事業承継

信託を活用した事業承継(後継ぎ遺贈型受益者連続信託)

会社経営者の方から、「そろそろ会社(法人)を後継者に任せていきたいが、二代先まで後継者を指名しておくことはできないのか?」というご相談をいただくことがあります。
そのようなニーズにお応えするための仕組みとして、「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」という制度があり、近年注目を集めていますので、ご紹介いたします。

株式の重要性

事業承継を考える際に特に重要なことは、会社の株式を後継者にしっかりと承継させることです。株式が分散され、株主総会で多数決を確保することができなくなると、円滑な事業活動に支障が出ることもあり得ます。

とりわけ相続に伴う事業承継を考える場合には、会社経営者は(少なくとも)遺言書を作成し、株式の承継者を指定しておくことが肝要です。

後継ぎ遺贈は民法では無効?

遺言者Aが、「Aの死亡時にはAが有する株式をBに相続させ、さらに将来、Bの死亡時にはその株式をBからCに与える」という遺言書を作成して、Aの相続が発生した場合(「後継ぎ遺贈」といわれます)、BからCへの承継についてのAの遺言は、民法上は無効と扱う見解が有力です。
そのため、AからBに株式を相続させ、さらに将来、BからCにその株式を承継させるには、AだけでなくBにも遺言書を作成してもらう必要があります(ただし、Aの死後に、Bが遺言を撤回したり変更したりする可能性は残ってしまいます。)。
これに対して、信託法は、期間制限を定めつつ、後継ぎ遺贈型受益者連続信託を有効なものとしています。

後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは

後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは、「受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託」のことをいいます(信託法91条)。
ただし、これをあまりに長期間に渡って認めるわけにはいかないので、「当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。」との期間制限が付されています。

後継ぎ遺贈型受益者連続信託により、世代を超えた円滑な事業承継を実現する機能が期待されています。ただし、信託を活用した場合でも、遺留分の問題は残ること等に留意する必要があります。

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