5
自動車保険のQ&A
(1)
(リ)
政府保障事業
Q:
加害者が不明の自動車事故や、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)に加入していない加害車両による自動車事故により、怪我をしてしまった場合、損害を保障してくれるような制度はありませんか?
A:
1.
政府の保障事業
ひき逃げ事故で加害者がわからない場合や、加害車両が自賠責保険に加入していない場合には、被害者は加害者の加入する自賠責保険から損害の填補を受けられません。
このような場合に備えて、自賠責制度を補完し、被害者を救済するために、政府は自動車損害賠償保障事業を行っています(自動車損害賠償補償法71条以下)。
ひき逃げ事故で加害者がわからない場合や、加害車両が自賠責保険に加入していない場合には、被害者は加害者の加入する自賠責保険から損害の填補を受けられません。
このような場合に備えて、自賠責制度を補完し、被害者を救済するために、政府は自動車損害賠償保障事業を行っています(自動車損害賠償補償法71条以下)。
2.
保障を受けられる場合
政府から保障を受けられるのは次の場合です。
政府から保障を受けられるのは次の場合です。
(1)
加害車両の保有者が不明の場合(具体的には、ひき逃げ事故の場合が多いでしょう)
(2)
加害者が自賠責保険に加入していなかった場合
3.
保障の内容
(1)
政府から保障を受けられる自動車事故の種類および保障限度額は自賠責保険の場合と同じです。すなわち、自動車事故の種類としては、人身事故のみで、物損事故は補償の対象になりません。保障限度額は、傷害の場合で120万円、後遺症の場際で等級に応じて75万円から4000万円、死亡の場合で3000万円です。
(2)
被害者が、健康保険給付、労災保険給付、介護保険給付など他の法令により損害を填補する給付を受けることができる場合には、その限度で、政府から保障を受けることはできません(同法73条1項)。
(3)
加害者が自賠責保険に加入していなかった場合に、加害者や加害者と連帯して損害賠償義務を負う者(例えば加害者の使用者など)が被害者に損害賠償金を支払ったときは、被害者はその限度で政府から保障を受けることはできません(同条2項)。物損についての損害賠償である場合は、政府からの保障が減額になることはありませんので、被害者が損害賠償を受ける場合には、その趣旨を明確にした書面を作成しておくべきです。
(4)
政府に対する保障金請求権は、被害者の加害者に対する損害賠償請求権とは別個の権利ではありますが、損害賠償請求権の存在を前提としています。したがって、そもそも加害者に損害賠償責任が発生しない場合には、政府に対する保障金請求権も発生しませんし、被害者に過失があれば、通常どおり過失相殺を行って保障金の額を算出します。
(5)
親族間で加害者、被害者となる事故については、原則として、保障の対象とされていません。
(6)
複数の加害車両からなる事故の場合で、加害車両のうち1台でも自賠責保険に加入していれば、保障の対象にはなりません。
(ヌ)
政府保障金の請求手続
Q:
政府保障事業に対する保障金の請求手続について教えてください。
A:
1.
政府保障事業とは
(リ)をご参照ください。
(リ)をご参照ください。
2.
保障金の請求手続
(1)
政府保障事業に対する保障金の請求は、被害者が、保障事業を委託されている損害保険会社または責任共済組合の窓口に備え付けられている「自動車損害賠償保障事業への損害てん補請求書」に必要事項を記載し、必要書類を添付して行います。
(2)
また、必要書類は、自賠責保険に損害賠償額を請求する場合と同じです(交通事故証明、診断書、休業損害証明書、後遺症診断書など)。
(3)
保障金の支払には相当長期間を要しているのが実情です。加害車両の保有者が不明の場合で9~10か月、無保険車事故の場合で1年2~3か月くらいかかるようです。
3.
保障金請求権の時効
被害者の政府保障事業に対する保障金請求権は、
被害者の政府保障事業に対する保障金請求権は、
(1)
傷害事故の場合は事故日から、
(2)
後遺症が残った場合は症状固定日から、
(3)
死亡事故の場合は死亡時から、
それぞれ2年の消滅時効にかかります(自動車損害賠償補償法75条)。
なお、加害車両の保有者が不明な場合で、保有者と思われる者に対して損害賠償請求訴訟を提起したところ、保有者でないとして請求棄却となった事案について、訴訟提起時に消滅時効がいったん中断し、請求棄却判決が確定した日の翌日から時効が再度進行するとした判例があります。
なお、加害車両の保有者が不明な場合で、保有者と思われる者に対して損害賠償請求訴訟を提起したところ、保有者でないとして請求棄却となった事案について、訴訟提起時に消滅時効がいったん中断し、請求棄却判決が確定した日の翌日から時効が再度進行するとした判例があります。
自賠責保険