後を歩行していた場合、交通量の多い幹線道路の場合等の事情があれば、歩行者により大きな過失が認められることになります。
(3)
他方、運転者にとり危険の予測ができる児童や老人等の場合、住宅街や商店街のように歩行者の存在が容易に予測できる場合等の事情は、運転者により大きな過失を認める事情となります。
損益相殺