遺産分割交渉事例

相続紛争の予防と解決マニュアル

第3

相続紛争の事例研究

集合写真
3

遺産分割交渉事例

(1)

事案の概要

A は大阪市内に自宅土地約 100 坪及び右土地上の自宅建物 (以下 「不動産1」 といい ます) と A の次男 B の妻 C が居住している土地約 100 坪及び右土地上の建物 (以下 「不 動産2」 といいます) 並びに約 300 坪の土地及び同土地上に建てられた共同住宅 2 棟 (以下 「不動産3」 といいます) を残して亡くなりました。
Aの相続人は、 Aの長男XとAの次男Bが既に死亡していたため、 Bの子供Y1、 Y2の 3名でした。 一方、 A の遺産は上記不動産 1 ないし3であり、 現預金はほとんどなく、 遺産総額は約3億円でした。 Y1、 Y2 は、 法定相続分 (Y1、 Y2 それぞれ4分の1) によ る分割を要求しました。 X は A が死亡の1年前ころから看病が必要であったのに、 Y1、 Y2 が見舞にも来なかったことや、 生前 A が Y1、 Y2 には、 不動産2を与えれば十分であ ると言っていたこと (ただし、 その旨の遺言はありませんでした) 等から、 Y1、 Y2 の 申し出には応じられないと主張しました。
(2)

解決

交渉を繰り返した結果、 Xが不動産1及び不動産3を取得し、 Y1、 Y2が不動産2を2分の1ずつ取得 (共有) し、 X から Y1、 Y2 に 700 万円ずつ支払うことで合意しました。
結局、 Xは遺産全体の約80パーセント (法定相続分は50パーセント)、 Y1、 Y2はそ れぞれ遺産全体の約10パーセント (法定相続分はそれぞれ25パーセント) を取得する ことで解決しました。
(3)

コメント

(イ)
前記のとおり、 当初、 Y1、 Y2は、 法定相続分通りの分割を要求し、 Y1、 Y2の母C が居住している不動産2と不動産3の一部もしくはそれに代わる現金を要求してい ました。
(ロ)
しかし、 Y1、 Y2 は、 相続税のことをほとんど考慮していなかったため、 X は Y1、 Y2 に、万一法定相続分通りに分割した場合、 相続税がそれぞれ 1000 万円にもなる ことを伝えました。 それとともに、 X が不動産1及び3を取得し、 Y1、 Y2 が不動産 2を取得する代わりに、 その場合に Y1、 Y2 が負担すべき相続税額を X が負担する (代償金として Y1、 Y2 に支払う)との分割案を提示しました。
(ハ)
当初、 抵抗していた Y1、 Y2 も相続税の納税という問題に直面し、 態度を軟化さ せ、 Xが不動産1及び3を取得することを了承する代わりに金1400万円を支払うよ うに求めてきました。 そして、 この分割案で当事者双方が合意しました。
(ニ)
本件は、 相続税の納税という分割後に直面する問題を切り口にして早期に、 しか も X にとって有利な条件での解決が可能となった事例です。
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