(1)
(イ)
Xは、 昭和35年、 Yに対し、 建物所有の目的で土地を賃貸しました。
(ロ)
上記賃貸借契約締結後、 XとYは、 「契約期間中に固定資産税等の増額が生じたときは、 公課金増額の比率に準じ賃料を増額することができる」 との合意をしました。
(ハ)
その後、 固定資産税が毎年20パーセントずつ増加し、 それに応じてXも賃料を20パーセントずつ増額する意思表示をしました。
(ニ)
これに対し、 Yは、 賃料増額についての(ロ)の特約がなされた当時は、 その後の公租公課の異常な高騰は予定されていなかったのであるから、 右の特約を適用することは許されないとして争い、 従前の賃料を供託しました。
(2)
結果
Xは、 Yを相手に、 増額賃料の支払いを求めて裁判を提起した結果、 裁判所は次のとおり判断してXの請求どおり賃料増額を認めました。
(イ)
借地法第12条は、 強行法規ではないから、 賃料増額の要件について借地法第12条第1項と異なる内容を定める特約は有効である。
(ロ)
もっとも、 賃料増額を定める基準が著しく不合理であるとか、 当事者の一方にだけ不当な利益をもたらすという内容の特約については、 その有効性に疑問の余地がある。
(ハ)
本件の事案では、 Xの賃料増額の請求は、 前記特約に基づき固定資産税の増額の比率の範囲内で毎年2割増しの賃料の増額を求めるものであるが、 右増額請求は、 本件土地の時価の推移と著しくかけ離れたものではない。 また、 右請求は、 適正賃料額とも大きな差異がない。
(ニ)
したがって、 XとYとの賃料増額についての前記特約は無効とはいえない。
事案の概要(借地法の事例)